818日に京都北山のSAKURA CAFÉで開催された彩ふ読書会の振り返り、最終第3弾をお送りしたいと思います。

 ここまで、第1弾では午前の部=推し本披露会の様子を、第2弾では午後の部=課題本読書会の様子を、それぞれ振り返ってまいりました。実を言うと、読書会本編の振り返りはこの第2弾までで終了ということになります。しかし、京都の彩ふ読書会では、読書会終了後も会場をお借りして、メンバー同士おしゃべりしたりゲームに興じたりする交流の場が設けられています。そして、この交流の場を、われわれは現在「オトナの学童保育」と呼んでいるのです。これからお送りする振り返り第3弾では、818日の「オトナの学童保育」の様子をたっぷりご覧に入れようと思います。

 今回の「オトナの学童保育」には持ち込み企画がありました。午後の部の課題本を推薦してくださった京都サポーターの男性から、「『夏への扉』の舞台版のDVDを持っているので、上映会をしようと思います」という提案があったのです。SAKURA CAFÉには、プロジェクターとスクリーンが完備されていて、僕らはこれまでにも2度、これらの機材を使って上映企画を実施したことがありました。ですから、今回の持ち込み企画についても、すぐさま「じゃあやりましょう」という話になったのです。

 というわけで、今回の「オトナの学童保育」振り返りは、舞台版『夏への扉』上映会の振り返りという形で進めたいと思います。

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 さて、機材があり、上映会の経験もあるといっても、その日接続するパソコンやDVDソフトが無事再生されるかどうかは、やってみないとわかりません。そこで、上映会に先立ち、昼休みのうちにテスト上映をすることになりました。上映自体は何の問題もなく成功するのですが、この時ちょっとした騒ぎが起きたので、まずその話を書いておくことにしましょう。

 13時、午前の部と午後の部の間に自然な形で発生する昼休憩は折り返しに差し掛かっていました。多くのメンバーは、この間に会場近くのコンビニへご飯を買いに行き、会場へ戻ってきて食べるのですが、13時頃になるとそれも大方終わっていました。ですので、会場にいたメンバーの殆どは、何の気なしにスクリーンを見られる状態でした。

 企画者である京都サポーターの男性と、読書会代表ののーさんが中心になって機材のセッティングは進み、映像が流れ始めました。音声も会場内に十分通っています。折角なので、僕らはそのまま劇の最初の数分を見ることにしました。

 キャスト揃い踏みのプロローグが済み、大きなボストンバッグを持ったダン役の俳優が舞台上を歩き始めました。『夏への扉』は、親友と婚約者に裏切られ失意の底にあるダンが、飼い猫のピートと共に酒場に入るところから始まります。そして、ピートをこっそり酒場へ連れ込むために使われるのが、ボストンバッグなのです。ということは、いま舞台に立っている俳優の持つボストンバッグにはピートが入っているということになるわけです。

「ピートどんな感じか気になりますね。ぬいぐるみとかですかね」

 傍で見ていた僕がそう言うと、企画者の男性からこんな答えがありました。

「ピート役もちゃんといるんですよ。まあちょっと演劇的な表現なんですけど」

 僕は「えっ!」と驚くと同時に、なんだかわくわくしました。どんな利口な猫ちゃんなんだろうと胸躍らせながら、スクリーンに映るボストンバッグに注目します。

 そして次の瞬間、ピートが勢いよく現れました。

 が、そこに映っていたのは猫でもぬいぐるみでもありませんでした。

 ボストンバッグから出てきたのは、オッサンだったのです。

 それも、上は革ジャン、下は青いジーパンという、妙にワイルドな格好のオッサン。

 さらに言えば、ちょっとスリムになったブラマヨ小杉みたいな見た目のオッサン。

「うわっ!
「えーっ!
「ぎゃー!!

 そりゃまあ騒ぎの1つくらい起こります。ボストンバッグからオッサンが飛び出してきただけでも相当インパクトがありますし、おまけに、僕らはこの時、バッグから猫が出てくることを期待していたのですから。SAKURA CAFÉは一瞬にして驚きの声で埋まりました。

「だから演劇的な表現って言ったじゃないですか」

 全てを知っていた企画者の男性が、落ち着いた様子でそう言いました。が、僕らは到底その説明で混乱を収拾できる状態じゃありませんでした。演劇的な表現って、なんだ……そんな中、いち早く立ち直った京都読書会リーダーのちくわさんが、「吉本新喜劇やん」とツッコミを入れていました。ツッコミの内容が見事に関西人でした。

 というようなことが、昼休みの間に起きておりました。もっとも、振り返ってみるに、テスト上映を通じてオッサン・ピートに対する耐性を作っておいたのは正解だったような気がします。本番でいきなりあんなオッサン出てきたら、もうお芝居どころじゃなくなっていたに違いありませんから。

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 それでは、「オトナの学童保育」本編へと話を進めましょう。

 15時過ぎに課題本読書会が終わった後、いつもは暫くフリートークの時間があって、「オトナの学童保育」は16時くらいから始まるようになっています。しかし、この日は1540分過ぎには上映会がスタートしました。理由はよくわかりませんが、おそらく企画者の男性が早く観たくてたまらなかったのでしょう。

