5月2日22時、隠遁先より生活圏へ戻ってきた。思っていたより随分遅い時間になってしまったので、独房へは戻らず実家で1泊することにした。荷物を下ろし、缶ビールで晩酌すると、急に疲れが全身から沁み出したようで、動けなくなってしまった。兎にも角にも横になりたくて、母親に蒲団を敷かせるや否や潜り込み、朝まで寝てしまった。男ひじき氏26歳、怠惰の極みである。もっとも、慣れない道を運転したうえ、助手席に移動した後も父のナビ代わりやお菓子献上を務めていたのだ、大目に見ていただきたい。

 かくして1週間近い隠遁生活は終わりを迎えたわけであるが、ここでその最後を飾る出来事について記しておこう。まずはこちらの写真を見ていただきたい。

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 伊勢神宮御朱印授与の断念から24時間、1日遅れとなったが、「令和元年五月二日」の御朱印を、伊勢神宮ゆかりの場所で授かることができたのである。

 近鉄志摩磯部駅から鳥羽側へ1駅、上之郷という駅の近くに、伊雑宮(いざわのみや)というところがある。小さなお宮で訪れる人も少ないが、れっきとした伊勢神宮の別宮である。はるか昔、神宮がいまの場所に建てられた後、神宮へ奉納する供え物を採る場所を探すための巡幸が行われた。その巡幸の後に創建されたのが、この伊雑宮であるそうだ。

 数年前、伊雑宮の近くにおいしい鰻屋があるという話を聞いた父に連れられて以来、僕ら家族は度々ここを訪れている。人気の少ないこの場所は、ともすれば神宮よりもいっそう神聖であるように感じられる。境内は小さな森に包まれており、本殿はその奥のぽっかり丸く空いた場所に建っている。その姿はいつ見ても美しいと思う。周りを囲う森が慎ましいのが、なお良い。

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 二礼二拍手し、心の中で願いを唱える。これまでは阿呆の一つ覚えで「みんなが笑って暮らせますように」と唱えていた僕であるが、今回は幾分真面目であった。

 次の時代が、誰もが自分の思いを実現できる時代でありますように——

 短い参詣を終えた後、僕らは森の中の短い道を引き返した。巾着楠と呼ばれる大木のところで写真を撮っていると、父から声がかかった。「ご朱印所あるぞ!」小さなお宮だからと諦めず、準備を怠らなかった我々の努力は報われたのである。

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 こうして、形容しづらい未達成感に見舞われていた僕らの些細な欲望が満たされたところで、隠遁生活は終わりを迎えた。連休はあと4日ある。生活圏に戻ってきて、諸々の考え事が頭に登りつつあるが、幸いにして予定はある。最後まで非日常を満喫してやろう。——おっと、くれぐれも呪詛など唱える勿れ。

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※伊雑宮についてはこちらのサイトを参照しました。
https://www.isejingu.or.jp/about/naiku/izawa.html