たいへんお待たせいたしました。10月20日に開催された京都・彩ふ読書会の振り返り、書けずに残っていた最後の1回を、ここにお送りしたいと思います。
読書会はいつも、①午前の部=参加者がそれぞれお気に入りの本を紹介する「推し本披露会」と、②午後の部=決められた課題本を事前に読んできて感想などを話し合う「課題本読書会」の二部構成からなっています。10月20日の読書会についても、この二部については既にレポートを上げておりました。では何が残っているのか。それは、読書会メンバーの交流の場、通称「ヒミツキチ」のレポートでございます。
京都の彩ふ読書会では、午後の部終了後も会場をお借りして、参加者同士が自由にお喋りしたり、ゲームを持ち寄って遊んだり、企画を持ち込んで実現したり、とにかくあらゆることのできる場を設けております。これまでにやったことを振り返ってみますと、ボードゲーム大会、アニメ『有頂天家族』上映会、ゲーム「ブックポーカー」(2回)、出張・彩読ラジオ放送、演劇『夏への扉』上映会……とまあこんな感じです。もちろん、これは主なものにすぎません。上映会をやってる側で別部隊が黙々とゲームに興じていたなんてこともありました。いかに自由な時間か、これでお分かりいただけたことでしょう。
そして今回、10月20日の「ヒミツキチ」でも、新企画が1つ実現しました。それが「推し歌詞披露会」です。内容はご想像の通り。励まされ気分がノッてくる歌詞、ジーンとくる感動的な歌詞、心にグサリと刺さる深い歌詞、よくわからないけれど気になる難解な歌詞、思わず深読みしたくなる文学的な歌詞……そんな様々なお気に入りの歌詞を、参加者がそれぞれ紹介し合うというものです。展開の仕方が色々と考えられそうな企画ですが、とりあえず10月20日のヒミツキチでは、「推し歌詞披露会Episode Zero」ということで、細かい縛り一切なしで行いました。
それでは、これより会の振り返りに入ろうと思いますが、その前に、推し歌詞披露会実現までの舞台裏をしばしご覧いただきましょう。
9月15日21時、京都四条烏丸のHub。
店の奥の一画にある丸テーブルを囲むようにして、4人の男女が酒を飲み交わしていた。その4人とは、ひじき、ちくわ先生、生き字引氏、そして、最近京都サポーターになったみっちーさんである。要するに、京都・彩ふ読書会を代表するイツメンである。
4人は読書会の帰りであり、既に四条烏丸のおでん屋で、飯を食ったり、酒を飲んだり、「犯人は踊る」に興じたりした後であった。それでもなお名残惜しいものがあったのか、はたまた夜が更けるまで家に帰れない性分なのか、他の参加者が帰る中、この4人だけは四条烏丸に残り、軽いつまみと酒を求めて2軒目へ流れ着いたのである。
「推し歌詞披露会」のアイデアは、この4人の飲み会の中で忽然と湧いて出た。
いま必死になってその日のことを思い出してみたのだが、言い出しっぺが誰なのか、とんと思い出せない。最終的にみっちーさんが企画者の座に就いたので、みっちーさんが言い出したんじゃないかという気もするが、どうもしっくりこない。何しろ、四者四様に「これはいい!」と興奮して手を叩き、大はしゃぎにはしゃいだものだから、何が何やらさっぱりなのだ。とにかく1つ言えることは、「推し歌詞披露会」を生んだものは、酒のテンションだということである。
彩ふ読書会では酒の勢いで企画(というよりほぼ妄想に近い何物か)が膨れ上がり、そのまま実現するということがしばしばある。今なお伝説の回として語り継がれる「ヅカ社会」しかり、先日レポートした「声に出したいI Love You会」しかりである。「推し歌詞披露会」もまた、その系譜に連なるものということができよう。
ちくわ先生は10月の読書会には不参加の予定だったし、生き字引氏は出没率は高いもののサポーターではない。そのため、みっちーさんがメイン企画者、僕が企画フォローという形で、「推し歌詞披露会」を行うことになった。さてしかし、酒のテンションで始まった企画を実際の形に落とし込むには、幾らか知恵が必要であった。特に難しかったのは、肝心の歌詞をどうやって披露するかである。お気に入りのものを紹介するというコンセプトは「推し本披露会」と同じであるから、会の進行のノウハウは蓄積されている。しかし、本には形があるが、歌詞には形がない。お披露目するモノがないのである。もちろん、「歌まっぷ」などのサイトで歌詞を確かめることはできる。だが、一堂に会した参加者が一斉に目の前のスマホをガン見する光景は、幾ら想像しても味気なさすぎる。何かいい方法はないものだろうか。
