5月6日に参加した彩ふ読書会・謎解き部の活動レポート、後編をお届けしたいと思います。今回の舞台は、兵庫県立美術館で開かれている「不思議の国のアリス展」の会場。この展覧会とコラボする形で、「不思議の国からの脱出」という脱出ゲームが開催されているのです。ファンタジックな展示に心を奪われながら、残った理性で必死に謎を解く我らの奮闘劇、どうぞ最後までお楽しみください。

 はじめに、企画展と謎解きの見取り図をざっと振り返っておきましょう。「不思議の国のアリス展」は、大きく3つの展示エリアからなっていて、第1エリアではアリス誕生の経緯が、第2エリアではアリスの物語の内容が、第3エリアではアリスの物語に触発された人たちの手によるその後のメディア展開のあらましが紹介されています。それぞれのエリアに様々な資料や絵が展示されていて、僕のようなアリスを良く知らない人間でも十分楽しめるようになっていました。

 一方の謎解きは、序章を解いてから展示会場に入り、第1エリアで第1章を、第2エリアで第2章を、第3エリアで第3章を、それぞれ解きながら進んでいくというものでした。各章の問題はB6サイズの冊子に書かれているのですが、この冊子を手に入れるためには、前の章の問題を解き、導き出されたパスワードを使って会場内に設置された金庫を開けなくてはなりません。つまり、第1章を解き終えなければ第2章の問題は手に入らず、第2章をクリアしなければ第3章へは進めないというわけです。

 上述の通り、展示の方は第3エリアまでですが、謎解きの方は最後にもう1章用意されています。最終章を解き、最後の鍵を開けたところで、謎解き成功となります。

 以上の謎解きに挑んだ部員は全部で9名。一斉に動いたら大変なことになるので、3人×3チームに分かれ、チーム対抗で謎解きにかかりました。もっとも、前編を読んだ方はご存知の通り、勝負は謎解きクイーンを擁するチームの独り勝ちで呆気なく決着。あとの2チームは謎解きを急ぐ素振りさえ見せず、美術鑑賞と謎解きを同時並行で進めておりました。そして、鑑賞というものがあるために、当初は1チーム3人が揃って行動することさえ容易ではなく、他のメンバーはどこにいるのか、そもそも自分は今謎解きをしているのかなど、一切の状況を見失う混沌がしばし続いておりました。ただ、鑑賞も謎解きも後半ともなると幾らか要領が掴めるのでしょう、これからお話する場面ではチームのまとまりは最初に比べてずっと良くなっていたように思います。

 さて、前編では第2エリアまでの様子を書いてきました。したがって、後編は第3エリアの鑑賞並びに第3章の謎解きの話から始めることにしましょう。

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 先に述べた通り、第3エリアではアリスの物語に触発された人々がどんな作品を生み出したかが紹介されていました。展示のトップを飾ったのは、ディズニーのアニメ映画のイメージボードでした。しかし、アリスのメディア展開の歴史は19世紀につくられた演劇から既に始まっていたようです。当時の劇の模様を写した写真が展示されていて、とても貴重だなあと感じました。

 展示はその後時代を駆け上がりつつ、錚々たるアーティストの手によるアリス作品を幾つも紹介していきます。僕のわかる範囲でも、エリック・カール、サルバドール・ダリ、草間彌生といった方々の名前が出ていて、「この人が!」という驚きを覚えながら展示に魅入っていました。個人的には、ダリの作品が、イメージの重ね方やアリスの描き方など、様々な点で面白いと感じました。

 もちろん、それまで知らなかったアーティストの作品にも、面白いもの、魅かれるものが沢山ありました。写真家、人形作家など、様々な分野の作家さんがアリスに触発されて作品を創っていて、その幅広さも面白いと感じました。中でも一番面白かったのは、アリスのキャラクターたちが描かれた肖像画が幾つもあって、観る人が定点に立って身体を動かすと、絵の中のキャラクターが一斉に同じ動きをするという大掛かりな作品でした。グループ行動をしていてこういう作品が目の前に現れると、なぜか最初に試すのは僕になりがちなのですが、あまりに面白かったので「ぜひやってみてくださいよ!」と次々人におススメしてしまいました。

 そんな鑑賞と並行して謎解きは進みます。展示を見ている間にも、会場に置かれたヒントを拾い、メモを残す。そして、展示エリアと出口の間に用意された不自然な空き部屋で、集めたヒントをもとに問題を解きにかかりました。空き部屋の中には同じように謎解きに勤しむ人たちが何組もいて、こーでもない、あーでもないと頭とひねっていました。