 上映会に参加したメンバーは全部で8名でした。他のメンバーが帰った後、僕らは会場内の机や椅子をテキトーに動かし、お手製の上映会場を拵えました。また、6月に『有頂天家族』の上映会をやった時の経験から、通りに面した大きな窓より強い西陽が差し込むことがわかっていたので、膝掛を巨大化したようなチェック柄の幕をロフトから螺旋階段の隙間に向かって垂らし、陽の光を遮りました。

 舞台は全部で2時間強の長さでした。製作していたのは「キャラメルボックス」という劇団です。僕は全く知らなかったのですが、かつて上川隆也さんも所属していた劇団だそうで、読書会メンバーの中にも、キャラメルボックスを知っている人や、実際にお芝居を見に行ったことがあるという人が少なからずいました。上映会を企画した男性はもちろん劇団のファンで、今回上映したDVDも今年3月に公演を観に行った際、劇場で買ったものとのことでした。

 上映会が始まって暫くの間、僕らの注目の的はやはりピートでした。上映会には午後の部から参加したメンバーも姿もありましたが、その人たちはオッサン・ピートの衝撃をまだ知りません。耐性のついた試写会組は、「他のメンバーはいったいどんな反応を示すだろう」と、もうそっちを楽しみに、ピートの登場を心待ちにしていました。なんだったら、上映会が始まる前、帰ろうとするメンバーを引き留め「ピートが出てくるまでだけでも観て行ってくださいよ~」と言う一幕さえあったのです。

 果たして、我々の期待通り、ワイルドなオッサンがボストンバッグから現れ、そんなこととは知らずにいた何人かの参加者は「わあっ!」と声を挙げていました。3時間前、同じかそれ以上の叫び声をあげていた人たちは、そんな他のメンバーのリアクションと、オッサンの風貌を同時に笑いながら、「これ舞台のつくりはどうなってるんですかね」などと言い合っていました。おかしなものですね。

 さて、詳しく書き立てるのはこれくらいにして(殆どピートのことしか書いてないけれど)、ここからは舞台版『夏への扉』の感想をざっと箇条書きで綴っていきたいと思います。皆さんスクリーンに釘付けで感想など特に話し合っていませんから、以下に挙げるのは全て個人的な感想になります。ご容赦ください。

・ピート役のオッサン……もとい俳優がナレーションも兼ねているので、舞台上にはずっとピートがいる格好になった。そのため中盤以降もやけにピートの存在感が強かった。これは原作との大きな相違点である。

・大柄な男優がピートを務める関係で、女の子がピートを抱き上げるシーンはギャグシーンに変わっていた(「抱けないって」みたいなツッコミが入る)。また、ある登場人物が「ウチにもこんな猫ちゃんいるんです~!」というシーンでも、「こんな猫他にいるんですか」というツッコミが入っていた。設定を上手く活かし、かつ原作を過度に壊さないようにギャグ化しているのが凄いと思った。

・誰かも言っていたけれど、全体的に役者のテンションが高かった。そのため、SF作品というよりもポップなコメディーというタッチに仕上がっていた。原作ではちょい役だったキャラクターでも異様にキャラが立つのが個人的には面白かった。

・尺の都合か、「5分後」「10分後」「1時間後」というナレーションで物語がポンポン進むのが面白かった。間を取るという発想がないのは惜しい気もしたけれど、上でも書いた通り勢いで通すようなお芝居だったので、この演出もマッチしていたように思う。

・ハイヤード・ガールをはじめとするロボットも役者さんが演じていた。ロボットのカクカクした動作を巧みにこなしている姿はやはり印象的だった。

・終盤は原作を読んでいた時よりもずっと感動的で、軽くホロっとしてしまった。やっぱり、生身の人が演じると印象が変わるものだと思った。

 以上です。サクサク進むお芝居だったので、内容について思ったことはこれくらいでした。とにかく、観ていて楽しかったです。ありがとうございました。あと、演劇にも俄かに興味がわきました。

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 上映会は、スタートが早かった分終わるのも早く、18時前には機材の片付け等もほぼ終えていました。その後、僕を含め何人かの参加者は会場に残り、読書会で出されたお菓子の残りを頬張りながら、暫く話していました。どんな話をしたのかあまり覚えていないのですが、大方覚えていなくても問題にならないようなざっくばらんな話をしていたのだろうと思います。ただ1つ、京都サポーターの女性の方が、「ロボット役の人の足が細くて、もう……」と話していたのだけは覚えています。「そこですか⁉」と思いながら聞いていました。

 そんな僕らも、19時前には会場を後にしていました。その後、サポーター4名は北山駅前のロイヤルホストに入り、つまりを頬張りながら「犯人は踊る」で遊んでいました。ここに来てゲーム登場。いつの間にか、読書会に来た以上、1回はゲームをしないと気が済まない性分になってしまっている自分に驚きます。ていうか、もはや何の集まりなんでしょうね、われわれ。

 なんていう疑問など軽く吹き飛ぶ楽しさの中、夏の1日が幕を下ろしていくのでありました。

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 以上をもちまして、818日の京都・彩ふ読書会の振り返り全3回を締めくくりたいと思います。皆さま、ここまでお付き合いくださり、本当にありがとうございました。