10月13日、部活動で京都国際マンガミュージアムを訪れた帰りに、僕とみっちーさんは発表方法を巡って話し合いの場をもった。もっとも、その話し合いは、他の部活メンバーと一緒に入ったモスカフェの中で行われたものだった。おまけに、僕とみっちーさんはその時、テーブルを挟んでちょうど対角線の位置に座っていた。というわけで、その場に同席したメンバー全員がこの話し合いの巻き添えを食うことになった。正確に言えば、何かを考えるための場を何の考えもなくゲリラ的に生み出した僕の巻き添えを食ったのである。
そんな中、同席していた大阪サポーターのホシさんという方から、「スケッチブックを用意して、皆さんにそこに歌詞を書いてもらったらいいんじゃないですか?」という提案があった。「それだ!」と僕は思った。みっちーさんも同じ意見だったらしい。こうしてひとまずスケッチブックに歌詞を書くという方向で話はまとまった。
ところが——数日後、百円ショップへスケッチブックを買いに出掛け、あれこれと見繕っているうちに、別の考えを閃いてしまった。「綴じられているスケッチブックより、バラで使える画用紙の方が使い勝手がいいんじゃないか」僕は程なくみっちーさんに打診した。二つ返事で了承が下りた。
こうして、画用紙に「歌詞」「歌手名」「曲名」を書き、フリップみたいにして参加者に見せるという方法が確立した。そして当日、僕は更なる思い付きで、家にあった8色セットのマジックを鞄に忍ばせ、読書会へと向かったのであった。
ところで、鞄といえば……画用紙を買う際、どうせならデカいのにしようと思って「八つ切り」というサイズのものを買った。推し歌詞披露会だけ見れば、この選択は正しかったと思う。が、この八つ切りというのはB4よりもう一回り大きいサイズで、鞄に入れるにはギリギリの大きさだった。角丸四角形の鞄の角が尖ったといえば、却ってややこしいかもしれないが、要するにそういうサイズであった。
「推し歌詞披露会」本編に話を移すとしよう。
参加したメンバーは、僕とみっちーさんを含め全部で5人であった。この他に、歌詞は紹介しなかったけれど、ずっと話を聞いてくださり、時に話題を広げてくださった方が2人いらっしゃった。会場にはもう2人ほど残っているメンバーがいたが、この2人は聞くともなく聞いているという感じで、そのうちの1人については終盤完全に眠ってクラクラ揺れていた。
会場には読書会で使用したテーブルが幾つか残ったままになっていたが、どれかのテーブルに集まって話をするということはしなかった。その代わりに、大方のメンバーが帰ってしまいすっかり広くなった会場の、好きな場所に座って、方々に散らばるメンバー全員に向けて歌詞を紹介するという形になった。例えて言うなら、合宿の晩にコテージのリビングにぽつぽつ集まってみんなで話をするような雰囲気だった。
歌詞の紹介は1人3曲までだった。殆どの人は1曲だけの紹介だったが、僕とみっちーさんは事前にあれこれ考えていたこともあり、3曲発表した。既に書いた通り、今回は曲のジャンルやテーマでの縛りはなかった。だから、少なくとも僕は、その時頭に浮かんでいて、紹介したいと思った歌詞を取り上げた。
紹介された歌詞の一覧は次の通りである。
世の不条理を嘆く痛切な歌詞、詩的で言葉の綺麗な歌詞、意味はよくわからないけれど気になる歌詞、励まされる歌詞……紹介された歌詞の魅力は本当に様々だった。中には、「もしかしてこれは彩読のテーマソングになるんじゃないか!?」と思えるような歌詞もあった(詳しいことは下記リンクの「5」参照)。なお、一部の曲については、CDやスマホダウンロード済みの音源などを使い、実際に鑑賞した。その際、ずっと話を聞いてくださっていた方々にたいへんお世話になったので、ここで御礼申し上げる。
