僕らが触れている世界

日々の生活の中で心に留まったことを、丁寧に、時に面白く、書き綴る、そんな日記を目指して… 現在は、参加している「彩ふ読書会」の記録や、その他参加したイベントの振り返りを中心に、日々の四方山話を書いています。できれば読書ノートなどを充実させていきたいけれど、書けば長くなりそうで、どうしたものか思案中。どうかみなさま寛大な心でお見守りください。

2019年02月

 家に帰ってみて驚いた。室温が19℃と表示されているのだ。暫くの間、平均して14℃、暖かくて16℃といった案配だったから、途端に上がっている。外が暖かくなったからというのはもちろんあるが、それにしても熱気が籠り過ぎではないか。

 そこで、玄関のドアを半開きにし、窓を網戸にして、風を通した。すると、掃除の1つでもしてやりたい気分になったので、とりあえず掃除機をかけた。ホコリの取れた床を見ていると、何かちょっと作業でもしてやろうかという気になってくる。

 そこで、パソコンを開き、家計簿をつけることにした。ついでに、来月の収支計画を立ててみる。来月も大幅赤字である。だからといって、節制しようという気はまず起きない。あーあ困ったねといって、そのまま放置する。まあ、何も考えないよりはましということにしておこう。

 そこまでやって、夕食にした。

 食事を終えて、暫く地図を見たり、音楽を聴いたりしてから、いよいよ読書に取り掛かる。満を持しての読書である。さぞいい時間になるだろうと思ったら、10ページも読まないうちに寝落ちしてしまった。ぽかんとしたまま、浴槽に湯を張った。

 これは間違いなく、今日の僕の話である。しかし、いったいなんの話だ、こりゃ。

 昨日の日記で書いた通り、週末に宝塚歌劇の『ME AND MY GIRL』をDVDで観て、いたく感動したのだが、その余韻は、休みが明けた今日になっても消え去る気配がない。

 最たる影響は、脳内BGMにあらわれている。劇中で、主人公のビルとガールフレンドのサリーが歌う、その名もズバリ「ME AND MY GIRL」という曲があるのだが、これがずっと頭の中でリピートされているのだ。この曲は2人が愛を確かめ合う曲で、歌詞もメロディーもたいへん綺麗である。手拍子したくなるようなノリのいい曲でありながら、同時に優しさに満ちた曲である。鑑賞中にメロディーが頭に焼き付き、繰り返し聞きまくり、歌詞をインプットして、1日足らずで脳内再生可能な状態まで持っていった。自分の本気が恐ろしい。

 ともあれ、とても好きになった曲なので、頭が勝手に再生してくれるのはたいへんありがたいことである。が、ちょっと困ったこともある。あまりにハマり過ぎたがゆえに、のべつまくなし再生されてしまうのだ。

 仕事帰り、整骨院に向かうバスの中で、来週の課題本である、よしもとばななさんの『キッチン』を読み始めた。ずっと共に生活してきた祖母の死、突然の居候生活。これまでの生活の終焉と、新たな生活の始まり。その風景を通じて、孤独とつながり、淋しさと癒しなどを、淡々と、しかし鮮やかに描いた作品というのが、さしあたっての印象だった。

 そんな本を読んでいる最中にも、あの曲が流れてくる。『キッチン』の主人公・桜井みかげが目の前で泣いているというのに、耳の奥では場違いなカップルが2人の愛とハッピーを誓い合って歌っている。流石にシャレにならない。

 まったくどうしたものだろう。

 結局僕は、解決策を見つけられないまま家に帰り、湯船に浸かりながら「ME AND MY GIRL」を口ずさむのだった。

 読書会のレポートを書き切ったところで、何を書けばいいのか分からなくなってしまった。困った話である。ついこの間、このブログの本分は日記であると確認したばかりなのに、毎日の日記をホッタラカシにして先週の話を4日も続けた挙句、今日の振り返りには何を書けばいいのか見当もつかないというのだ。

 断言しておくが、決して、レポートを書くのに必死で他に何もしない週末を送っていたわけではない。例えば、空き時間を見つけてはGoogle Mapをずっと見ていた。2週間前、レンタカーを借りて1人でドライブに出掛けて以来、またパッとドライブ出来たらいいなと考えてばかりいる。それで、週末に限らず、地図を見る時間が長くなった。地図を見て気になるスポットを探したり、定番のドライブコースを調べて地図で確認したり。そうして、経路と所要時間を見ながら、あーでもない、こーでもないと首を捻っていた。

