今週に入ってからずっと、日曜日に開かれた彩ふ読書会@京都の振り返りを書いてきました。前回の記事で午後の部・課題本読書会の振り返りが完結し、読書会本編の話はこれで終了しました。が、僕らの読書会ホリデーにはまだまだ続きがございます。ということで、今回も読書会の話を続けたいと思います。名付けて、ヒミツキチ編です。

 京都の彩ふ読書会は、先月まで、①午前の部=推し本披露会、②午後の部=課題本読書会に加え、③夕方の部=実験的経験会が開かれるという三部構成になっていました。しかし、読書会を1日に三部こなすのは大変だということから、今月から夕方の部は廃止に。代わりに誕生したのが、引き続き会場を借りて、メンバー有志が話に花を咲かせたり、気になることをして遊んだりする時間、その名もズバリ、「ヒミツキチ・オブ・サクラカフェ」でした。

 ではこれから、第1回ヒミツキチの中をちょっと覗いてみることにしましょう。と言っても、これから見るように僕は荷物を置いてひとり出掛けてしまうので、本当にチラッと覗くことしかできないんですが——

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 ヒミツキチの時間が始まる前から、SAKURA CAFEに残った人たちは大小様々な車座をつくってめいめいの話に興じていました。今や読書会では当然の事であるヅカトークをする人たちがいたり、初参加の学生さんの就活話を聴いている人がいたり。

 僕をはじめとする男性陣は、カフェの奥の方に椅子を持ち寄って輪を作り、哲学カフェの話をしていました。哲学カフェ部長のCさんが今後の活動予定などについて話していたところ、参加2回目の男性が「哲学カフェってどんなものですか?」と興味を示し、話が発展、そこへいつの間にか大勢の人が集まっていたのでした。

 実は僕も、哲学カフェでどんなテーマを話し合ったら面白いだろうということを考えていたので、車座に積極的に入り込んでいきました。Cさんとは前から「かわいい」をテーマにしたらどうでしょうと言って盛り上がっていたのですが、他にも何かないだろうかと考える。すると、今月から大阪サポーターに移った男性が、「やばいって言葉気になりませんか」と話し出す。「とにかく汎用性が高いじゃないですか。なんでもやばいって言えてしまう。やばいはすごいですよ」と、そのうち「やばいはやばい」と口を滑らせそうな勢いで話すのが可笑しくてなりませんでした。

 汎用性の高い言葉つながりで、「『エモい』っていう言葉気になりますよね」という話をしてみました。「ああ、エモいねぇ」「あの有名人が使ってるヤツですね」と暫く盛り上がったものの、「年配の人はわからないんじゃないですか」という話に落ち着き、哲学カフェ「エモい」を仕掛ける案はふわっと消えていきました。「そういえば『青い鳥』に“はぶられる”っていう表現が普通に出てきてるの面白かったです」と、Cさんが新しい言葉つながりでトークを続けていました。

 そうやって話していた皆さまも、16時が近付く頃、順々に会場を後にしていきました。残ったのは5名ほど。そしてここから、ヒミツキチは本格的に始まるのです。

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 今回のヒミツキチのテーマは「人狼」でした。いま、一部のメンバーの間で、人狼をはじめ様々なゲームをやってみたいという話が盛んに出ているのです。

 きっかけは、3月の園田哲学バーの帰りに、今度新たにサポーターになった男性が「最近人狼が気になってるんですよね」と話したことだったように思います。以来、「実は僕も/私も気になってて」という人が次々に名乗りを上げるようになりました。その波が最初に形となって現れたのは、3月の末に開かれたお花見だったように思います。僕は出張で行けなかったのですが、この日集まったメンバーがそれぞれにカードゲームを持ち寄っていたことを、後からLINEで知りました。もっとも、お花見が敢行された日は、寒いうえに風が強いという、屋外でカードゲームをするには実に不向きな日だったようです。主催者だったCさん曰く、「人狼でカード並べるじゃないですか。で目を閉じて開けたら、カードが全部飛んでるんですよね」とのこと。

 何はともあれ、ヒミツキチに残った人たちは人狼を始めようとしていました。と言っても、人狼がやりたい人の集まりですから、そもそもちゃんとやり方がわかる人がいない。ルールブックを見ながらあーでもないこーでもないという所から、ヒミツキチはスタートしました。

 と、ここで、僕はヒミツキチから抜け出します。一乗寺の方に気になる本屋さんがあったので、そこまで散歩に行こうと思ったのです。SAKURA CAFEを拠点にし、いる人をアテに荷物を置いて外へ出る、そんな気儘なことをやってみたいという憧れもあったのだろうと思います。

 財布とスマホだけを持ち、鞄代わりに上着を持つ。それ以外のものを椅子に置いたまま、「ちょっと出掛けてきます」と言って、僕はカフェをあとにしました。

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 もう何度も通っているのに、会場の周りには知らないことが沢山ありました。