さて、いつもの僕ならここから歌詞を1つ1つ取り上げてどんな話が出たか紹介するところであるが、今回はちょっと手抜きして、自分が紹介した歌詞だけを取り上げることにしようと思う(白状すると、メモを取り忘れていたうえ、当日夕方の時点でだいぶ疲れが回っており、生き生きした感想を書こうとすると相当無理が祟ってしまうためである)。他の皆さんが紹介された歌詞については、画用紙の内容をもとに、あれこれ想像を巡らせていただければ幸いである。
◆①「宇宙の果てに旗を立てたとしても 宇宙の謎はわからないまま」(THE HIGH-LOWS「胸がドキドキ」)
1曲目はこちら。アニメ『名探偵コナン』の初代OP曲「胸がドキドキ」から、2番のBメロの歌詞を引っ張ってきました。テレビでは流れなかった部分の歌詞を持ってきたためか、「マニアック」と評される羽目に……サビ以外の歌詞、それも2番の歌詞にハマりがちな僕はこれからどうしたらいいんでしょう……
選んだ理由は、内容の深さと、「こんな言い回しがあったのか!」という衝撃の2つです。どんなに遠いところまで行って偉業を成し遂げたとしても、それはただ“辿り着いた”というだけで、どれだけ中身が伴っているかなんて知れたもんじゃない。この後に続くサビでは「偉くもないし立派でもない わかってるのは胸のドキドキ」と続きます。カッコつけず素直に地道に生きていこうという勇気が湧いてくる歌詞です。
推し歌詞披露会が決まった時点で、THE BLUE HEARTSかTHE HIGH-LOWSの曲はどれか紹介したいと思っていました。小学生の頃から聴いている「TRAIN-TRAIN」、学生時代にカラオケで矢鱈と歌った「人にやさしく」など、色々考えたのですが、どうもその時の気分にピタッと来ず。結局「胸がドキドキ」を紹介することになりました。
◆②「友達に手紙を書くときみたいに スラスラ言葉が出てくればいいのに」(ZARD「Don’t you see」)
2曲目はこちら。ZARDの「Don’t you see」から、歌い出しの一節を引っ張ってきました。これも言葉選びの巧みさが光るフレーズというのが選んだ理由になります(歌い出しのインパクトというのもありそうですが)。好きな人と一緒にいる時のもどかしさを静かに優しく歌っている感じがします。
この曲に限らず、ZARDには、不器用で控えめな恋の気持ちを繊細な歌詞で掬い取ったものが多いと思っていて、好きなフレーズが沢山あります。遡ること2週間前、「声に出したいI LOVE YOU会」のアフタートークでも、「心を開いて」の歌詞が良いという話をしたくらい。というか、なんやかんやここでZARDを持ってきてしまう辺りに、まだ「I LOVE YOU」会のインパクトが深く根付いてるんだなあという気がします。
◆③「いや待てよそいつ誰だ」(Back number「高嶺の花子さん」)
いや待てよ、「I LOVE YOU会」のインパクト絶大ですわ。というわけで、3曲目はこちら。ご存知「高嶺の花子さん」から、2番サビ手前の歌詞を引っ張ってきました。片想い中の男子が女の子を落とす手なんて知らないとモジモジした挙句、彼女には彼氏がいるにちがいないしそいつはめちゃくちゃハイスペックな奴だと妄想していっそうモジモジするという流れで、妄想を打ち消すためのセルフツッコミとして上の歌詞が出てきます。選んだ理由は、一言で言えばテイストウケです。
他の方のサポートがあって曲をフルで聴くことができたのですが、改めて聴いてもやはり見事なモジモジ具合。笑えるんだけれどどこか切なくて、ついでに言うと僕はだいぶ身に堪えます。そういえばこういうモジモジ妄想男子、森見登美彦さんの作品によく出てきそうだなあとふと思いました。折角だからあのフレーズ言っておきます。「森みが深い」。
といったところで、「推し歌詞披露会」の振り返りを締めくくりたいと思います。最初にも書いた通り、今回の披露会は「Episode Zero」という位置づけです。今後ジャンル・テーマなどの縛りを設けたうえで、何度か実施することになりそうですので、楽しみにしたいと思います。
以上をもちまして、10月20日の京都・彩ふ読書会の振り返りも全編終了となります。ここまでお読みいただいた皆さま、ありがとうございました。