 それから、先日買ったDVDドライブを初めて使った。鑑賞したのは、実家から借りてきた、宝塚歌劇月組・2013年版の『ME AND MY GIRL』だ。「とにかく楽しめる作品」と聞いて、今はそういうのがいいと思い見始めたら、めちゃくちゃ面白かった。どにかくどの登場人物もキャラが立っていて、劇中は笑いが止まらなかった。が、ラストは思わず涙腺崩壊。その後ショーの部分で、主人公とヒロインを演じていた当時のトップスター・龍真咲とトップ娘役・愛希れいかのデュエットがあり、再び涙腺崩壊。もうショーになっているのに、物語の余韻が残っていて、劇中の出来事を思い出しながら見ていると、言葉にならないくらい感情がこみあげてしまった。

 その後、ヅカ部長から長いこと借りっぱなしにしている、宝塚ファンのあれこれを描いたマンガ『ZUCCA×ZUCA』を読んでいたら、彼氏に向かって「ちゃぴちゃん(愛希れいか)はかわいすぎてしぬレベル!!」と説教する女の子が出てきて、激しく共感してしまった。「ちゃぴかわいい」はこれまでも時折口にしたことがあったが、『ミーマイ』を観て、己の言葉の浅さを知った。恐ろしく可愛かった。かわいすぎて死ぬという感情が初めてわかった。そこへ、ドンピシャのタイミングで上の台詞である。頷かないでいられよう筈がなかった。

 ——なんだ、いろいろ書けるじゃないか。じゃあなんだったんだ、最初の言い訳じみた書けない宣言は。

 どうも僕は、時々、というか、しばしば、というか、それはもう頻繁に、一旦ウジウジしてからでないと何も行動できなくなるらしいのだ。我ながら面倒臭いヤツである。もっと素直に、そして大胆になればいいものをと思う。おっと、これ以上書くと、また違う意味でウジウジしそうなので、そろそろ筆を置くことにしよう。

 先日来お送りしています、2/17の彩ふ読書会@京都の振り返り、その最終回をこれからお届けしたいと思います。ここまで、午前の部・推し本編を1回で、午後の部・課題本編を2回に分けて、それぞれ振り返ってきました。今回は夕方の部・推しマンガ読書会の模様をご紹介します。

 京都の読書会は、午前の部、午後の部、そして夕方の部の3部構成となっています。夕方の部は「実験的経験会」と銘打たれていて、普段の読書会ではできないことをやるというコンセプトのもと、毎回違うテーマで開催されています。

 1月には、「装丁グランプリ」という、①本の表紙と、②各参加者が作った紹介カードだけを見て〈読みたくなる本NO.1〉を決定する会が開かれました。ちなみにこれは、代表のーさんが考えたオリジナル企画。本屋でポップを見ている時に、書店員じゃなくてもポップが作れたら面白いんじゃないかと思ったことからアイデアが膨らんでいったそうです。凄いですよね!

 そして今回、2月の実験的経験会は「推しマンガ読書会」でした。これは、いつもやっている推し本読書会の派生企画で、紹介する本をマンガに限定したものです。要領はいつもの推し本読書会と同じですが、推しマンガ読書会の場合、ただ内容を紹介し合うだけでなく、絵柄や構図を見る楽しさもあるので、また違った魅力がありました。

 さて、推しマンガ読書会は16時過ぎに始まり、17時半ごろまで続きました。参加者は全部で13名で、2テーブルに分かれて本の紹介を行いました。最後に全体発表の時間があり、それぞれのテーブルで出てきた本を紹介し合いました。

 僕のいたテーブルには、男性5名・女性2名の計7名の方がおりました。僕のほかは、代表のーさん(進行役も担当)、午後の部もご一緒していた男性、2回目の参加となる男性、初参加の男性、大阪サポーターの女性、そして初参加の女性でした。それでは早速本の紹介に参りましょう。——と言いたいところなのですが、実はこの参加者を巡って、開始前に個人的なハプニングが起きたので、その話から入ることにいたしましょう。

