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 天満の駅から北へ向かって67分歩いたところに、「ずっとおでん」というおでん屋さんがある。仕事帰りに友人2人とこの店へ飲みに行った。

 「ずっとおでん」は僕にとって思い出深い店である。1年前の11月、彩ふ読書会の1周年イベントの帰りに、メンバー9人でこの店を訪れた。当時読書会で“サポーターのサポーター”と呼ばれていた女性の案内であった。「あっさりしていて食べやすいし、ヘルシー。おまけに、食べたいものを食べたい分だけ注文できるから、気兼ねがなくていい」それがこの方の説くおでんの魅力であった。

 果たして僕らは見事におでんに魅せられる。ちょうど寒くなり始めていたこともあり、出汁のしみたほくほくのおでんを、僕らは「んー!!」と言いながら好きなだけ口に運んだ。さらに、店の雰囲気にすっかり落ち着いてしまったのだろう、気付けば四方山話に花を咲かせていた。5時に店に入った僕らだったが、退店した時には10時を回っていた。なお、その後程なくして、詳細極秘の「おでん会」なる組織が誕生し、サポーターのサポーター女史は“おでん会会長”と名を改めることになる。

 振り返ってみれば、この飲み会は僕の読書会生活のうえでの転換点でもあった。それまでただの参加者として、さしてはっちゃけもせず人見知りぶりを露呈していた僕が、すっかり読書会に入れ込んでいったのは、この飲み会があったからのように思う。翌12月に立ち上がった京都・彩ふ読書会のサポーターに誘われたのもこの時だった。もっとも、これは今日の話の中では余談になる。

 今の流れの中で大事なことは、僕が〈おでんで飲む〉を始めたのは、この「ずっとおでん」での飲み会があったからだということだ。以後、友人を訪ねて福井嶺北を訪ねた時、京都の読書会の帰りなど、事あるごとに僕は「おでん、おでん」と言い続けた。これだけなら影響されやすい阿呆ということで話は終わるが、面白いことに、その後口にしたおでんはどれも例外なく美味かった。おでんは偉大なり。かくして僕は「おでん、おでん、おでん」と言い続けるド阿呆になる。

 それと同時に、また「ずっとおでん」へ飲みに行きたいという思いも強くなっていた。そして、漸くその念願叶う時がきたというわけである。

 改めて行ってみてわかったのだが、「ずっとおでん」は定番のおでんが美味しいだけでなく、珍しいおでんがあって面白い店でもあった。わけても僕がハマったのが、おくら・九条ネギ・春菊とろろの“青物3きょうだい”である。どれもよく出汁がきいているし、それでいてシャキシャキ感が残っている。特に春菊とろろの、ほんのり柚子の香りのきいた出汁は、やさしくてたまらなかった。僕らは3人揃って「ああ、これいい!!」と言いながら、ゆっくり味わって食べた。

 それともう1つわかったことがある。この店は日本酒の種類がとにかく豊富だということだ。一緒に行った友人の一人と飲みに行く時、僕らは必ず日本酒を飲む。案の定、彼は別紙数枚に及ぶ日本酒メニューに目を輝かせ、開始から僅か40分で最初の1合を頼み始めた。そしてそれから3時間の間に、何種類もの日本酒を飲んだ。甘口もあれば辛口もあった。どちらも美味しかったが、僕らは断然辛口党だった。中でも「ばくれん」が美味しいと口を揃えて言い、最後にもう1合頼んだ時には、僕らはもうだいぶ酔っていて心なしか無口になりつつあった。なお、解散後家に帰るまでの間に、僕は駅前広場のベンチで寝そうになる。酒はほどほどに飲むべし。

 一緒に行った友人2人は、お互いには知り合いでもなんでもなかった。ただ、それぞれにおでんに興味を持ったので、折角だから一緒に行くことにしたのである。果たして、気付いた時には、2人は互いに「話しやすい」と言い、呼び名も決めあって楽しそうに話していた。

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 「ずっとおでん」を3度目に訪れるまでには、そう時間はかからない気がする。もっとも、その時行く相手が、同じ友人なのか、読書会の誰かなのか、もっと別の誰かなのか、それは全くわからない。もっとも、そんなことは問題ではない。美味いおでんを食べ、大笑いしながらひと時を過ごす。大事なのは、そういうことだ。