読書会はいつも、①午前の部=参加者がそれぞれお気に入りの本を紹介する「推し本披露会」と、②午後の部=決められた課題本を事前に読んできて感想などを話し合う「課題本読書会」の二部構成からなっています。10月20日の読書会についても、この二部については既にレポートを上げておりました。では何が残っているのか。それは、読書会メンバーの交流の場、通称「ヒミツキチ」のレポートでございます。
京都の彩ふ読書会では、午後の部終了後も会場をお借りして、参加者同士が自由にお喋りしたり、ゲームを持ち寄って遊んだり、企画を持ち込んで実現したり、とにかくあらゆることのできる場を設けております。これまでにやったことを振り返ってみますと、ボードゲーム大会、アニメ『有頂天家族』上映会、ゲーム「ブックポーカー」(2回)、出張・彩読ラジオ放送、演劇『夏への扉』上映会……とまあこんな感じです。もちろん、これは主なものにすぎません。上映会をやってる側で別部隊が黙々とゲームに興じていたなんてこともありました。いかに自由な時間か、これでお分かりいただけたことでしょう。
そして今回、10月20日の「ヒミツキチ」でも、新企画が1つ実現しました。それが「推し歌詞披露会」です。内容はご想像の通り。励まされ気分がノッてくる歌詞、ジーンとくる感動的な歌詞、心にグサリと刺さる深い歌詞、よくわからないけれど気になる難解な歌詞、思わず深読みしたくなる文学的な歌詞……そんな様々なお気に入りの歌詞を、参加者がそれぞれ紹介し合うというものです。展開の仕方が色々と考えられそうな企画ですが、とりあえず10月20日のヒミツキチでは、「推し歌詞披露会Episode Zero」ということで、細かい縛り一切なしで行いました。
それでは、これより会の振り返りに入ろうと思いますが、その前に、推し歌詞披露会実現までの舞台裏をしばしご覧いただきましょう。
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9月15日21時、京都四条烏丸のHub。
店の奥の一画にある丸テーブルを囲むようにして、4人の男女が酒を飲み交わしていた。その4人とは、ひじき、ちくわ先生、生き字引氏、そして、最近京都サポーターになったみっちーさんである。要するに、京都・彩ふ読書会を代表するイツメンである。
4人は読書会の帰りであり、既に四条烏丸のおでん屋で、飯を食ったり、酒を飲んだり、「犯人は踊る」に興じたりした後であった。それでもなお名残惜しいものがあったのか、はたまた夜が更けるまで家に帰れない性分なのか、他の参加者が帰る中、この4人だけは四条烏丸に残り、軽いつまみと酒を求めて2軒目へ流れ着いたのである。
「推し歌詞披露会」のアイデアは、この4人の飲み会の中で忽然と湧いて出た。
いま必死になってその日のことを思い出してみたのだが、言い出しっぺが誰なのか、とんと思い出せない。最終的にみっちーさんが企画者の座に就いたので、みっちーさんが言い出したんじゃないかという気もするが、どうもしっくりこない。何しろ、四者四様に「これはいい!」と興奮して手を叩き、大はしゃぎにはしゃいだものだから、何が何やらさっぱりなのだ。とにかく1つ言えることは、「推し歌詞披露会」を生んだものは、酒のテンションだということである。
彩ふ読書会では酒の勢いで企画(というよりほぼ妄想に近い何物か)が膨れ上がり、そのまま実現するということがしばしばある。今なお伝説の回として語り継がれる「ヅカ社会」しかり、先日レポートした「声に出したいI Love You会」しかりである。「推し歌詞披露会」もまた、その系譜に連なるものということができよう。
ちくわ先生は10月の読書会には不参加の予定だったし、生き字引氏は出没率は高いもののサポーターではない。そのため、みっちーさんがメイン企画者、僕が企画フォローという形で、「推し歌詞披露会」を行うことになった。さてしかし、酒のテンションで始まった企画を実際の形に落とし込むには、幾らか知恵が必要であった。特に難しかったのは、肝心の歌詞をどうやって披露するかである。お気に入りのものを紹介するというコンセプトは「推し本披露会」と同じであるから、会の進行のノウハウは蓄積されている。しかし、本には形があるが、歌詞には形がない。お披露目するモノがないのである。もちろん、「歌まっぷ」などのサイトで歌詞を確かめることはできる。だが、一堂に会した参加者が一斉に目の前のスマホをガン見する光景は、幾ら想像しても味気なさすぎる。何かいい方法はないものだろうか。