◆ひじき氏、「ウソでしょ!?」と大音量で叫ぶ

 上述の通り、今回僕のテーブルには初参加の方が2人おられました。先に来られたのは女性の方でした。この方は奥の席に着かれており、大阪サポーターの女性があれこれ積極的に声を掛けておられました。暫くして、今度は男性の方が来られました。そして、僕の向かいの席に座られました。僕はサポーターらしいことの1つもしなければと、話し掛けることにしました。

「初めての方ですか?」

 すると、男性は不思議なことをおっしゃったのです。

「ええ、ここではそうです」

 えっ、と思い顔を上げる。その瞬間、見覚えのある顔が目に留まる。

 一瞬で全てがつながりました。この顔、さっきの声の出し方。そこにいたのは、以前このブログでも紹介したことのある某集まりで、2度もお会いしていた方だったのです。しかし、まさかここで会うとは——

 驚きの余り僕は立ち上がってしまいました。そして一旦テーブルに背を向け、後ろの椅子に置いたカバンに寄り掛かるようにしながら、あらん限りの声で叫んだのです。

「ウソでしょオ!?」

 間違いなく、過去読書会で出したことがないほどの大きな声でした。

 それからも一人勝手にソワソワっとしていましたが、総合司会の役目もあるからと、何とか気を静めました。落ち着くと、むしろこの展開が面白くなってきました。そして、内心笑いが収まらないまま、読書会がスタートいたしました。

 それでは、お待たせいたしました、本の紹介に移りましょう。

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◆『All You Need Is Kill』(原作:桜坂洋、構成:竹内良輔、漫画:小畑健)

 代表のーさんが紹介してくださった作品です。いわゆるループものの作品。主人公は戦場で前線に立つ兵士なのですが、戦場で殺されると前日の朝に時間が戻ってしまい、戦う→殺される→時間が戻るのループから抜け出せなくなっているのだそうです。話が進むにつれて、兵士もだんだん要領を掴んでいくのですが、果たして物語の結末は——というところで紹介が寸止めされてしまいました。仕方ないですけど。

 作画は『DEATH NOTE』などでお馴染みの小畑健さん。本作でも凄まじい画力を発揮されています。パラパラとページをめくってみると、確かに絵のテイストが『DEATH NOTE』ぽかったです。髪の質感とか、目の描き方に特徴があるんでしょうか。

 本作は元々ライトノベルで、後に漫画化、そして同年にハリウッドで映画化されているそうです。映画版の主演を務めたのはトム・クルーズ。それを聞いた瞬間、思わず表紙を指して、「え、この男がトム・クルーズになるんですか⁉」と言ってしまったものでした。

◆『この世界の片隅に』(こうの史代)

 僕が紹介した作品です。2016年にアニメ映画化、昨年にはドラマ化もされた作品です。もはや説明の必要はないでしょう。このブログで過去に一度取り上げたことがあるので、気になる方はこちらの記事をご覧ください。

 原作の魅力の1つは、コマ割りだと思います。1枚の絵をスケッチブックに見立てて少しずつ絵が描かれていく様子を表現していたり、1枚の絵が複数のコマに分割されて話に流れを添えていたり、1話がまるまるいろはがるたのような構成になっていたり。とにかく表現技法に驚きます。もっとも、レイアウトの妙はアニメ映画版でかなり丁寧に再現されていると思います。これもまた驚きです。

 ところで、先ほど本の写真を載せた時、とんでもないことに気付いて自分に腹を立ててしまいました。なんと、主人公・すずさんの可愛らしい顔が、メッセージカードですっかり隠されているではありませんか。これだけでマンガの魅力は半分以上損なわれたも同然。アホか、俺は。

 というかね、よく見てみますと、下段に写ってる本全て、主人公の顔がメッセージカードで隠れてるんですよ。あんたら、揃いも揃って何をやってんねん。

 もっとも、これには事情があるんです。本を並べて置いた場所がちょうど暖房の吹き出してくるところと被っていて、1回メッセ―カードが飛んでしまったんです。それで慌ててもう一度カードを並べたら、こんなことになってしまいました。撮影前にちゃんと確認すればよかったですね……以上、余計な話でした。

◆『25時のバカンス』(市川春子)

 2回目の参加となる男性が紹介してくださった作品。『宝石の国』の作者・市川春子さんの短編集です。表題作「25時のバカンス」は、深海の研究者である姉とその弟の禁忌的な愛を描いたSF作品。お姉さんには途中で貝が寄生するそうですが……すみません、一度聞いただけでは何が何やらさっぱりでした。

