整骨院に寄った後、まっすぐ帰らず梅田へ出て、紀伊国屋書店で本を買った。元々そんな予定ではなかったのだが、今読んでいた森見登美彦さんの『宵山万華鏡』がもう終わると思うと、次の本を手に取りたくて仕方がなくなってしまったのだ。独房の本棚には積読本が沢山あるので、わざわざ急いで買いに行く必要はなかったかもしれない。が、先月は珍しく本を1冊も買わなかったので、そろそろ買い足さないと代わり映えがなくつまらない。それに、来週末の課題本である夏目漱石の『こころ』が、どういうわけか実家になかったので、どのみち本屋に用はあった。

 8時過ぎに紀伊国屋書店に着くと、まず『こころ』を手に取った。それから、先日読んだ新潮文庫の『江戸川乱歩傑作選』がたいへん面白かったので、江戸川乱歩の作品を1冊買うことにした。そのあとは、気になる本を適当に物色し、34冊ほど手に取った。

 今回手に取った作品はいずれも男性が書き手のもので、なおかつ、最近話題の本は1つもなかった。そういえば、あんな作家もいた、こんな本も気になっていたと、思うことはあったけれど、今は気分じゃないなあという感じで手に取ろうとも思えなかった。そんなわけで、気の向くままに本を買って出たのであった。

 9時過ぎになって阪急梅田の改札をくぐると、乗るべき列車が雨でずぶ濡れになっていた。来る前は傘など要らないような天気だったから、いつの間にこんなに降り出したのかと驚いた。実際、その時の雨はたいへん激しく、乗換駅で屋根の外に停まる列車に乗ろうとすると、ホームと車両の間が白くほんのり煙っていた。最寄駅に着いても雨はなお激しく、風に吹かれてもおり、まるで何かから逃げるように路面を駆けて降りつけていた。

 そんな風景の変化を愉しみながら、僕は家へ帰った。