前回に引き続き、1月6日に大阪で開かれた彩ふ読書会の模様を振り返りたいと思います。前回は午前の部=それぞれのお気に入りの本を紹介し合う「推し本読書会」を振り返りました。今回は、午後の部=1冊の本について感想などを話し合う「課題本読書会」の方を見ていきましょう。

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 今回の課題本はこちら。



 ミニマリスト・佐々木典士さんの『ぼくたちに、もうモノは必要ない』です。

 正直言って、僕自ら進んで買うことはないだろうなという本でした。課題本読書会の案内を見た時も、最初は敬遠していました。しかし、あるベテラン参加者から「自分では絶対に手に取らないだろうなって本を読めるから、課題本は面白いよ」と言われて、「それもそうだなあ」と思い、参加を決意。本もちゃんと買いました。

 読んでみると、意外と面白かったです。そして、読書会が始まると、本の内容から派生するようにして、「幸せについて」「年賀状、何通出した?」「人間幾つで悟りを開くか」など、様々な話が展開し、より一層楽しめました。あの時課題本ノススメを説いてくださった先輩に、ただただ感謝です。

 さて、読書会は3つのグループに分かれて進みました。僕のいたグループは、男性3名・女性2名の計5名でした。グループの進行役は僕でした。課題本読書会2回目にして進行役を務めることになり、戸惑いもありましたが、お陰様で楽しくトークできたことは上述の通りです。

 今回は、初めにお一人ずつ、課題本を読んだ感想や印象に残ったところについて話していただき、その後は1時間程度自由に話をしました。最初に言っていただいた感想は、用意していたホワイトボードにメモし、読書会の間ずっとテーブルの中央に置いていました。これは写真でご紹介するにとどめ、以下本文ではフリートークの内容を出た順に振り返ろうと思います。

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◆幸福は分かち合うもの~ライブから一人帰る途上は寂しい~

 最初の感想紹介の中で、初参加の男性から「幸福は分かち合うものだ、というフレーズが印象に残った」という話があり、このテーマを掘り下げるところからフリートークが始まりました。おっと、のっけからミニマリズム関係ないぞというツッコミはご遠慮願います。

 「一人で幸福を感じることはあるのだろうか」「だからといって、SNSでいいねをたくさん集めるのは幸せなのだろうか」そんな色んな意見が出る中、僕はこんな話をしました。

「一人旅だと感じたことが喋れなくて寂しいけど、二人や三人で旅をしていると思いが共有できるじゃないですか。ここでいう幸せを分かち合うっていうのは、そういうことかなと思うんです」

 すると、久しぶりの参加だった女性の方が話を続けてくださいました。「わかります。私よくライブ行っていて、一人で行くこともあるんですけど、やっぱり何人かで行く方が楽しいですよね」

 そこへ、初参加の男性の方が加わります。「私もライブ行くんですけど、ライブ観てる時は一人でもいいんですけど、それだと帰り道がなんだか寂しいんですよね」。そこで、「ああー!」の大合唱が起こる。

 この「ライブの帰り道に一人だとなんだか寂しい」という表現、とても印象的でした。人と分かち合う幸せに対置される寂しさや切なさを、これほど綺麗に言い表した言葉はそうないんじゃないでしょうか。

◆モノの整理と人の生き方はつながっている

 先の話からどういう経緯でここへ辿り着いたのかわかりませんが、次にしたのは、ミニマリズムの考え方は、人生の他の部分ともつながっているという話でした。

 課題本では、ミニマリストは、「本当に自分の必要なものがわかっている人」「大事なもののために減らす人」と定義されています(p.47)。とにかくモノを極限まで減らすのがミニマリストというわけではないようです。この箇所を読んだ時、僕はふと、「優先順位を考えて行動する」という、社会人になったばかりの頃に教わったことを思い出しました。モノを捨てて減らすときの思考と、仕事をするときの思考が、とても似ているように思えたのです。