 紹介された方によると、市川春子さんは美術科出身の作家さんで、作品は難解なものが多いとのこと。本作についても、娯楽というよりはアートに、そして、マンガというよりは画集に近い印象を受けたそうです。おすすめの読み方は、夜寝る前に好きなシーンをパラパラとめくることだとか。なるほど、まさに「25時のバカンス」! ——なんて、適当なこと言っちゃいけません。

 トークの途中、中身をパラパラとめくっていた方が、「黒ベタの塗り方が手塚治虫の『火の鳥』っぽい」という話をされていました。えっと思って覗き込んでみると、確かに、手塚作品で受けるのと同じような印象がありました。これには紹介された方も、「あー確かに」と頷いておられました。

◆『HELLSING』(平野耕太)

 初参加の(初対面ではなかった)男性が紹介してくださった作品です。タイトルは知っていましたし、少佐の「諸君 私は戦争が好きだ」という台詞は有名ですが、どんな作品なのか、そもそも少佐とは何者なのかなど、個人的にはわからないことだらけだったので、話を聞けて良かったです。

 舞台は世紀末のイギリス。主人公のアーカードは、吸血鬼でありながらイギリス国教騎士団に所属し、吸血鬼を狩っている、まさに「化物を狩る化物」。そんな彼を取り巻く戦いを描いたのが本作とのことです。

 紹介された方曰く、この作品は「中二による中二のためのマンガ」。登場人物の誰もが狂っていて残虐で、とにかくカッコイイ。もし実際に中二の時に知っていたら、間違いなく影響を受けて台詞などを口走っていただろうと話していました。同じテーブルには、かつて『遊☆戯☆王』で中二病に罹患した方がいらっしゃいましたが、果たしてこの話を聞いた時の心中や如何に——

 少佐の謎も解けました。少佐は、イギリス国教会を巻き込んだ一連の戦いを影で操っていたナチスの残党の1人、すなわち主人公にとっては敵に当たる人物です。そして、彼が戦争をするのは、戦争がしたいから。何かを達成するための手段としてではなく、戦争そのものを目的として戦争を仕掛けるという、まさに狂った人物の典型。いやはや、書いているうちにこちらまで狂いそうになってきたのでこの辺で。

◆『1ポンドの福音』(高橋留美子)

 大阪サポーターの女性が紹介してくださった作品。この方が家にずっと置いている唯一の作品だそうです。読んだきっかけは、ジャニーズにハマっていた頃に亀梨和也主演のドラマが放送されたことだとか。それを聞いた瞬間、読書会内に、ヅカ沼、特撮沼に続く新たな沼が開くのが見えましたが、「もう足を洗った」「この作品については原作の方がずっといい」という趣旨の発言があり、沼はあっさり埋め立てられてしまいました。いや、そんなことはどうでもいいんです。内容を紹介しましょう。

 主人公は、才能はあるが試合に勝てないボクサー・畑中耕作。彼が試合に勝てないのは、食欲旺盛であるが故に体重制限に引っ掛かってしまうから。懺悔に訪れた修道院で、耕作は見習いのシスターアンジェラに恋をします。そして、試合に勝つと誓いますが、結局また食べ過ぎてしまい、シスターに説教されるばかり。果たして、耕作は試合に勝つことができるのか、そしてシスターを振り向かせることができるのか——

 スポーツを扱ったマンガにしては珍しく4巻という短さで、あっという間に読めてしまうが作品の推しどころの1つ。また、基本的にはラブコメで、どの話もラストでほっこりできるのも魅力だそうです。

 主人公が試合に勝てない理由が緊張などではなく食い過ぎっていうのが笑いを誘いました。高橋留美子さんと言えば、僕は実家にあった『らんま1/2』で盛大に笑った覚えがありますが、本作も面白そう。そんな話をしていたら、帰り際にあっさり貸してくださいました。ありがとうございます!

