とても嫌な酒の酔い方をした。

 会社から帰る時、妙に気分が落ち込んでいて、身体を芯から温めたいと思った。それで、あの店なら願いが叶うんじゃないかと思い、とある立ち飲み屋へ足を運んだ。しかし、その思い切った判断が裏目に出た。気分が落ちて、とにかく自分を守りたくて仕方のない男には、常連客の会話の盛り上がりが、かえって、お前はここでは場違いなのだぞというメッセージにしか見えなかった。冷静に振り返ってみれば、怯えるような目で辺りをキョロキョロ見回していた僕にも非はあっただろうと思う。しかし、たとえ自分が悪かったのだとしても、やるせないものはやるせない。

 結局、いつもの夕食の3倍近い出費をして、ひたすら気分を荒ませて、家路についた。空きっ腹に入ったビールと日本酒が、気の荒みを一段とひどくした。あの店で悪酔いしたというのも気を滅入らせた。家に着いた時、気分は最近稀に見る底打ちぶりだった。たまらず不貞寝する。気付いたら日付が変わっていた。

 特に誰に迷惑をかけたわけでもないと思うが、これは間違いなく酒の失敗の1つだと思った。

 そして、僕は初めて、酒に溺れる人の心理が少し見えた気がした。満たされなさゆえに酒に手を染め、なお満たされぬゆえ、再び酒に手が伸びる。そんな気持ちがわかる気がした。けれども、その先に待っているのが気の荒みの悪循環であることも、僕にはわかった。

 とにかく、今後、気分が落ち込んでいる時に一人で酒は飲むまい。