読書会謎解き部が再び動いた。今度の舞台は谷町九丁目の近くにある大蓮寺というお寺。去る日曜日、このお寺で、お芝居を見ながら謎を解く観客参加型謎解きイベントが開催されたのである。今日の日記では、このイベントの模様、さらに、それに続く生國魂神社参拝ツアーの様子を振り返ることにしよう。

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(この画像は、walker+のイベントページより抜粋した。   
URL→https://www.walkerplus.com/event/ar0727e330634/

 今回参加したのは、ミステリー劇団P.T企画主催の観客参加型ミステリー「白い兎が逃げる」。有栖川有栖氏の同名の作品を原作とする舞台を見ながら、犯人を推理し事件の謎を解く2時間程度のイベントだ。僕ら観客は、英都大学犯罪社会学准教授・火村英生のゼミ生としてフィールドワークにやって来た学生という設定。火村同席のもと警察が進める事情聴取を45分程度観劇、もとい観察し、その内容をもとに、30分で事件の謎を解き、フィールドワークのレポートとして提出する。そして最後に20分程度の解決編を見るのである。

 ちなみに、観劇者総数は79人。実際に79人のゼミがあったら収拾つかなくなると思うし、いくらフィールドワークとはいえこの人数の学生が押し寄せたら警察も被疑者もたまったもんじゃないと思うが、そんな無粋はツッコミはやめておこう。

 さて、我々読書会謎解き部からの参加者は17名であった(ということは、観劇者の実に5分の1以上が読書会メンバーだったということである!)。17名の集団がぞろぞろ動き回るのは、どこにいても目立つ。10時15分に谷町九丁目駅で集合した時、遠目にもそれとわかる集団がいて、僕は何メートルも前から笑ってしまった。それから歩道いっぱいになって大蓮寺を目指し、應典院という建物に入ると、受付ロビーは僕らだけで埋まってしまったものだった。

 会場は、落語の高座のような四角い舞台を雛壇状の客席が三方から囲む形で、僕らは入口から一番遠い一画にダンゴになって座った。最近読書会に来始めたばかりの方もいたので、劇が始まるまでは互いに自己紹介などをし合っていた。

 11時、開演。——登場人物はある劇団のメンバーたち。メンバーの1人をストーカーしていた男が何者かに殺害されたため、リハーサル中に事情聴取を受けている。警察は、男を迷惑がっていた劇団員の中に犯人がいると睨んでいるが、メンバーにはそれぞれアリバイがあった。しかし、様子を見聞きしていた火村准教授は、彼らの中に犯人がいることを見抜く。——ここで前半45分の劇が終わる。それから30分の間に、いま見た劇の内容と、途中で配られた資料をもとに、犯人とトリックを推理していく。レポートは個々人が提出するので、グループで来たものの殆ど言葉もないまま、あーでもないこーでもないと頭を捻る時間が続いた。

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 イベントの性質上ネタバレは厳禁であるが、ここで差し障りない程度に推理の過程を追ってみたい。

 劇開始早々、僕がまず思い返したのは、12月に梅田でまち歩き型謎解きゲームに参加した時の、ある謎解きベテランの金言だった。

「資料は余すところなく使う」

 実を言うと、この金言に従うだけで、怪しい人物は絞られた。とはいえ、これでは、2時間ドラマのテレビ欄を見て、大御所俳優の名前を指差し「こいつが犯人だ!」というのとさほど変わらない。劇の内容をもとに、犯人を特定する手掛かりを見つけなければ、推理としては不完全だ。

 その決め手は、しかし、観劇中に見つかった。ある描写が執拗に掘り下げられていたことがきっかけだった。その時僕はよほど興奮したらしく、劇の内容をメモしている最中だったのだが、気付けばメモ欄に「なるほど」と走り書きしていた。

 ともあれ、あとはトリックを暴くだけである。だが、これが意外に難しかった。頭の中で、名探偵コナンのお馴染みの台詞がこだまする。「間違いない、犯人はあの人だ。けど、いったいどんな手を使ったっていうんだ——?」

 それからは資料とのにらめっこだった。アリバイを崩すことのできる無理のないトリックは何か。時折「あかんなあ」とつぶやきながら、ペンを動かす。10分ほどして、これならいけるというプランが練り上がった。

「わかりましたよ」

 思わず口に出してしまってから後悔した。大見得切ってロクな目に遭った試しがない。下の席から「ええー」という声が上がった。

 隣のメンバーから「謎は全て解けましたか」と尋ねられる。答えをじっちゃんの名に懸けることができなくて、「辻褄は合いました」とだけ答えた。

 ただ、細部の粗はともかく、着眼点に自信はあった——

 レポートを提出して程なく、解答編が始まった。火村准教授の推理を、固唾をのんで見守る。

 犯人、絞り込みの方法、トリックの大筋、全てレポートの通りだった。それぞれ細部には粗や誤りがあったが、要点はバチッと押さえられた。やったと思った。

 劇が終わり、礼する出演者を三方からの喝采が包んだ。

 それから、レポート優秀者への記念品の授与が行われた。イベント特製のお菓子が、火村准教授から直々に渡される。クールで難しい顔をした近付き難い准教授が、にわかに笑みを湛えて優秀者のもとを回り、握手を交わしている。男でも惚れるほどのイケメンである。