 そんな話をしたところ、「よく言われる話ですけど、部屋の中と頭の中は一緒だって言いますよね。部屋や机の周りが綺麗な人は頭の中も整理されているって言いますし、逆もそうですし」という話が出ました。「結局同じ人のすることだから、考え方なんかも全部共通してきますよね」という言葉も飛び交いました。モノを捨てたり整理したりすることと、生活の他の局面は、全てつながっているのですね。

◆「ところで、年賀状何通出されました?」

 何かの拍子で、先ほどライブの話をされた女性の方がこんなことを訊かれました。1月にミニマリストの話をしていると、どうしても大掃除や年賀状のことが思い起こされるようです。最近では人間関係の断捨離という言葉を耳にすることも珍しくありません。年賀状を誰に何通出すかというのは、ミニマリスト関連で気になる話題の1つなのでしょう。

 話題を切り出された女性の方が出した年賀状は6通とまさかの一桁。年々減らしていってこの量になったそうです。

 ここから暫く、全員が年賀状の枚数を披露する時間が続きました。夏ぶりに参加されたという女性の方は、30通。うち20通は職場の方宛で、残り10通が今後も付き合いをもちたい方宛。それ以外の方にはメールで挨拶をしたそうです。

 代表・のーさんは、6通。のーさんも、メールでの挨拶が多いと話していました。そして、初参加の男性の方は50通。少し前に会社で虚礼廃止の令が下って以来、枚数は減ったそうです。

 実は一番枚数が多いのは僕でした。約60通。うち30通は職場の方宛に、残り30通は昔からやり取りしている方宛に出しています。ですが、今年から、無理に返事を書いているなと思った人には出さないことにしました。今後枚数は減っていくことでしょう。

◆「人と比べないというには、この筆者は若すぎる」

 年賀状トークが落ち着いたところで、話は再び本のことに戻りました。

 僕には、読書会開始直後から気になって仕方のない感想が1つありました。「ミニマリズムの考え方は大事だなと思ったんですけど、僕は煩悩のカタマリなので、実際にやるのは難しいなと思いました」という感想です。なぜこれが気になっていたのかということは、読書会が終わってからわかったのですが、僕は以前から、自分の視野が狭いことを気に掛けており、縮み志向にならないためにも欲をちゃんと持つことが大事だと考えていました。ミニマリストの考えに触れる中で、確かにモノを減らすのは大事だと思いつつ、ずっとモヤモヤとした思いが抜けなかったのですが、その理由は、どうやら、ミニマリズムが縮み志向に行き着くのではないかという漠とした不安にあったようです。

 事後的な整理になりますが、僕はこの時、パッと手に取った慣れないタイプの本に感化されつつ、そこからどう距離を取り、本の主張を選択的に選び取っていけばよいかという課題に直面していたのだと思います。

 そしてここで、目の覚めるような発言が飛び出しました。それが、小見出しにも挙げた、「人と比べないというには、この筆者は若すぎる」というものです。

 これを言われたのは、年賀状を30通出していた女性の方でした。この方と課題本の著者である佐々木さんはそんなに歳が違わないそうで、そんな人が「人と比べないで生きる」と何かを悟ったようなことを言っているのに違和感があったのだそうです。「65歳くらいの方が書いていたのなら納得したかもしれないですけど、この方は、ちょっと」

 すると、もう一人の女性の方がこんな話をされました。「40歳を過ぎてから、感謝をとても大切にするようになったと思うんです。合わない人に対しても感謝する。それが大事だなと」。続けて、初参加の男性の方も話されました。「そうですね。子どもが出来たり、仕事で上の立場になって人の世話をしたりするうちに、自分もああやって色んな人のお陰でやってこれたんだなあと思えるようになりましたね」

 この話の主眼は、だから若いうちから感謝をしなさいということではないと僕は思っています。重要なのは、感謝の気持ちの芽生えをはじめ、人の成熟には一定の年月がかかるということ。それを踏まえ、今のそれぞれの年齢でミニマリストの話をどう受け止めるか、そして、人生の悟りをどの程度開くかを考えるのがよいだろうということです。