 カフェに面した大通りを南へ数歩歩くと信号があり、交差する道に挟まれて疎水が流れていました。緩やかに弧を描きながら東へ伸びる疎水の道を、僕はゆっくり歩いて行きました。すっかり葉を茂らせている桜や、若葉のまぶしい楓を見ていると、静かで落ち着いた心地がしました。木の下を覆う植え込みに目をやると、久しく見ていなかったカラスノエンドウが群生していたり、1本だけ咲く赤いチューリップに出会ったりといった発見もありました。

 疎水が果てるところまで辿り着くと、道に直行するように高野川が流れていました。出町柳の駅前で鴨川に合流する川です。僕の目指す本屋はこの川を渡ってさらに進んだ先にありました。

 歩行者用の橋に着くまで、河川敷に降りて歩くことにしました。道から階段を降りていくと、脇に広がる土手の斜面が、芝生の緑ではなく、ほんのり黄色で覆われていることに気が付きました。よく見てみると、小さな花がウワッと一帯に咲いているのでした。

 僕はどういうわけか、その花に見惚れてしまいました。そして、身をかがめ、なお、黄色い花が一斉に咲く様子を眺めていました。目線を近づけたからでしょう、花が1本1本咲いていることや、草にそれぞれ形があることがありありと伝わってきました。

 ふと、もし僕が小人だったら、この草花の下を歩いて回るのだろうかという想像が頭をよぎりました。推し本披露会で小人の家族が出てくる本が紹介されていたからでしょう。そうでなければ、幾ら僕でもそんなメルヘンチックな妄想を思い付くことはありませんから。ともあれ僕は、いま自分が上から見ている茂みの下を、深い森を駆けるように動いて回る小人のことを想像していました。それからまた歩き出した時、なんだか自分の上にも大きな植物が伸びていて影ができているような気がしました。どうしてそこまで妄想が発展したのか、自分でも不思議なくらいです。実際のところは、西日が容赦なく首筋に差していたのですから。

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 目指していた恵文社という本屋は、高野川を渡って、住宅街の中を暫く進んだ場所にありました。遊び心に溢れる店を何となく想像していたのですが、実際の恵文社は、とても落ち着いた空間でした。独自の基準で集めているのだろう本の中には、大型の書店でも見かけないものや、どこで集めたのかわからないような古い文庫本もあって驚きました。書架の並びが分かりづらいことが、却って目的外の本との出会いを促しているようで、そうやって寄り道するのが楽しい本屋でした。

 僕はここへ本屋さんに関する本を買いに来ていたのですが、なかなか目的の本に辿り着かないまま、30分も40分も徒に過ごしてしまいました。街で17時の音楽が鳴り止って暫く、漸く目的の本を見つけた僕は、恵文社を後にし、急いでもと来た道を引き返しました。

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 カフェに戻ったのは、もうヒミツキチの時間も終わろうという頃でした。玄関の戸をスライドさせると、ちょうどゲームが終わったところだったらしく、メンバーは真ん中のテーブルで顔を上げて談笑していました。午前の部の後、水族館へ行くといっていたメンバーが、戻ってきて輪に加わっていました。初参加の方の姿もありました。

「おかえりなさい。どうでした?」

 そう声を掛けられて、僕はとても満ち足りた気分になりました。

「良かったですよ」

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 ここで時間が来てしまい、僕らはヒミツキチを後にします。しかし、一部のメンバーはその後、駅前のロイヤルホストに入って、カードゲームの続きを楽しみました。当初の目的を達成した僕も、にわかにカードゲームがしたくなって、ロイホへついて行きました。

 ここでやったのは人狼ではなく、「犯人は踊る」というゲームでした。犯人のカードを持っている1人を当てるゲームで、それぞれのカードに書かれた指示に従って手持ちのカードを交換したり、隣の人から貰ったりします。ネットでは、ババ抜きと人狼のエッセンスをミックスさせたようなゲームだと書かれていました。

 やってみると、めちゃくちゃ面白いゲームでした。要領が掴めるようになってくると、誰が何のカードを持っているかということが推測できるようになったり、逆に周りにカードを読まれるのを見越して出し方を工夫するようになったりするので、ゲームはどんどん高度化していきます。それでも、元々手持が4枚しかないので、勝負は簡単についてしまう。その手軽さと面白さに病みつきになった僕らは、帰るタイミングを何度も何度も逃してしまいました。「時間で切らないとまずいですね」と言って最後のゲームを切り上げたのは21時で、ロイホに入ってからはたっぷり2時間半が経過していました。

 こうして、大人の休日(やっていることはむしろ学生的だけれど)を満喫したところで、長い1日が幕を下ろしたのでありました。

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 ヒミツキチの様子を振り返って参りました。いかがだったでしょうか。

 中にいた人としては、大人になってからもこんなに遊び心に満ちた休日が送れるのだということが、嬉しくてなりませんでした。もう今から、次はどんな展開が待ち受けているのだろうと楽しみでなりません。僕自身のやりたいことも、考えてみようと思います。

 以上をもって、午前の部の振り返り以来全部で4回にわたった彩ふ読書会@京都の記録を締めたいと思います。ここまで読んでくださった皆さま、ありがとうございました。