10月13日、部活動で京都国際マンガミュージアムを訪れた帰りに、僕とみっちーさんは発表方法を巡って話し合いの場をもった。もっとも、その話し合いは、他の部活メンバーと一緒に入ったモスカフェの中で行われたものだった。おまけに、僕とみっちーさんはその時、テーブルを挟んでちょうど対角線の位置に座っていた。というわけで、その場に同席したメンバー全員がこの話し合いの巻き添えを食うことになった。正確に言えば、何かを考えるための場を何の考えもなくゲリラ的に生み出した僕の巻き添えを食ったのである。
そんな中、同席していた大阪サポーターのホシさんという方から、「スケッチブックを用意して、皆さんにそこに歌詞を書いてもらったらいいんじゃないですか?」という提案があった。「それだ!」と僕は思った。みっちーさんも同じ意見だったらしい。こうしてひとまずスケッチブックに歌詞を書くという方向で話はまとまった。
ところが——数日後、百円ショップへスケッチブックを買いに出掛け、あれこれと見繕っているうちに、別の考えを閃いてしまった。「綴じられているスケッチブックより、バラで使える画用紙の方が使い勝手がいいんじゃないか」僕は程なくみっちーさんに打診した。二つ返事で了承が下りた。
こうして、画用紙に「歌詞」「歌手名」「曲名」を書き、フリップみたいにして参加者に見せるという方法が確立した。そして当日、僕は更なる思い付きで、家にあった8色セットのマジックを鞄に忍ばせ、読書会へと向かったのであった。
ところで、鞄といえば……画用紙を買う際、どうせならデカいのにしようと思って「八つ切り」というサイズのものを買った。推し歌詞披露会だけ見れば、この選択は正しかったと思う。が、この八つ切りというのはB4よりもう一回り大きいサイズで、鞄に入れるにはギリギリの大きさだった。角丸四角形の鞄の角が尖ったといえば、却ってややこしいかもしれないが、要するにそういうサイズであった。
◇ ◇ ◇
「推し歌詞披露会」本編に話を移すとしよう。
参加したメンバーは、僕とみっちーさんを含め全部で5人であった。この他に、歌詞は紹介しなかったけれど、ずっと話を聞いてくださり、時に話題を広げてくださった方が2人いらっしゃった。会場にはもう2人ほど残っているメンバーがいたが、この2人は聞くともなく聞いているという感じで、そのうちの1人については終盤完全に眠ってクラクラ揺れていた。
会場には読書会で使用したテーブルが幾つか残ったままになっていたが、どれかのテーブルに集まって話をするということはしなかった。その代わりに、大方のメンバーが帰ってしまいすっかり広くなった会場の、好きな場所に座って、方々に散らばるメンバー全員に向けて歌詞を紹介するという形になった。例えて言うなら、合宿の晩にコテージのリビングにぽつぽつ集まってみんなで話をするような雰囲気だった。
歌詞の紹介は1人3曲までだった。殆どの人は1曲だけの紹介だったが、僕とみっちーさんは事前にあれこれ考えていたこともあり、3曲発表した。既に書いた通り、今回は曲のジャンルやテーマでの縛りはなかった。だから、少なくとも僕は、その時頭に浮かんでいて、紹介したいと思った歌詞を取り上げた。
紹介された歌詞の一覧は次の通りである。
世の不条理を嘆く痛切な歌詞、詩的で言葉の綺麗な歌詞、意味はよくわからないけれど気になる歌詞、励まされる歌詞……紹介された歌詞の魅力は本当に様々だった。中には、「もしかしてこれは彩読のテーマソングになるんじゃないか!?」と思えるような歌詞もあった(詳しいことは下記リンクの「5」参照)。なお、一部の曲については、CDやスマホダウンロード済みの音源などを使い、実際に鑑賞した。その際、ずっと話を聞いてくださっていた方々にたいへんお世話になったので、ここで御礼申し上げる。