◆アルテ(大久保圭)

 午後の部からご一緒している男性が紹介してくださいました。ルネサンス期のイタリアを舞台に、画家を志す女の子の姿を描いた作品。紹介された方によると、読んでいるうちに、男性社会の中で一人前になろうと奮闘する主人公の姿に、「仕事女子頑張れ!」とエールを送りたくなり、自分も元気を貰えるのだとか。なので、おすすめの読み方は「ヘコんだ時に読む」だそうです。

 印象的なエピソードを幾つか紹介していただいたのですが、その中の1つに、有名な画家に弟子入りを志願した際、「なぜ絵を描くのか?」と問われ一度追い返されるという場面があるそうです。僕も時々、「なぜ文章を書くのか?」と考えることがあるので(仕事じゃないけど)、その問いに主人公がどう向き合ったのかとても気になりました。

 本作は今も月刊誌で連載中で、まだまだ終わる気配はないそうです。物語は主人公の成長を描きながら進んでおり、重要な場面も幾つか出ているのだとか。続きが気になりますね。あ、僕はまだちっとも読んでないんだった……

◆『山と食欲と私』(信濃川日出雄)

 初参加の女性が紹介してくださった作品。山ガールと呼ばれるのを嫌う自称・単独登山女子が、山に登りご飯を食べる様子を描いたアウトドアマンガです。山の上でご飯を作って食べるシーンがとにかく食欲をそそるそうです。そう言われて、僕はこの間アマゾンプライムで観た『ゆるキャン△』を思い出しました。アウトドアマンガのご飯って、なぜかどれもとてつもなく美味しそうなんです。

 紹介された女性はなんと、このマンガに触発されて、屋久島まで行ったそうです。そこら辺の山をすっ飛ばしていきなり屋久島、それも装備をきちんと整え3泊4日で敢行というのに、僕らは驚き、そして笑いました。実際の行程は結構ハードだったそうですが、話されている時の女性の表情を見ていると、行ってよかったんだなあと感じたものでした。

 「皆さんは山に登られますか」という質問があったので、自分自身を振り返ってみました。普段着で行ける程度の山なら時々登っているような気がしたんですけれど、それでも、最後に登ったのは去年の6月でした。ちなみにその時登ったのは京都の大文字山で、大の字の部分からの京都の眺めは最高でした。そんな話をしていると、向かいの男性が「あそこは街灯ないんで夜だとほんとに真っ暗で、都会感がなくていいですよ」と教えてくださり、一同「へえ~」と驚いておりました。

 色々話をしていると、僕も近くちょっとした山に出掛けてみたくなりました。もちろん、普段着で行けるところですけどね。

◇     ◇     ◇

 以上、推しマンガ読書会の様子を振り返ってきました。

 さて、個人的な話なんですが、ちょっと困ったことが起きてしまいました。というのは、今回の推しマンガ読書会をもって、紹介できるマンガがなくなってしまったのです。いま手元に置いているマンガは全部で3作品。①こうの史代さんの『夕凪の街 桜の国』、②同じくこうの史代さんの『この世界の片隅に』、そして、③杉浦日向子さんの『百日紅』です。このうち、①は去年の8月に読書会で紹介し、③は先月飲み会で紹介していました。そして今回、最後に残った②を紹介してしまったのです。しかし、推しマンガ読書会は推し企画の1つで、今後も開かれる可能性が高い。参加しなければならないわけではありませんが、このまま引き下がるのはどうにも惜しい。

 そう思っていたところへ、光が差し込んできました。

 それは、全体発表が終わり、フリートークをしていた時のこと。隣のテーブルに、手塚治虫の『アドルフに告ぐ』を紹介された方がいて、話を聞いているうちに、先のテーブルトークで『火の鳥』が話題に上ったことを思い出しました。その時、突然、記憶の底から蘇ってきた作品があったのです。

 『火の鳥 乱世編』

 よしよし、図書館で探すなり古本屋で買うなりしましょう。ちなみに、『アドルフに告ぐ』を紹介してくださった男性曰く、「乱世編がお好きなら、鳳凰編もハマると思いますよ」とのこと。こちらもチェックしたいですね。

 というわけで、次回に向けて希望が見えたところで、レポートを締めたいと思います。そして、この記事をもって、全4回にわたりお送りしてきた2/17の彩ふ読書会@京都の振り返りも最後になります。毎度毎度長文にお付き合いいただいた皆さん、本当にありがとうございました。

 今日も今日とて京都の話、2月17日に開催された彩ふ読書会@京都の振り返りの続きをお送りしたいと思います。前々回は午前の部・推し本編を、前回は午後の部・課題本編をお送りしておりました。本来ならば今回は夕方の部・推しマンガ編に入るはずなのですが、前回、課題本読書会の振り返りが思いがけず長引いてしまい、後半を書き切ることができませんでした。というわけで、今回は課題本読書会の後編をお届けしたいと思います。

