久しぶりに読書会の部活動に参加した。今回参加したのは、7月に発足したばかりの「朝活部」の活動である。その内容は、大阪と京都の間にある大山崎へ行き、天王山の中腹にあるお寺と美術館を回ってから、カフェでおしゃべりするというものであった。正確に言えば、まずカフェでブランチをしてからお寺と美術館を巡り、美術館内のカフェでおやつを食べたので、カフェには2回入っている。2回とも賑やかな席であり、色んな話を聞くことのできる充実した場であった。

 さて、近頃僕の執筆欲が減退しているとはいえ、以上終わりでは流石に味気ないので、もう少し記録を続けることにしよう。

IMG_E0358

 「朝活部」は、読書会アンバサダーの称号を持つ大先輩・momomotokazuさんが立ち上げた部活である。朝早くから活動して1日を有意義に過ごそうというのがコンセプトの部で、土曜日を中心に月1回程度の開催が予定されている(予定と書いたのは、なにしろまだできて間もないので、この通りに事が運ぶとは限らないからである)。活動内容は、今回のように関西一円の日帰りできる場所へ出掛けてまち歩きをするのがメインになりそうだが、以前に「メンバー持ち寄りで色んな企画ができたらいいね」という話をやったことがあるので、将来的にはアイデアのるつぼに化けるかもしれない。部の仮キャッチコピーは「可能性は無限大」である。この字面だけ見れば予備校のようであるが、内実がおよそ競争社会とは無縁であることは今更説明申し上げる必要もあるまい。

 今回の目的地である山崎は、上述の通り大阪と京都の間に位置する町である。サントリーの山崎蒸留所がある場所だから、知っている方も少なくないように思う。もっとも、大阪と京都の間を阪急京都線の特急で移動してばかりいる僕にとっては、列車に乗っているうちに通過してしまう町だった。したがって、降り立ったのは初めてのことだったし、何があるのかもまるでわかっていなかった。その山崎が活動地となったのは、ある朝活部員から提案があったかららしい。その方曰く、山崎は「大阪からも京都からも来やすくて、自然はあるし美術館もあるし、高台だから景色もいいしで、昔デートで使っていた場所」とのことであった。

 朝8時半に阪急大山崎駅に集合する。メンバーは全部で8人だった。まず駅前の朝マルシェへ向かったところ、この日に限ってお休みだった。そこで僕らは予定を変更し、朝9時からやっている古民家カフェ「カフェいろはうす」へ向かい、ブランチをいただきながら長い間おしゃべりしていた。日当たりのいいカフェで、クーラーがきいていていて居心地よかった。おまけに、南向きの窓からJRや阪急の列車の往来が眺められたのが、個人的にはたまらなかった。モーニングセットのサンドイッチも美味しくて、あっという間に平らげてしまったものだった。

IMG_0331

IMG_0334

 1時間半ほどしてカフェを出て、次に向かったのは宝積寺というお寺だった。JR山崎の駅前から北へ続く急な坂道を78分登ったところにあるお寺で、十一面観音と閻魔大王と大黒天のお堂がある、不思議なお寺だった。僕が一番印象に残ったのは、大黒天を祀ったお堂だった。それは、お堂の中に「大黒天」と書かれた赤い提灯が所狭しと吊るされていて、森見登美彦作品に出てきそうな妖しい世界が広がっていたからである。京都に限らずどこへ行っても森見的世界観に心を奪われてしまう僕は、手の施しようのない阿呆にちがいないが、性分だから仕方がない。

IMG_0339

 お寺には30分ばかりいた。それから僕らは美術館へ向かった。元来た坂を下り、途中で左に折れて、また坂を上ると、石の橋をくぐるトンネルがあって、そこを抜けると、美術館へ通じる石畳の道だった。沿道に何種類もの草木が植えられていて、紅葉の時期になるとさぞ綺麗だろうと思った。

 美術館は、正式には「アサヒビール大山崎山荘美術館」という。もとは大正時代にある実業家が建てた別荘で、その死後老朽化が進み取り壊しかけられたところ、保存運動が起こり美術館として再生したという経緯があるらしい。現在は本館の他に、建築家・安藤忠雄さんが設計した別館が2棟ある。

 石畳の道をくねくね進んだ先に現れた山荘は、とんがり屋根で、全体がほんのり赤味がかっており、ジブリの世界に出てきそうな感じがした。もっとも、中に入ってみると、格調高い洋館で、おしゃべり明けですっかり陽気になっていた僕らは、気を静めるべく幾らか苦労しなければならなかった。ある参加者はこの建物を、「綾辻行人の作品に出てきそうな建物」と形容した。確かに、クローズドサークル・ミステリーでも起きそうな洋館だった。

IMG_0347

 ここでもう1人の参加者と合流したので、総勢9名で僕らは展示を見て回った。もっとも、展示物は抽象度の高いものが多く、僕にはその良さがさっぱりわからなかった。周りには必死に解釈を試みる人もいれば、「人間はわかり合えないってことだけわかった」と、深いんだか浅いんだかわからないことを言う人もいた。いずれにせよ、僕らの注意を惹いたのは、展示物よりも、建物そのものだったように思う。

 一通り展示を見終わった後、本館の2階にあるカフェでスイーツを食べながらおしゃべりした。カフェはガラス扉でテラスに通じており、テラスからは淀川べりの低地帯が一望できた。桜の名所で知られる背割堤や、石清水八幡宮のある男山もよく見えた。「やっぱりお金持ちは景色の良い所に別荘を建てますねえ」と僕らは言い合った。そうそう、そうして下界を眺めるものなのだと、僕は思った。

IMG_0351

 スイーツはケーキとゼリーの2種類で、僕はケーキを頼んだ。カシスの甘酸っぱさがよくきいていて美味しかった。ドリンクには全員コーヒーか紅茶をつけていたが、僕は1人だけ三ツ矢サイダーを注文した(アサヒビールが管理しているだけあって、ドリンクメニューにはアサヒのビールやワイン、そしてジュースもあったのだ)。注文するや、「青春だねえ」と言われたのがこっぱずかしかった。そして、ビンで出されたサイダーを見て、「美味しそうだねえ」と言われたのが誇らしかった。

IMG_0354

 ——結局、行程を余すところなく書いてしまった。取り留めのない記録であるが、言いたいことはごくシンプルだ。自分一人じゃ足の向かなかった場所に行って、色んなことをするのは、とにかく楽しい。それに尽きる。ただ、そう言うだけじゃつまらないから、色々詳しく書こうとする。結果話が長くなる。それだけのことである。

 家に着いたのはまだ16時台のことだった。それからできることは沢山あったにちがいないが、昼寝して、そのまま夜までぼーっとしてしまった。その間に、朝活部の今後の活動計画が出ていた。今はまだ計画というより妄想というべきだろうが、行きたい場所、やりたいこと、幾つも出ていて面白い。まさに「可能性は無限大」、今後の活動も楽しみである。