 優秀者が順々に呼ばれ、最後の一人の番を迎える。

「ひらがなで、ひじき様」

 呼ばれた。

 火村准教授が間近にやって来る。そして、目を合わせて笑いながらお菓子と握手をくださった。

 めちゃくちゃ嬉しかった。

 会場を後にし、明るい場所に出てから改めてお菓子をみる。袋に赤いハンコを模したシールが貼られていて、「優 犯罪社会学課外授業 2019.01.27 火村」と印字されていた。

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 謎解きイベントの話はこれで終わりなのだけど、折角の機会だからとランチが予定されていた。それまで時間があったので、みんなで生國魂神社へ詣でることになった。もとより、今回の謎解き部は、会場がお寺ということもあり、神社仏閣部とのコラボ企画として進んでいたから、生國魂神社にも自然と足が向いた。

 余談であるが、「白い兎が逃げる」の原作者・有栖川有栖氏の連作短編集『幻坂』に、生國魂神社が登場する話がある。その中で、生國魂神社は、本殿の他にも浄瑠璃の神様をはじめ様々な神様を祀ったお社を持っており、1つの境内であらゆる神を祀らんとする強欲とも合理的ともとれるその様はいかにも大阪的であると評されている(と、僕は記憶している)。翻って我々である。僅か4、5時間のうちに、謎解きをして、神社に詣でて、ランチに赴かんとしている。どうやら、地は争えぬようである。

 もっとも、参拝について言えば、僕らは本殿に詣でるばかりで、その後は各々、御朱印を授かったり、おみくじを引いたり、話に興じていたりした。

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 僕は御朱印を授かった。ここでまたしてもラッキーが訪れる。生國魂神社では1月の間だけ、通常の御朱印とは別に、その年の干支を誂えた特別な御朱印を授けてくださるのだ。僕は通常の御朱印と干支の御朱印を、見開きにセットでしたためてもらった。真ん中に猪の描かれた干支御朱印は、カッコ良くもあり、まあるくもあった。

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 その頃、おみくじ部隊で盛り上がりが起きていた。というのも、生國魂神社のおみくじには、他のところでは見かけない変わったものが幾つかあったからである。その一つが、「凶吉向(きょうきちにむかう)」。今は凶だがこれから運気が好転するというおみくじで、各項目の一言も前向きなものが多いと評判だった。そしてもう一つ、注目を集めたのが「平(へい)」である。吉凶の並びのどこに位置するのかさえわからない全く謎のおみくじだが、引いた方によると、「平」とは即ち「平穏であれ」ということらしい。各項目の一言には、とにかく「気長に待て」とばかり書いてあったそうだ。

 この盛り上がりにつられておみくじを買う人が何人か現れたが、結果は「小吉」「末吉」ばかりで、運気はともかく「ネタにならん」という嘆きがあちこちから漏れた。

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 ランチの会場は上本町のサイゼリヤであった。滞在時間は1時間ほどであったが、その間に、読書会のこと、本のこと、そして、それぞれの趣味のことと、次々に話が進んでいったので、もっと長い時間喋っていたような充実感があった。

 さて、以前何かの記事でも書いたが、基本的には、盛況した食事会ほど語るに値しないものはないと言っていい。しかし、今回は1つだけ書いておかねばならぬことがある。

 皆さんは「沼」というものをご存知だろうか。ある対象に魅了され、心を奪われた者は、必ず「沼」に落ち、そして二度と這い上がることはないという。

 読書会のこれまでを振り返ってみると、最初に出現したのは「ヅカ沼」であった。すなわち、タカラヅカをこよなく愛する者の「沼」である。それは、ヅカ部の部長をして「夢という名の底なし沼」と言わしめるほどまばゆく、輝きの余り目先と足元をくらませ沼に落ちる者は後を絶たない。そして、落ちた者の姿は、気付いた時には見るべくもなくなる。ヅカ沼とは、そのような深淵にして神秘に満ちた沼である。

 そしてこのほど、新たに出現したのが「特撮沼」である。ウルトラマン、仮面ライダー、戦隊もの、ありとあらゆる特撮作品に手を伸ばし、物語を愛し演者を愛でる、これまた愛に溢れた沼である。某公共放送の特撮推しにも後押しされたか、この沼の立てた波風はヅカ沼をも凌駕するほどの勢いで吹き上がり、いまや沼界の勢力図を折半せんという域に達している。

 このところ読書会では、口を開けば沼が開くいっても過言ではないほど、沼が盛況である。たとえその気がなかったとしても、いつの間にか、全ての話題は沼に収斂する。僕にはもはや、読書会そのものが巨大な湿地帯に見えて仕方がない。

 いずれにせよ、数多の話題に花咲かせていたサイゼリヤのランチ会場は、気付いた時には、手前にヅカ沼、奥に特撮沼が出現し、見事二大沼拮抗の様相を呈していた。

 はてさてこんな書き方でよかっただろうか。もちろん、この項の記述には相当の誇張があるし、経験豊富な皆さんは、湿地帯の端で身を細めて揺れている葦の存在を忘れるような真似はしない。事実、とことんハマれる何かを持たずにここまで来てしまった僕のような考えぬ葦が、朽ちることなく沼界の軌跡を追い続けられるのは、初心者にも寛容であり、かつ、魅力あふれるパフォーマンスで好きなものをとことん語る皆さんのお陰である。

 ともあれ、盛況のうちにランチが終わり、第2回謎解き部は解散の運びとなった。

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 いかがだったでしょうか。最後は勢いで書いてしまいましたが、以上、いつも賑やかな読書会の話でございました。

 明日は何を書くでしょうか。わかりませんよ、日記ですから。というわけで、ではまた!