さて、いつもの僕ならここから歌詞を1つ1つ取り上げてどんな話が出たか紹介するところであるが、今回はちょっと手抜きして、自分が紹介した歌詞だけを取り上げることにしようと思う(白状すると、メモを取り忘れていたうえ、当日夕方の時点でだいぶ疲れが回っており、生き生きした感想を書こうとすると相当無理が祟ってしまうためである)。他の皆さんが紹介された歌詞については、画用紙の内容をもとに、あれこれ想像を巡らせていただければ幸いである。
◆①「宇宙の果てに旗を立てたとしても 宇宙の謎はわからないまま」(THE HIGH-LOWS「胸がドキドキ」)
1曲目はこちら。アニメ『名探偵コナン』の初代OP曲「胸がドキドキ」から、2番のBメロの歌詞を引っ張ってきました。テレビでは流れなかった部分の歌詞を持ってきたためか、「マニアック」と評される羽目に……サビ以外の歌詞、それも2番の歌詞にハマりがちな僕はこれからどうしたらいいんでしょう……
選んだ理由は、内容の深さと、「こんな言い回しがあったのか!」という衝撃の2つです。どんなに遠いところまで行って偉業を成し遂げたとしても、それはただ“辿り着いた”というだけで、どれだけ中身が伴っているかなんて知れたもんじゃない。この後に続くサビでは「偉くもないし立派でもない わかってるのは胸のドキドキ」と続きます。カッコつけず素直に地道に生きていこうという勇気が湧いてくる歌詞です。
推し歌詞披露会が決まった時点で、THE BLUE HEARTSかTHE HIGH-LOWSの曲はどれか紹介したいと思っていました。小学生の頃から聴いている「TRAIN-TRAIN」、学生時代にカラオケで矢鱈と歌った「人にやさしく」など、色々考えたのですが、どうもその時の気分にピタッと来ず。結局「胸がドキドキ」を紹介することになりました。
◆②「友達に手紙を書くときみたいに スラスラ言葉が出てくればいいのに」(ZARD「Don’t you see」)
2曲目はこちら。ZARDの「Don’t you see」から、歌い出しの一節を引っ張ってきました。これも言葉選びの巧みさが光るフレーズというのが選んだ理由になります(歌い出しのインパクトというのもありそうですが)。好きな人と一緒にいる時のもどかしさを静かに優しく歌っている感じがします。
この曲に限らず、ZARDには、不器用で控えめな恋の気持ちを繊細な歌詞で掬い取ったものが多いと思っていて、好きなフレーズが沢山あります。遡ること2週間前、「声に出したいI LOVE YOU会」のアフタートークでも、「心を開いて」の歌詞が良いという話をしたくらい。というか、なんやかんやここでZARDを持ってきてしまう辺りに、まだ「I LOVE YOU」会のインパクトが深く根付いてるんだなあという気がします。
◆③「いや待てよそいつ誰だ」(Back number「高嶺の花子さん」)
いや待てよ、「I LOVE YOU会」のインパクト絶大ですわ。というわけで、3曲目はこちら。ご存知「高嶺の花子さん」から、2番サビ手前の歌詞を引っ張ってきました。片想い中の男子が女の子を落とす手なんて知らないとモジモジした挙句、彼女には彼氏がいるにちがいないしそいつはめちゃくちゃハイスペックな奴だと妄想していっそうモジモジするという流れで、妄想を打ち消すためのセルフツッコミとして上の歌詞が出てきます。選んだ理由は、一言で言えばテイストウケです。
他の方のサポートがあって曲をフルで聴くことができたのですが、改めて聴いてもやはり見事なモジモジ具合。笑えるんだけれどどこか切なくて、ついでに言うと僕はだいぶ身に堪えます。そういえばこういうモジモジ妄想男子、森見登美彦さんの作品によく出てきそうだなあとふと思いました。折角だからあのフレーズ言っておきます。「森みが深い」。
◇ ◇ ◇
といったところで、「推し歌詞披露会」の振り返りを締めくくりたいと思います。最初にも書いた通り、今回の披露会は「Episode Zero」という位置づけです。今後ジャンル・テーマなどの縛りを設けたうえで、何度か実施することになりそうですので、楽しみにしたいと思います。
以上をもちまして、10月20日の京都・彩ふ読書会の振り返りも全編終了となります。ここまでお読みいただいた皆さま、ありがとうございました。