 第3章に限らず、謎解きの問題は最初に手にした冊子を解けばそれで終わりというわけではありません。最初に解いた問題の答えはそれに続く問題の指示文であり、次々に現れる問題を解き切って初めて、最後のパスワードを手にできるのです。手元のアイテムをどう組み合わせるのか、どれが正しいアイテムでどれがフェイクなのか、会場内のヒントの見落としはなかったか——様々なことに気を付けながら問題を解くのは、ひとりでは到底困難な技です。かの謎解きクイーンでさえ「私探索系は苦手で、お2人に色々見つけてもらいました」と話していたくらいです。僕らはいよいよ一丸となって問題を解き進めました。

 リーダーのCさんにかなり助けられながら、僕らは第3章を解き終えました。そして、最終章に取り掛かることになったのです。

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 謎解き最終章といえば、思い出すのは以前、梅田の茶屋町で挑戦した街歩き型謎解きイベントのこと。序盤は調子よく解き進められていたのですが、最終章に辿り着いた瞬間、難しさの余り頭がフリーズして、遂に最後の一人になってしまったことがありました。痛い思い出に震えながら、問題を前に「さあ来い」と構えを作ります。が……

 今回の最終章は意外とあっけなく解けてしまいました。そりゃもちろん、3人知恵を出し合った結果のわけですけれど。

 僕らは空き部屋を出て、最後の金庫に向かいました。そして、順番に1文字ずつパスワードを入力し、最後にエンターキーを押しました。

 中から出てきたのは、成功おめでとうというメッセージカードと、これまでに使った問題冊子を綴じるためのバインダーでした。言ってしまえば呆気ないものです。しかし、そんなことは些末に思えるくらい、鑑賞と謎解きを同時に終えた達成感はいいものでした。それに、冊子集の表紙になるものがキットの中に隠されていて、いざ綴じてみるととても可愛らしいものができたので、嬉しくなりました。

 僕はその冊子集と、謎解きに使った鉛筆、そして企画展チケットの半券を、借り物のバインダーの上に並べ、会場を出てすぐのソファの上に置きました。そしてその奥に謎解きキットを入れるための手提げ袋を置いてみます。するとなんだか様になりました。「インスタ映えじゃないですか」と言われながら、僕は得意気になって写真を撮っておりました。すると、隣に座っていた人が、「すいません、私も撮らせてもらっていいですか?」とおっしゃるので、ますます嬉しくなって「どうぞ」と言いました。その後もしばらく、僕はこのオブジェを残したままにしていました。

 僕らのチームは2番目に謎を解き終えました。そして、このささやかな撮影大会をやっているうちに、最後の1チームも「お待たせしました~」と言いながら現れました。こうして、僕らの謎解きは終わったわけでございます。

 その後、企画展のグッズをしばらく見てから、近くのロイヤルホストに移動し、ささやかなお茶会となりました。他の謎解きゲームの話や、Cさんが参加した哲学カフェの話などをしているうちに、あっという間に時間が経ちました。この頃、神戸はちょうど激しい夕立に見舞われていたのですが、幸いにしてお店にいる間に雨が上がってくれました。

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 以上で謎解きの話は終わるのですが、最後に少しだけその後のことを書いておきましょう。実は、今回の謎解きに参加した9人のうち4人は、同日夜に大阪で読書会のさるお方主催の飲み会に参加することになっていました。この飲み会は「おでん会」と言います。「おでん会」と言っても、季節を問わずおでんを食べる会ではありません。ただ、初めてこの方が主催した飲み会の会場がおでん屋さんであり、その時の飲み会が5時間ぶっ通しで喋り続けるほどの盛り上がりを見せたことを記念し、そういう名がついているのです。

 「おでん会」は大阪近辺のイイカンジの食事処で、気まぐれなタイミングで開催されます。そして、第2回以降、これまた主催者の気まぐれで決まったテーマに沿って本を紹介しています。もっとも、「おでん会」のコンセプトは〈楽しめ、喋れ、そして忘れろ〉だそうで、これらの本については全員忘れてしまった(ことになっている)ので、ここでの紹介は控えさせていただきます。そもそも「おでん会」自体秘密の会なので、これ以上書けないのでございます。

 じゃあなんでそんな話をおっぱじめたのかと言いますと、後日読書会のラインで「おでん会ありがとうございました」というやり取りが続いた際、主催のお方がなぜかこう言ったのです。

「ひじきさん、ブログ楽しみにしています」

 僕は瞬時に混乱しました。あれ、おでん会はSNS等拡散禁止じゃなかったっけ? 冷静に考えてみるに、これは〈ブログいつも楽しみにしています〉の意味だと思うのですが、なお引っ掛かるものもありました。かくいうわけで、そんな会があったんだぞということだけ書き留めることにしました。

 あ、一応あれ書いておきましょうか。盛況した飲み会ほど語るにあt……やっぱいいや。

 おでん会は2軒はしごしながら23時ごろまで続きました。連休最後の日も、僕らの1日は長く濃密なのでございました。

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 といったところで、謎解き部の「不思議の国からの脱出」挑戦記を締めくくろうと思います。ここまで読んでくださった皆さま、毎度のことながらありがとうございました。