やぷー。こんちは。ひじきだよ。

 毎日寒いね。そりゃそうだよね。冬が近いんだもの。

 仕事に行って疲れて食って寝てしている間に、大阪の彩ふ読書会に参加してから4日もたっちゃいました。おどろき!

 ずいぶん時間がたっちゃったけれど、僕はもちろん元気びんびんです。さっき疲れてるって書いちゃったけど、あれはウソ。大したことないんだ。根っこは元気、大元気だよ。イェイ!

 ところで、なんで急にこんな文章を書いてるかっていうと、なんとビックリ読書会の課題本にめちゃくちゃ笑ってしまって、それなら僕も負けてられないと一念発起しちゃったからでーす。次の文章を読んでみてください。

 すでんほたっらわんばちいでいせんじ

 万一わかんないっていう場合は、さかさに読んでみると案外いいかもしんない。

 きゃ!

 でもこれホント。森見センセーが大学生書いたらもう笑うだけでお腹の筋トレができちゃうよ。センセーはスゴい。だからセンセーを讃える詩も書いてみたよー。

 おおオモチロの『恋文』よ
 モリミーモリミーこりゃモリミー
 ハートはうきうきモンキッキー
 笑った私はウッキャッキャ
 おおオモチロの『恋文』よ
 モリミーモリミーこりゃモリミー

◇     ◇     ◇

 この文章を書き終えて真っ先に思ったことは、私はいずれ森見登美彦氏不敬罪で絞め殺されるにちがいないということである。崇拝転じて毀損と化す。これ以上罪を重ねるのはあまりに危険なので、ここからは至って真面目な調子で読書会の振り返りを書くことにしよう。

 流石に皆さんお気付きと思うが、いまお目にかけたのはモンキッキーも呆れるばかりの腐れ猿真似である。元ネタは『恋文の技術』という小説の237-238ページおよび246-247ページである。気になろうがなるまいがひとまず読んでいただきたい。なにしろ、逆さに書いた文章の内容だけは本当なのである。

◇     ◇     ◇

 1110日・日曜日、大阪の桜橋交差点の近くにある、オックスフォードクラブというレンタルスペースで、今月の大阪・彩ふ読書会が開催された。読書会はいつも、①午前の部=それぞれ好きな本を紹介し合う「推し本披露会」、②午後の部=課題本を事前に読み感想などを話し合う「課題本読書会」の二部からなる。僕は今回午後の部からの参加だったので、この振り返りも、午後の部の内容からお送りすることになる。なお、先月から大阪の読書会でも、午後の部終了後にメンバー同士の交流の場・通称「ヒミツキチ」が始まった。その模様についても簡単にご紹介しようと思うが、おそらくそれまでに何度か記事が分かれることになろうから、気長にお待ち願いたい。

 課題本読書会は、1340分ごろに始まり、1時間半余り続いた。参加者は全部で21名おり、3つのグループに分かれて話し合いを行った。会の流れは次の通りである。時間になったところで、総合司会から読書会の流れや注意事項についての説明がある。その後、グループの中で自己紹介を行い、話し合いに入るという流れだ。15時になると、グループでの話し合いは終わり、各グループで出た話を紹介し合う全体発表へと移る。全体発表終了後、再び総合司会が現れ、今後の読書会活動などに関するアナウンスを行ったところで、読書会は終了となる。

 僕は今回Aグループで参加した。メンバーは全部で7名。初参加の女性が2名おり、そのほかは、参加3回目の女性、1月ぶりに課題本に挑戦したという男性、京都読書会常連の森見登美彦ファンの女性、大阪サポーターである特撮隊長、そして僕という顔ぶれであった。グループの進行は僕の担当であった。課題本が森見さんの本だったから、森見ファンでなおかつ作品の登場人物っぽいヤツを進行役にしてみようという本気の悪ふざけ人事が発動したらしかった。

