先日宣伝した「彩読ラジオ」であるが、830日(金)21時から予定通り放送された。後で知ったことだが、金曜ロードショー『天空の城ラピュタ』の裏番組であったらしい。放送の度にサーバーダウンを招くと噂の“滅びの呪文祭り”まで巻き起こす怪物コンテンツを相手取りつつ、「彩読ラジオ」は30余名の視聴者を獲得し、1時間半の放送を見事にやり切った。明らかに善戦である。放送局長のゆうさん、そして出演されたKJさん・特撮隊長、お疲れ様でした。

 さて、ラジオ直前の時間帯にうっかり飲み会を入れてしまった僕であるが、幸い21時ぴったりに放送を聞き始めることができた。そして、お三方の話を聞き、笑ったり、頷いたりしつつ、時折コメントを打っていた。の、で、あるが……

 正直に申し上げよう。後半45分の記憶が存在していない。

 早い話、寝てしまったのである。

 僕の記憶は、特撮隊長が角田光代さんの作品の一節を読み出したところで途切れている。その辺りからどうにも睡魔に打ち勝てなくなってきて、イヤホンを耳にさしたままデスクチェアに腰かけて目を閉じた、これは確かである。次に気が付いた時、僕はデスクチェアにすらおらず、ベッドの足側に頭を投げ出してうつ伏せに倒れ込んでいた。ふらつく頭で時計を見ると、831158分を指していた。咄嗟に思い浮かんだものは2つ。1つは「どうやって寝たんだ?」という永遠に解決されない疑問であり、もう1つは「しまった、ラジオが!」という後悔であった。

 このままでは、宣伝者として、さらには過去2度の出演歴を持つ者として申し訳が立たない。そこで、一夜明けてから、タイムシフト視聴で全編聞いた。というわけで、以下、今回のラジオの感想を思い付くままに書き記そうと思う。

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 今回の「彩読ラジオ」のテーマは「好きな作家について」であった。実際、放送の前半はこのテーマに沿う形で話が進んでいた。また、放送中盤に突然“お便りコーナー”が始まり、ある読書会メンバーから寄せられた好きな作家に関するお便りが紹介されるという一幕もあった。一方、放送の後半は、テーマそっちのけで、課題本読書会の話や部活動の話で盛り上がっていた。最終的に「好きなようにゆる~くやれるのが読書会の魅力ですね!」というほわんとした結論が出たところで、放送は終了となった。要するに、やることちゃんとやったうえで、自由の限りを尽くした放送だったということである。

 好きな作家について、KJさんは伊藤計劃さんを、特撮隊長は山内マリ子さんと角田光代さんを、ゆうさんは夏目漱石を(漱石だけ“さん付け”がしっくりこない……)それぞれ紹介していた。また、お便りコーナーでは、北欧のミステリー作家レックバリが紹介された。放送を聞いていて面白いなあと思ったのは、その作家を好きな理由が三者三様だったことである。KJさんは伊藤計劃作品の世界観——悪事を働こうという人がいないのに生きづらくなってしまうディストピア世界——が自分の世界認識に似ているから好きだという〈設定惚れ〉。特撮隊長は山内マリ子作品や角田光代作品の登場人物に感情移入してドハマりする〈共感惚れ〉。ゆうさんは夏目漱石作品の文体や言葉遣いが面白くて好きだという〈文体惚れ〉。そして、謎のお便り差出人は、北欧の作品なのに日本人でも共感できるところに驚いたという〈ビックリ惚れ〉であった。好きな作家がそれぞれであるのと同じように、作家を好きになるのも人それぞれなのである。

 もっとも、この面白い発見は、同時に話題が逸れるもとともなった。「本の読み方ってそれぞれ違いますよね」という話が、「その違いって課題本読書会の時に顕著になりますよね」という話になり、やがて、大阪で『キッチン』を課題本読書会にした際に起きた“カツ丼事件”の話を呼び込むことになったのである(注)。そこから話題は課題本読書会のことになり、東京と大阪の読書会の違いのことになり、それぞれの場所で行われている部活動のことへと広がった。繰り返しになるが、実に自由な展開である。

 一連の脱線の中で、僕が特に面白いなあと思ったのは、〈課題本読書会で課題本そのものと関係のない話で盛り上がるのは普通のことなのか?〉というテーマであった。大阪、そして京都の課題本読書会では、課題本と無関係の話題で盛り上がったり、思いがけない方向に話が発展したりすることは、なんだかもう当たり前のことである。『キッチン』カツ丼事件は確かに別格級の面白さであるが、『天才はあきらめた』山ちゃん欠席裁判事件、『砂の女』筋肉ムキムキ発言、『こころ』BL解釈事件辺りも、負けず劣らずインパクトがあったように思う。さらに言えば、秘密結社が進行・演出の一切を乗っ取った『宝塚ファンの社会学』課題本読書会のように、会自体が事件というものまで存在するのだ。もちろん、僕らは真面目に本の話をしている。けれども、なぜか毎回面白い発言があって、ドッと笑いが起きるのである。

 ところが、KJさんによると、東京の彩ふ読書会では、ここまでぶっ飛んだ展開になることはまずないそうだ。なぜ両者に違いがあるのかは、一概に説明できることではないだろう(そもそも、なぜ大阪・京都では読書会毎に笑いが起きるのかさえ説明がつかないのだ)。ここではただ“何か違うらしい”というところで、話を打ち止めておこうと思う。何はともあれ、僕が楽しみにしていた大阪-東京読書会比較も行われており(思いがけない形ではあったが)、とても面白かった。

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 といったところで、「彩読ラジオ」の振り返りを締めくくろうと思う。他にも、部活動のことなどで面白い話はあったが、僕の方で何もかも書き連ねてしまうのも如何なものかと思うので、特に気になった話題を書き留めたところで筆を置こうと思う。

 なお、以下にこのブログ始まって以来初めて「注」というものを掲げてみた。放送中に特撮隊長が手を叩くほどの思い出し笑いをしてしまった“カツ丼事件”についてまとめているので、なんだそれはと思った方は読んでいただきたい。

(注)
 “カツ丼事件”——3月に大阪で開催された吉本ばななさんの小説『キッチン』の課題本読書会で起きた事件。主人公・桜井みかげが、母を亡くし東京を去った想い人・田辺雄一にカツ丼を届けるというクライマックスシーンについて話している最中に、あるベテラン参加者が「カツとじをご飯の上に乗せて食べる意味がわからない」という趣旨の発言をし、見事に話が脱線したという出来事を指す(特撮隊長の記憶では、「カツとじってそもそも、あっさりしたものが食べたいのかこってりしたものが食べたいのかもわからない」という趣旨の発言もあったという)。もとは1グループ内で起きた事件であるが、全体発表で紹介されたことにより、当日の参加者全員の知るところとなった。全体発表の様子については、下記振り返り記事に詳しい。