読者諸賢ごきげんよう、私である。

 暫くの沈鬱、そしてブログの停滞——「どうしたんだ」「お大事に」「ほなさよなら」皆さまそれぞれ思いを抱き、事態を見守ったり見放したり、まあそれは本当に様々だったことであろう。私自身、上の事態を前に色々な考えを抱きながら、さてどうしたものかと思案していた。今は何も書きたくないと一切を投げ出したかと思えば、このまま何も書かなくなるのではないかと怯え出す。結局のところ、ブログ途絶に対する不安が一切の感情を凌駕し、短くても低質でもなんでもいいから書こうやないかという境地へ私を押し上げることになった。

 「またまた、ひじきさん、そんなこと言っちゃって! 随分陽気なタイトルをつけてるじゃないの。調子が上がったと思ったら、一気にハイの方に振り切れちゃって、今すぐカラオケにでも行きたいんじゃないの!?」そう思われた方は早計である。私は歌の話がしたいわけではない。寝床の話がしたいのである。

 このところ私の調子が上がらなかったことは上にも書いた通りで、今更説明の必要もないと思うが、それと時を同じくして、私は急に朝に弱い人間になっていた。ブログを書く時間が取れないくらいならまだしも、会社に向かうギリギリの時間まで起きられないので、流石に参ってしまった。とはいえ、疲れているのだから仕方がない。そう思っていた。

 ところが、疲労倦怠では説明のつかない事案が発生した。すなわち今朝のことである。週初めで休みは取れているし、既に回復基調にあったにもかかわらず、私は起きられなかった。これはおかしい。疲労以外にも起きられない理由があるのではないか。

 思い当たることが1つだけあった。実は私、ここ1週間ほど、フローリングの上で寝袋にくるまって寝ていたのである。

 我が独房には、実家を出る際親からもらったエアーベッドがしつらえられていた。程よく硬く、ぽんぽんと弾力性もある。なかなか快適でお気に入りの一品であった。そのエアーベッドに最初の異常が見られたのは、かれこれ1ヶ月前になる。真っ直ぐ寝ると右の背中がくる辺りに、ぼよんとコブができたのだ。私は突然現れたこの突起物に困惑しながらも、まあ寝れんことはないと考え、身体を左に寄せるようにしてなお1ヶ月寝続けた。その間にもコブは膨張を続け、やがて私は、身体を斜めにしなければ寝られなくなった。それでも、ケチでモノグサの私は、まだ寝れんことはないと、コブ付きエアーベッドで寝続けた。

 しかし、遂に私も考えを改めねばならぬ事件が起きた。それが1週間前のことである。その日——確か休日だったと思うが——、私は何気なくエアーベッドの縁に背をもたせ、床に身を投げ出すようにして本を読んでいた。すると突然、後ろでボンという破裂音がした。何事かと思って振り返ると、読者諸賢どうかご想像願いたい、件のコブが倍の大きさにはね上がっていたのである。私は絶句した。そして、最早これまでと観念し、エアーベッドの空気を全部放出した。ビニール臭をまとった空気が通気口から部屋の中へ流れ出し、ぺしゃんこになった化学繊維の塊が床の上に無残な姿を晒した。そして私は、その上に、押し入れに眠っていた寝袋をぼんと置き広げたのであった。

 そういうわけで、ここ1週間ほど、私は賃貸マンションの一室にいながら寝袋で寝るという奇妙な生活を続けていた。床との間にあった分厚いクッションは失われ、さらに、足先を蒲団から外に出す自由も奪われていた。考えてみれば相当寝心地が悪かったはずである。が、私はその事実からも目を背けていた。モノグサ恐るべし。ケチ恐るべし。

 しかし、そんな私も、身体の悲鳴に耳を傾けないではいられなかった。

 そうとなると、後の行動は早かった。今日、起きてから家を出るまでの30分の間に、私は洗面・食事を済ませつつ、新しいエアーベッドを通販で購入した。そして、明日の晩には届くように手配まで済ませてしまった。

 予定では、あと1日で寝袋生活は終了となる。そうすれば、私はめでたく快適な眠りを手にし、本当に心身を回復させることができるはずだ。そう思うと、この話をしないではいられなかった。

 「シングってそういうことかい!」見放す者もあろう。私は追うまいと決めている。何しろ私はモノグサなのだ。