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 というわけで、改めて課題本を紹介しよう。今回の課題本は、森見登美彦さんの小説『恋文の技術』である。研究室の教授から能登半島にある実験所行きを命じられた大学院生・守田一郎が、孤独を紛らすべく京都に住む友だち・先輩・家族などに宛てた手紙からなる書簡体小説である。守田が書いた手紙しか僕らは読めないわけだが、それでいて、宛先となるキャラクターの人柄・イメージや、守田の置かれた状況が浮かび上がり、先行きの見えない中で悪足掻きを繰り返す守田の姿に爆笑を禁じ得ない一作である。ところで、守田には伊吹夏子さんという意中の人がいて、本当は彼女に手紙を宛てたいのであるが、その手紙だけはなかなか上手く書けないでいる。伊吹さんへの手紙を書き上げ、彼女を初デートへ誘うシーンが、本作のクライマックスである。

 読書会の話に戻ろう。話し合いを進めるにあたり、僕は付箋の力を借りることにした。なにも守田が手紙を書いていたのにあやかったわけではなく、僕は以前から課題本読書会の進行をする際には、参加者に付箋を配り、話したい内容をまとめてもらってから、話し合いを始めるようにしている。今回は、黄色と青の2種類の付箋を用意し、黄色の付箋には「本の感想」を、青の付箋には「他の参加者に訊いてみたいこと」を書き出してもらった。次の写真は、その付箋をまとめたものである。今回は、各参加者の付箋の内容を紹介する形で、話し合いを振り返っていくことにしよう(以下、赤字は感想用の付箋、青字は質問用の付箋の内容である)。

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◆ひじきの付箋

・とにかく爆笑しました。特に、p.88p.237-239
・毒にも薬にもならないけど、読むと面白かった。
・森見さん流の文章術伝授本?p.197-198
・初デートが大文字山で大丈夫か
?
・登場人物のキャラクター像をもっと掘り下げたい。

 まず僕の感想から。『恋文の技術』という作品について、とにかく何よりも言いたいことは、笑えて笑えて仕方がないということです。冒頭でパクった「やぷー」の一節しかり、p.88に突如として登場する「ヨーグルトばくだん」しかり。言葉だけ抜き出しても上手く説明できないので、とにかくみんな読んでくれ!……すいません、つい思いのタケが。

 もっとも、逆にいえば、「笑えるゼ」以外に特に何も言うことが見当たらないのかもしれません。深いメッセージがあるわけではないし、人生がバラ色に見えだすなんていう劇的な効果もない。まさに毒にも薬にもならない作品だなあと思います(クスリとはなりますが。というよりゲラゲラ笑えますが)。

 その中で、ここだけは真面目に読まねば、と思ったのが、p.197の次の一節でした。「そうなのだ。剝き出しの恋心を書き、書いたものにとらわれて、自分の情念に溺れるから恋文が腐臭を放つのです。つまり、俺が書くべき恋文、真に有効な恋文とは、恋文に見えない恋文ではないのか」僕はこの箇所を、「恋文」を「小説」に、或いは「文章」に置き換えながら読んでいました。剥き出しの感情に流されず、それを制御することが、誰かに向けた文章では必要になる。これは森見さん流の文章術の極意ではないかと思います。その意味するところを噛みしめたいと、僕は思ったものでした。

 恋する相手を初デートで山へ誘うことについては、「確かに、手紙に靴や服装の注意書きを書いてないのはまずいと思う」といった意見を後でいただきました。一方で、「伊吹さんも京都の大学の人だから言わなくてもわかるのでは?」という意見もありました。後者の意見ももっともですが、やっぱり書いとけよと僕は思います。

◆特撮隊長の付箋

・「やぷー」が好きです! 実際にこの手紙がきたらイヤ笑
・伊吹夏子さん、名前だけで美人。さっぱりした性格。
・人間の色んな側面…相手によって見せる顔が違う。

・みなさんのお気に入りの「二つ名」「宛名」は? 私は「悪のグローバルスタンダード」です。
・「ハッキリした恋文」「何でもない文章を装った恋文」どちらが好きですか?


