年に一度の健康診断の日は、どうしたって緊張する。血液検査があるからだ。

 齢26になったが、僕は未だに、血液検査だったり注射だったり麻酔だったり、とにかく体のどこかを針で刺してくる一連の行為が苦手である。わけても血液検査は恐ろしい。痛いのに加えて、あの深紅の液体がビューっと取られていく様を目にしなければならないからだ。

 「怖いなら違うところ向いててくれていいですよ」と、ある時担当のお医者さんに言われたことがある。でも、僕はその助言を聞き入れなかった。確かに、血を見るのは怖い。けれども、自分の預かり知らぬところで他人が身体に針を刺してくるのは、もっと耐えられないことなのだ。だからその時、僕は針が刺される一点を凝視し、その先にある血液を採取する試験管のような容器をじっと睨んでいた。そして、案の定「あああああ」という思いに駆られ、一瞬にして全身の力を失ったのだった。

 検査の番が回ってきた。腕をアルコール消毒され、注射針がこちらへ向かってくる。今も僕の目のやり場は変わらない。針の刺される一点と、その先にある容器をじっと見つめる。

 何度もそうしているせいか、流石に検査に対する耐性がついたように思えた。

 とにもかくにも、無事血液検査を終え、その他全ての健診も済んだ。年に一度の緊張の瞬間は、こうして過ぎ去っていった。