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 繰り返しになりますが、課題本と読書会の概要をみておきましょう。今回の課題本は、高野和明さんの『幽霊人命救助隊』。天国へ行きたくば、自ら命を絶った償いに、自殺志願者100人の命を49日間で救うべしと、神に命じられた4人の幽霊による、東京を舞台にしたレスキューの模様を描いた小説です。死のうとしている人の命を救うというラストが保証されている一方で、それぞれの自殺志願者の人柄、抱える問題などが胸に迫る、そんな作品でした。600ページという大部の作品ながら、参加した誰もが「読んでよかった」と口を揃えておりました。

 読書会は13時40分から1時間半ほど行われました。参加者は全部で11名で、2テーブルに分かれて感想や考察を話し合いました。会の最後には、それぞれのテーブルの代表者がトークの内容を紹介し、テーブル間で話題を共有する時間もありました。

 僕の参加したテーブルには、男性3名・女性2名の5名がおりました。僕のほかは、進行役の男性、謎解き部でご一緒したことのある男性、小説の主人公・裕一と同じ歳のお子さんをもつ女性、そして、『幽霊人命救助隊』を名作と猛プッシュした女性でした。

 前回の記事では、それぞれの方の印象に残った場面を振り返った後、お子さんを持つ女性の発言をきっかけに、家族について、さらには、家族や友人といった近しい人たちとのコミュニケーションについて、色んな話が出たことを紹介しました。今回の記事では、テーブルトークの中で、家族と並んで印象的だった大きなテーマを巡るやり取りから振り返ることにしましょう。

◆『幽霊人命救助隊』の中の死と生

 読書会が始まる前、進行役の男性がこんなことを言っておられました。

「今日は僕、ちょっと、死生観について真面目に語るつもりでいます」

 なるほど、『幽霊人命救助隊』は、幽霊=死んだ人間が生きている人の命を救う話ですから、そこには死と生が描かれているわけです。しかし、僕にはその時、この作品を起点に死生観を語るというのがどういうことか、いまいちピンと来ていませんでした。なにしろ、4人の幽霊はとにかくキャラが立っているので、読んでいるとどうも、彼/彼女らが死んでいることを忘れてしまうのです。ですから、進行役の男性がいったいどのような死生観を語るのか、僕は興味津々でおりました。

 ところが、机の抽斗の奥の宝物をいつまでもしまっておこうとするように、男性はなかなか死生観について話してくれません。そんな中、テーブルトークの内容を死と生に関する考察へと進めていったのは、家族をテーマにしたトークでも大活躍だった女性の方でした。

「最後まで読むとわかるんですけど、これって輪廻の話ですよね。で、輪廻の考え方では、人は生前犯した罪の報いで、再び生き直さないといけないんですよね。もう1回生き直さないと罪が滅ぼせるかわからないわけですから。そう考えると、天国行きの課題を与えられた4人っていうのは、輪廻の中から抜け出せそうな人たちなんじゃないかなと思うんです。神様が課題を与えているのは、輪廻の業を背負った人を減らすためなんじゃないかと」

 この考察は、宗教思想に疎い僕には想像もつかないものでした。輪廻思想をベースに展開される、4人の幽霊がどんな人たちなのか、また、なぜ4人が救助隊に選ばれたのかに関する説明は、とても鮮やかで、じっと耳を傾けたくなるものでした。

 そして、女性が話し終わったところで、満を持してと言わんばかりに、進行役の男性が話し始めたのです。

「これはもう物語の根幹にかかわることですけど、亡くなった人が生きている人のあれこれに介入すること自体どうよって思うんですよね」

 それを疑問に思ったら作品吹っ飛ぶぞという問いに、テーブルはスッと静まり返りました。もっとも、男性のねらいは作品を吹っ飛ばすことではありませんでした。彼はこう続けます。

「なんていうか、そうなってること自体勿体ないと思うんですよね。生きているうちに言っておけばいいことを、死んでから言うのって。だから、言いたいことは、生きているうちに言わないといけないと思うんです」

 つまり、男性のねらいは、悔いなく生きよと言うことにあったのです。実際、この発言に続けて、謎解き部でご一緒したことのあるもう一人の男性は、「期限までにやらないと後悔しますよね」と話していました。

