4月21日・日曜日、京都の北山にある「SAKURA CAFE」にて、今月の彩ふ読書会@京都が開催されました。というわけで、暫くの間この読書会の振り返りをお届けしたいと思います。

 今月から京都読書会は、①午前の部=それぞれ好きな本を紹介する「推し本披露会」と、②午後の部=事前に課題本を読んできて感想などを話し合う「課題本読書会」の二部構成になりました。先月まではこれに加えて夕方の部があったのですが、1日に読書会を三部こなすのはハードだったことから二部に落ち着いたのです。ただ、夕方の時間帯も会場は借りたままにして、メンバー有志によるサークル活動やフリートークのための場として開放することになりました。名付けて、「ヒミツキチ・オブ・サクラカフェ(仮)」。この新企画のこともご紹介する予定ですが、それは後の話。まずこの記事では、午前の部=推し本披露会の様子を振り返っていくことにしましょう。

 午前の部には総勢20名の方がいらっしゃり、3つのグループに分かれて読書会が始まるのを待っておられました。10時40分に総合司会から全体アナウンスがあった後、参加者はこのグループの中で、持ってきた本について話し合います。そして11時45分頃、再び総合司会が現れ、その指示のもと、読書会は全体発表へと移ります。全体発表後、今後の予定やサークル活動の告知などがあり、読書会は終了となります。終了はだいたい12時くらいです。

 全体発表についても、今回から変更がありました。今までは全員が持ってきた本の紹介をしていたのですが、今回からは各グループで1冊、メンバーが特に読みたいと思った本のみ紹介することになりました。これに伴い、グループトークの最後に、メンバー全員による投票、というより「せーの」で指差しの時間が加わりました。

 さて、ここからは僕の参加したグループの様子を詳しく見ていきたいと思います(全体発表の様子も最後に簡単にお伝えしようと思います)。

 僕のいたテーブルには、6名の方がいらっしゃいました。僕のほか、初参加の女性が2名、3月に続いて参加してくださった女性が1名、前の週に哲学カフェ部でご一緒していた男性が1名、そして、3回連続で同じテーブルに居合わせることになったアツい男性が1名という構成でした。最初に簡単に自己紹介をした後、1人7~8分を目安に、推し本について自由に語っていただきました。

 それでは、順番にご紹介しましょう。

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◆『旅をする木』(星野道夫)

 僕の推し本。アラスカで旅を続けた写真家・星野道夫さんのエッセイ集です。このブログでも既に何度か取り上げていますが、それくらい印象に残る本で、ここ数ヶ月で手に取った中で特に良かった1冊だったので、この機会に紹介しました。

 人の手の加わっていない自然の雄大さ、極寒の大地の厳しさ、そこに棲むいのちの力強さと脆さ、アラスカに集う人々のそれぞれの物語。そういった様々なものを丹念に見つめたエッセイの数々は、どれもぐわんと迫ってきて、心の奥にすっと沁みていくような気がします。

 話したいことは山のようにありましたが、今回は特に、僕がこの本にのめり込むきっかけとなった最初の1ページ全文を音読で紹介しました。その中でも特に好きな一節を、ここでも書き留めておきます。「人間の気持ちとは可笑しいものですね。どうしようもなく些細な日常に左右されている一方で、風の感触や初夏の気配で、こんなにも豊かになれるのですから。人の心は、深くて、そして不思議なほど浅いのだと思います。きっと、その浅さで、人は生きていけるのでしょう」(p.12-13)。

◆『鉄道唱歌と地図でたどる あの駅この街』(今尾恵介)

 アツい男性の推し本です。前回の推し本が『ランボー怒りの改新』というめちゃくちゃブッ飛んだ本だっただけに、どんなのが出てくるだろうと期待と不安(?)でいっぱいでしたが、今回の推し本は趣味の世界にのめり込んでいくような、静かでディープな本でした。

 鉄道唱歌というのは、沿線のあれこれを詠んだ歌で、明治時代につくられたもの。メロディーは駅の構内放送などに使われることもあるので聞き覚えがあります。この本にはその鉄道唱歌が374番まで収められており、歌詞と古地図を突き合わせることで沿線の今昔を辿れるようになっています。簡単に言うと、「ブラタモリのような本」だそうです。