 なお、人と比べない生き方を巡っては、「仕事では若い時は人が評価するという環境に身を置きがちだけれど、自分の評価は自分でやるというのは若い頃から大事にしていいと思う」という話もありました。

◆「ミニマリストというには、この本は長すぎる」

 たった1つの発言が、場の流れを決定づけることがあります。「人と比べないというには、この筆者は若すぎる」は、まさにそんな発言でした。この一言を皮切りに、僕らは一斉に課題本から距離を置き始めたように思います。「価値に照らし合わせてなんでもモノを捨ててしまうのは切ないと思う」などなど、色んな意見が出ましたが、最もインパクトがあるのはなんといってもこれでしょう。

「ミニマリストというには、この本は長すぎる」

 この課題本、およそ300ページあり、著者の考え方がザザザと述べられています。その叙述がミニマルじゃないという声が俄かに上がったのです。お調子者の僕は、すぐに、「モノが少ない、幸せがある。だから、ぼくたちに、もうモノは必要ない。この本で伝えたいことをミニマル(最小限)にまとめるとこうなる」(p.24)という一節を見つけ出し、「もう栞でいいんじゃないですか?」とまで言い切りました。

 あれ、なんだかこの流れ、前にも見たことある。途中から課題本との向き合い方が変わり始め、突然著者の欠席裁判が始まるこの流れ……どうやら歴史は繰り返すようですね。

◆気に入ったものを長く使うということ

 随分長いレポートになってしまいました。フリートーク振り返りの最後に、モノに慣れて飽きるということを巡るトークをご紹介しましょう。

 課題本の中では、個人の持ち物が増えてしまう理由として、どれだけ必死に手に入れたものでも、繰り返し使っていると慣れて飽きてしまうことが挙げられています。この意見に共感する声が上がる一方で、「気に入ったものを長く使う」というやり方もあるではないかという意見が出ました。ベーシックだけど飽きの来ないものを長年使う。そうすると、使っているうちに味が出てきて、ずっと使い続けることになる。この話をされたのは、初参加の男性の方で、実際この方は愛車を長年大事にされたそうです。なるほど、そんなモノの使い方が出来ればいいなあと思ったものでした。

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 以上、課題本読書会の内容を振り返ってきました。最初にも書いた通り、本当に様々な話が繰り広げられました。年賀状の話のように、課題本と関連はあるけれども、本なんてなくたって全然構わないやみたいな話でも盛り上がり、とても楽しかったです。

 最後の最後に、僕の感想を少しだけ書いておこうと思います。一番印象に残ったのは、何と言っても、読書会を通じて、課題本との距離の取り方を見直せたこと、そして、今の自分の立場でこの本をどう読めばよいか再考できたことでした。グループトーク後の全体発表の際、僕は、自分はまだ欲にまみれていようと思ったと、率直に話しました。まだ悟らなくていいと、上手く開き直ることができたのです。

 もっとも、時折課題本に倣いモノを減らす時間をもとうという話もしました。モノを減らしてスッキリするのはイイことだし、自分にとって大事なものに注力するために他を削ぎ落とすのは大切なことだと思う。その思いは、読書会を経ても変わりません。

 重要なのは、本書の主張に百従う状態を抜け、そこから適切な距離を取れたことです。そしてその過程で、読んでいる時に実は感じていたモヤモヤ感に出会いなおし、そのモヤモヤに言葉を与えることもできました。この点については振り返りの中でうっかり書き出してしまいましたから、ここで繰り返すのはやめておきましょう。

 それでも言い足したいことがあります。自分一人で本を読むのと、人と一緒に本を読むのは違うということです。そして、人と読んで思いや考えを交換して初めてわかることもあるということです。その面白さに気付けたという点で、今回の課題本読書会は本当に良い会だったと思います。今後がますます楽しみになりました。

 というわけで、2回にわたりお送りしてきました、大阪読書会の振り返りは以上になります。ここまでお付き合いくださった皆さま、本当にありがとうございます。