 一連のやり取りの後、『幽霊人命救助隊』をイチオシする女性からこんな言葉がありました。

「私幽霊とかほんと苦手なんですけど、この作品に出てくる幽霊たちはほんとに好きで、私の耳元で何か声を掛けてくれたらなって思うんです」

 その瞬間、僕のスイッチがカチッと入ってしまいました。

「実はね、僕今朝彼らの声を聞いたんですよ」

 そして、皆さんが神妙な顔をしてこちらを向いたところで、いや、そうじゃなくてと焦りながらこう言いました。

「”課題本を最後まで読みなさい!” ”今すぐ起きろ!!”ってね。で僕起きたんですよ」

 ま、ウケたから良しとしましょう。

◆テーマソング誕生

 ここで、課題本読書会史上、おそらく初めてであろうある出来事についてご紹介しましょう。その立役者となったのは、ここまでのトークで大活躍の、あの女性でした。

「今回本を読んでた時に、ふと思い出した曲があって。普段こんなこと考えないんですけど、テーマソングにするならこの曲だと思ったんです。amazarashiさんの『僕が死のうと思ったのは』って曲なんですけど」

 そう言うと、彼女はスマホを取り出し、YouTubeを起動させました。そして、

「再生して大丈夫ですかね」

 この時、僕はすぐに、それくらいいいだろうと思いました。過去に推し本読書会で、代表ののーさんが朗読アプリを紹介すべく、音声を流したことがあったのです。

「いいと思いますよ」

 そうして僕らは6分ほど、トークを中断して、音楽に耳を傾けました。


 曲が終わってすぐに、謎解き部でご一緒した男性がぽつりと言いました。

「この歌詞の『死のうと思った』の部分って、『生きようと思った』に置き換えられますよね」

 1回聞いただけでそんな感想が出てくることに、僕はただただ驚いてしまいました。この方の言うことはもっともでした。ほんの些細なことでも、人にとっては死の引き金になる。けれども、同じ出来事が、ある人にとっては、生きる力の源になる。いや、それは、同じ一人の人にとっても言えることかもしれない。ウミネコが桟橋で鳴くことも、誕生日に杏の花が咲くことも、あなたが綺麗に笑うことも——

 『幽霊人命救助隊』の中では、自殺しようとする人はしばしば、傍目にはなんでそんなことでと思うような些細なことをきっかけに自ら退路を断ってしまうと書かれています。また、一度死に近付いた人は、ふとした拍子に死の側へ引き寄せられ、また次の瞬間には行きたいと願っているものだとも書かれています。そのように、生と死が紙一重であることを、繊細に、優しく、そして力強く歌い上げたこの曲は、確かに、『幽霊人命救助隊』のテーマソングに思えました。

 余談ですが、トーク中に突然流れ出した音楽は、当然ながら隣のテーブルの注意をも惹き付けておりました。会が終わり、フリートークが始まると、程なく、隣のテーブルから大先輩の男性がつかつかとやって来て、「さっきの曲は何だったんですか」と尋ねられました。僕らはフフフと笑いながら、「いや実はね」と経緯を説明したものでした。

◆残された謎

 こうして色々話しているうちに、あっという間に全体発表の時間が近付いておりました。今いまどれくらい経っただろうと思いパッと時計を見ると、予定時刻の15時が5分後に迫っており、びっくりしてしまいました。そのことを告げると、「全然話し足りない」という言葉が返ってきました。今回の課題本は、それだけ僕らを触発するものだったのでしょう。

 ここで僕は、今回掘り下げきれなかったテーマに少し触れてみることにしました。

「この本まだまだわからないこともいっぱいあって、もう1回読むともっといろんなことを感じられるんじゃないかなと思うんです。例えば、幽霊4人の気持ちの変化や成長をもっとつぶさに見ることができたり」

 そう言うと、「もう1回読むのはいいかな」という声も上がりましたが(何しろ分厚い本ですから)、一方で、僕の投げ掛けた問いについて、言葉を返してくださる方もおりました。物語の中で、4人の幽霊はそれぞれ、自分が自殺した時と同じような境遇に置かれた人たちに出会い、辛い現実から目を背けようとしながらも、その人たちを助けることで、救助隊として成長しています。それぞれの成長のきっかけとなったエピソードを挙げてくださる方もいて、僕も頷いておりました。ただ、僕が気になっていたのは、また別のことだったのです。