 例えば、山科から京都へ向かう沿線風景を詠んだ歌詞の中に伏見神社のある稲荷山が出てくる。いま山科-京都間はトンネルで結ばれていますが、開業時このトンネルは技術的問題で開通しておらず、鉄道は東山を南へ大きく迂回するルートを採っていたのです。こうやって鉄道のアレコレを紐解いていくのは、なんだか楽しそうですね。

◆『試着室で思い出したら本気の恋だと思う』(尾形真理子)

 「いつも本は直感で選んでます」という初参加の女性の推し本。アパレルのセレクトショップをひとりで経営している女性と、お店へやって来るお客さん(こちらも女性)たちが、一着の服を通してやり取りを重ねる様子を描いた小説です。描かれているのは「大人の恋」なのだとか。

 女性は服を買う時、どんな場面で着ようかとシチュエーションを考えるものだそうです。「試着室で思い出したら…」というのはそういう意味だといいます。そして、皆さん迷い悩んでいるのだとも。似合うだろうか、冒険して買った服だということに気付いてくれるのだろうか。小説の中では、こうした内面に変化が訪れ、お客さんたちが自分に自信を持つ様子が描かれているといいます。

 さらに、小説ではオーナーの女性の恋も描かれています。お相手はデザイナーで、「結婚したい時にウェディングドレスを贈る」と言って海外へ行ったそうです。その恋の結末や如何に——実は紹介の中で結末を聞いてしまったのですが、とても素敵でした。

 個人的には、服を買う時の気持ちに寄り添う小説というものが珍しくて面白そうだなと思いました。女性の心理が描かれているともなれば尚更です。わからない世界だからこそ、読んでみたいなと思える1冊でした。

◆『はなはなみんみ物語』(わたりむつこ)

 先月に続いて参加してくださった女性の推し本。小人の家族が仲間を探す旅を描いた児童文学です。

 双子の小人・はなはなとみんみ。2人は家族と、ある島の南の森に暮らしています。戦争によって小人族が滅んだあとの世界で、自分たちは小人の生き残りだと思っていた家族は、ある時、島の北の森に小人の生き残りがいるかもしれないという話を聞きます。そこから、仲間を探す長い旅が始まります。北に進んでいたはずが東へ進んでしまっていたり、カエルに捕まってその親玉のもとへ突き出されたりという苦難の多い旅の果てに、家族は思いがけない形で北の森の小人と出会い、共に苦境に立ち向かいます。

 「児童文学なのに設定がしっかりしていて深い」「むしろ児童文学だからこその深さなのでは」と、グループ内では紹介中から議論が沸き起こっていました。

 本の内容もさることながら、個人的には、紹介者と本の出会いのエピソードがとても印象的でした。「この本は、私が産まれる時に、入院していた母に友だちが贈ってくれた本なんです。だからずっと家にあったんですけど、小学校の時図書館で見つけて、続編まであることを知って、とても嬉しくなって手に取りました」特別な物語の詰まった本、とても素敵ですね。

◆『春にして君を離れ』(アガサ・クリスティー)

 英文学をこよなく愛する初参加の女性の推し本です。アガサ・クリスティーといえば言わずと知れた超有名ミステリー作家ですが、この本は非常に珍しい「殺人が起きないクリスティー」。

 主婦として理想の家庭を築いていた主人公・ジェーンは、旅の途中に訪れた砂漠の中の宿舎で、ふとしたきっかけから自分の人生を振り返り始めます。すると、夫が自分にしてくれなかったことや、子どもが自分には懐いてくれなかったことなどが次々に思い起こされ、順風満帆だったはずの自分のイメージに亀裂が入っていく。そうして彼女は、自分自身の真実に気付いていくことになるのです。

 人間は誰しも、物事を自分に都合のいいように解釈して生きている。けれども本当は、その人にも悪い部分が沢山ある。徹底的な観察を通じて、人間の醜い部分を暴いていく。自分自身に置き換えてズシリとくるものが、この小説にはあるといいます。「ミステリーってそういうことか!」と思わずその場で唸ってしまう一冊でした。

 紹介者のキャッチコピーも印象的です。「犯人は自分。そして、謎を解くのも自分」——

◆『福岡市を経営する』(高島宗一郎)