 続いて、特撮隊長の付箋を見てみましょう。いました、ここにも、「やぷー」の破壊力にやられた人。もっとも、ご丁寧にも「実際にこの手紙がきたらイヤ笑」と書いてらっしゃいますね。そういえば、この前ある人にふざけて「やぷー。こんちはー。守田一郎だよー」という書き出しのラインを送ったら、ドン引きされました。冗談でもダイレクトに使っちゃいけない言葉ってあるんだなあということがよくわかりました。

 伊吹夏子さんについて、名前だけで姿や性格が想像できるのが凄いという話がありましたが、その読み方自体が凄いと僕は思いました。この点についてはさらに、「伊吹は息吹に通じる」「夏っていうところから爽やかなイメージが広がる」といった話が湧き出て、たいへん面白かったです。守田一郎が手紙を出す相手によって文体や書く内容を変えていることの面白さは、この後出てくる他の方の感想でも何度も挙がってくるポイントでした。

 質問編についてはまた後で振り返ろうと思うのですが、お気に入りの「二つ名」「宛名」の話はめちゃくちゃ盛り上がりました。「悪のグローバルスタンダード」は確かにインパクトありますね。意味がイマイチ分かりませんが。ちなみに、特撮隊長にはメールでヘンな肩書きを名乗り合う友だちがいるそうです。そういう遊び相手がいるのは羨ましいですね。

◆初参加の女性の付箋

・主人公のユニークな手紙の内容に笑わせてもらいました。ニヤニヤしながら読みました。
・一人と数人の手紙のやりとりだけれど、主に一人の手紙が小説になっている所がおもしろかった。
・久しぶりにコメディの小説を読んでほのぼのしました。


 続いて初参加の女性の登場です。森見さんの小説を読んだのは初めてだったそうですが、とても面白かったと終始笑っていました。2つ目の感想にある通り、『恋文の技術』という作品は守田が書いた手紙だけで出来上がっています。それでいて、手紙を出している相手のキャラクターが垣間見えたり、登場人物たちの間で起きた出来事がきちんと見えてきたりするのが、この作品の面白いところだというのは僕も全く同感でした。

 ちなみに、この方、普段はドロドロした作品を読むことの方が多いそうです。最後の感想はそれを踏まえてのものだったようですね。

◆参加3回目の女性の付箋

・書簡体の小説を初めて読みましたが、会話が分かるようですごいなと思いました。
・手紙だけでもその人との関係性が伝わる。言葉でその時の主人公の気分もわかる。
・能登半島のディスリ方がすごい。ちょっと心配……
・電車でのぞかれてはずかしかった。

 参加3回目の女性の方の付箋を見てみましょう。この方も、これまでご紹介した参加者と同じように、手紙だけで相手とのやり取りや関係性が伝わるのは面白いと感じていたようでした。「言葉でその時の主人公の気分もわかる」というのも同感です。例えば、守田が書いている手紙には全て日付が振られているのですが、普段相手によって言葉遣いを変えている守田が、複数の人に全く同じ文章の手紙を送っている日というのが出てきます。その日などは、守田の手紙の内容も相まって、よほど窮地に追い込まれていたんだなあということが伺えます。このように手紙から色んなものを察していくところに、『恋文の技術』の面白さがあるのかもしれませんね。

 能登半島のディスり方の話には、凄いところを突いてきたものだなあと思いました。この方は石川県に住まれていたことがあったそうで、「能登半島も良い所ですよ」とおっしゃっていました。実際、『恋文の技術』を読んでいると、ディスられている筈の能登半島に行ってみたくなるから不思議です。それを考え合わせてみると、ディスっても大丈夫のような気がしてきましたが、どうでしょうか。

 「電車でのぞかれてはずかしかった」というのは、最初、笑いを堪えるのが大変だったという意味かと思ったのですが、よくよく聞いてみると、「途中で、あの……おっぱいって言葉がたくさん出てくるので」ということでした。そうなんです、『恋文の技術』の中盤にはおっぱいという単語がやたらと出てきます。森見さんが執筆当時「そういう時期だった」ためにこんなことになったそうですが……そうはいっても、罪深すぎやしませんかね。

◇     ◇     ◇

 『恋文の技術』課題本読書会の振り返りはまだまだ続くのですが、間もなく5,000字になりますので、ここで一度記事を区切りたいと思います。次回は参加者の感想の続きから始めて、他の参加者に訊いてみたいことの話へと移っていくことにしましょう。どうぞお楽しみに。

怱々頓首
仕事の遅いレポーター ひじき
レポートを待ちきれない皆様方へ