「読んでると時々、100人助けて天国に行くっていうのが、ゲームでミッションをクリアするような感覚に聞こえることがあって。そこから、もっといろんな人を助けたいって思えるようになるまでの転換点ってどこだったのかなっていうのがわからないんです」

 そう言うと、皆さん一様に考え込んでしまいました。終了時刻間際にとんでもない話題を振ってしまったわけですが、僕も必死だったので、そこまで気が回りませんでした。

 本というのは、深く読み出せばキリのないもので、結局、尽きることなく疑問が湧いて出ることを確かめ合ったところで、テーブルトークは終了となってしまいました。ただ、僕の投げた問いを巡って、1つ印象に残る発言があったので、ご紹介したいと思います。それは、謎解き部でご一緒したことのある男性の言葉です。

「期限が決まっている以上、ゲーム感覚は最後まで多少あったんじゃないでしょうか」

 男性が「期限」という言葉を口にされたのは、この日2回目のことでした。よほど何かに追われていたのでしょうか、という詮索はともかく、この言葉が印象に残ったのは、ひとりの人間の中に複数の感情が同居する可能性を僕が忘れてしまっていたことに気付いたからでした。ゲーム感覚と、人を助けたいという真心は、互いに排他的なものではなく、ひとりの心の中に同時に存在しうる。そう考えてみることはきっとできると思うし、むしろそう考えることで、人の心の機微というものを、より丁寧に掬い取れるのではないか。この発見は、今後の読書にぜひ活かしたいと思います。

◆全体発表

 この長いレポートも漸く終わりが見えてきました。最後に、全体発表の内容をもとに、隣のテーブルでどんな話が出ていたのか、ちょっとだけ覗いてみることにしましょう。

 隣のテーブルには、精神医療を専門にされている方がいらっしゃり、うつ病をはじめとする心の病のことやそれらへの対処法のことが話題にのぼったそうです。自分の苦悩を簡単に語りだせないでいる自殺志願者たちの姿は、現実をよく捉えているとのことでした。

 また、死についてずっと考えていたことがあるという方がいらっしゃっり、その方は、自己肯定感の低さが自殺につながるのではないかと話されたそうです。他にも、命は助かっても生きていくのは大変だといった感想や、それでも生きているだけで尊いのだという意見、さらには、自殺は許されないというスタンスが本作を貫いているという考察などが出たとのことでした。実際のトークの中では、身近な方の死に触れる場面もあったそうです。

 伺っていると、僕らのテーブルと似ている部分もあれば、違う部分もあると感じました。誰もが課題本を読んでよかったと思っていたことや、生きているだけで尊いと感じたことなどは共通していると思います。一方で、自己肯定感については、僕らのテーブルではあまり話題に上らず、はんたいに、言葉のやり取りをはじめとするコミュニケーションの問題は、隣のテーブルでは注目されなかったのだなと感じました。もちろん、どちらの読みが正しいということではなく、それだけ沢山の読み方があるということであり、また、誰と話すかによって触発される感想も違うということなのだと思います。

 などといった感想を抱きながら、読書会は終了となりました。

◇     ◇     ◇

 話し終えるのが名残惜しくて、フリートークの時間になってもまだ読書会が続いていたのを思い出します。流石にこれ以上書くのは控えますが、印象深い話もいくつか出ていました。学生時代、フィールドワークの授業を受講した際に、先生から、「レコーダーを切ってからの方が面白い話が聞けることが多い」と言われたことがあります。読書会は本編も面白いのですが、アフタートークはまた違った味わいがあっていいなと思いました。

 最後にも書きましたが、課題本読書会の醍醐味は、違う人の感じ方・考え方がわかること、そして、自分の考えが変わっていくことにあると思います。『幽霊人命救助隊』を激推しされていた女性が、帰り際に話しておられました。「皆さん私が気付かなかったことをたくさん話されていて、とても面白かったです」その本を好きか嫌いか、何度読んだかといったことを超えて話が展開するのは、とても面白いことだと、僕も今回改めて実感しました。

 といったところで、2回にわたり長々とお送りしてきた午後の部・課題本読書会の振り返りを締めたいと思います。さて、読書会の振り返りはあと1回、夕方の部・推しマンガ編が残っております。どうぞ寛大なるお心をもって、もう1回お付き合いいただけたらと思います。

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