 哲学カフェ部でご一緒した男性の推し本。37歳という若い現役の福岡市長が、市政改革について、そして、どうやって福岡市を世界レベルの都市へ変えていったかについて、自ら筆を執って紹介した1冊です。

 書かれている内容は、改革の詳細ではなく、「それぞれの市の特色を輝かせる/強みを活かす」といった、市長の考え方そのものだそうです。「山の上は空気がうすい=みんなが目指す場所はリスクも大きい」など、印象に残るフレーズも沢山あるのだとか。

 内容もさることながら(本日2回目)、個人的には、紹介者のビジネス本の読み方の話が面白いなと思いました。本を前から順番に読むのではないそうです。①まず、はじめとおわりを読む。②次に、目次を見て、一番内容的に分厚い場所を読む。そうすれば、作者の言いたいことは大方わかるのだそうです。なので逆に、全部読んでいるわけではない本も多いのだとか。〈本は須らく前から順にすべて読むべし〉と盲信していた僕にとっては、新鮮な話でした。

◆投票タイム

 以上、僕のいたグループで紹介された本の内容をみてきました。どれも気になる本ばかりですが、全体発表で紹介できるのはこのうち1冊だけです。では、どれが選ばれたのでしょうか。

 気になる投票の結果はこちら。

 1位:『春にして君を離れ』(3票)
 2位:『試着室で思い出したら本気の恋だと思う』(2票)
 3位:『はなはなみんみ物語』(1票)

 というわけで、僕のグループからは『春にして君を離れ』を紹介することになりました!

 やってみて気が付いたのですが、特に気になる1冊を選ぶのは本当に難しいことでした。特に上の3冊はどれも手に取ってみたくなる本で、「どうしようかな」と最後まで悩んでしまいました。結局僕は、『春にして君を離れ』を選びました。

 他の参加者も「これ緊張するなあ」と口々に話していました。そのつぶやきが笑いを誘い、緊張しながらも和やかに投票が進んだように思います。

 投票の後全体発表まで少し時間があったので、皆さんに「なぜその本を選んだのか」と聞いて回ったのですが……そういうところに限ってメモを取り忘れてしまいました。不覚……

◆全体発表

 気を取り直して、最後に、全体発表の様子を簡単に振り返ろうと思います(今回から紹介が1冊だけになったので、各グループを代表する本を紹介する余裕ができました笑)。僕のいたグループはCグループだったので、A・Bグループの発表を紹介する形になります。

 Aグループの「今日の1冊」は、『ザ・プロフェッサー』(ロバート・ベイリー)。老弁護士と新米弁護士がタッグを組んで、ブラック運送会社のクソ野郎どもを相手に交通事故の真相を解き明かす法廷バトル・ミステリーだそうです。フレーズ聞いているだけで笑えてきて、内容が気になりました。紹介されたのは、なんと、東京から関西へ帰省中だったという初参加の女性。そんな貴重な機会にわざわざ読書会へお越しくださりありがとうございました。来月は東京でも読書会がありますのでぜひそちらにもお越しください、と、後で宣伝させていただきました。

 Bグループの「今日の1冊」は、『犯罪は老人のたしなみ』(カタリーナ・インゲルマン=スンドべリ)。老人ホームに住む80歳のおじいちゃん5人組が犯罪計画を立て実行していくというお話。素人犯罪者5人組に、警察はなぜか翻弄されまくり。幾つになってもパワフルなおじいちゃんたちに元気を貰える痛快な小説のようです。紹介されたのは、いつも海外小説をご紹介くださる大阪サポーターの女性でした。

 こうしてみると、今回は海外ミステリーが圧倒的に強かったんだなあということに気付きます。紹介されたのが全員女性、しかもうち2人は初参加というのも面白いなと思いました。次回はどんな展開が待ち受けているのか、今から楽しみです。

 読書会終了後、各テーブルを回って本の写真を撮る時間がありましたので、今回は他のテーブルの写真もご紹介します。それぞれ本の上にメッセージカードが載っていますので、気になる方はぜひご覧ください。

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 というわけで、午前の部のレポートはここまで。次回は午後の部・課題本読書会の模様を振り返りたいと思います。どうぞお楽しみに。