1月6日、2019年の読書会活動が大阪で幕を開けました。僕は京都読書会のサポーターをしていますが、今月は諸般の事情により京都読書会に参加できないため、代わりにこの大阪読書会にお邪魔しました。というわけで、この大阪読書会の模様を振り返っていこうと思います。

 読書会は、①午前の部=各自がお気に入りの本を紹介する「推し本読書会」と、②午後の部=1冊の課題本について事前に読んできて話し合う「課題本読書会」の2部構成となっています。全体を一気に振り返ると長くなるので、今回は午前の部を振り返り、午後の部の振り返りは次回書くことにいたしましょう。また、当日は午前・午後とも全体が3つのグループに分けられていましたが、このブログでは、あくまで僕がいたグループの様子を振り返ることに徹しようと思います。全体のレポートは、いずれ彩ふ読書会のホームページに上がると思いますので、気になる方はぜひそちらをご覧ください。

◇     ◇     ◇

 さて、午前の部、僕がいたグループは、男性3人、女性2人の計5人、紹介された本の一覧は写真の通りでした。以下、それぞれの本を巡りどんな話が展開したのか、詳しく見ていきましょう。

IMG-9043

◆山崎ナオコーラ『論理と感性は相反しない』

 我らが代表、のーさん(遂に名前出しちゃいました)が紹介された作品です。前回、12月の京都読書会の際、「オーディブル」という朗読アプリで聴いた本を紹介していたのーさんですが、今回も、朗読アプリ経験を堪能し、スマホを携えての参戦でした。ほら、ご覧ください、上の写真! 右下の一画だけ燦然と輝いているでしょう!? というよくわからない盛り上げはともかく。

 この本は14の短編から構成されており、ある話の主人公が別の話で端役として登場するといった形で物語がつながっているそうです。例えば、表題の「論理と感性は相反しない」というのは、現代の日本を舞台に、あっけらかんとした女性とキチキチとした論理的な男性の恋愛を描く短編からきているそうですが、2人のその後が別の短編の中で語られているのだとか。「物語の連なりを追っているうちに、世界観に引き込まれていく。それがとても面白い」

 「有川浩さんの『阪急電車』が好きな人はハマると思う」という話もありました。『阪急電車』、僕は長らくユーザーでありながら読んだことがないのですが、阪急電車を舞台に、色んな登場人物の話が少しずつ交錯していく物語なのだそうです。

 僕は最近、極力本の内容を注視しようと気を付けていて、自分の感想もその読み方に引きずられているのですが、のーさんの話を聞いていると、作品の構成に魅せられることもあるのだということを感じました。今後自分が本を読むときにも気をつけてみようかなあと思います。

◆遠藤周作『十頁だけ読んでごらんなさい。十頁たって飽いたらこの本を捨てて下さって宜しい。』

 僕が紹介した、手紙の書き方に関するエッセイです。遠藤周作といえば、『沈黙』や『深い河』など、重く難しい作品を書いた作家というイメージが強いと思いますが、この本はとてもユーモラス。悪い手紙の例を挙げて「税金督促状」「気障でジンマシンが起きる」などと批評を加えながら、「読む人の身になって、心を込めて自分の表現で書く」という遠藤流の手紙の真髄へと迫っていきます。とにかく手紙を書こうと思える、そして、手紙に限らず、大切な人へ言葉やメッセージを届けるのはとても大事なことだと思える、そんな本です。

 この本の紹介を巡っては、意外なことが起こりました。僕はとにかく面白い遠藤周作のインパクトを狙って紹介したのですが、グループの中で関心が寄せられたのはその部分ではなかったのです。この本で紹介されている手紙の書き方は、多くがラブレターに関するものでした。そのため、この本には遠藤流恋愛論、さらには女性論という側面がありました。ここに女性陣が目を止めたのです。

 女性を褒める時には「彼女だけが気付いていて、余り他人の気づかない所を探せ」(p.117)という話、さらには、「高く買いかぶられると、女性はかえって不安になる」(p.121)から、勝手なイメージを押し付けるなといった話に、「遠藤周作は女性のことがよくわかっている!」という共感の声が相次ぐ。僕はそこから、この本の隠れた魅力を知りました。

◆福永武彦『死の島』(上・下)

 ベテラン参加者の男性が紹介された小説です。この方は福永さんの文章や表現力に魅かれているようで、この本についても、大型書店で在庫1になっているのを何とか買い当てたそうです。余談ながら、お値段は1冊で1,980円とかなり高め。マイナーな文学作品を復刊させたシリーズの1つということで、値段が上がっているようです。

 物語の舞台は、昭和30年ごろの日本。ある出版社に勤める男が、平和に関する本を出版するにあたり表紙のデザインを検討していたところ、「死の島」という絵画に魅せられる。男は作者である女性Aに会いに行く。その方は原爆の傷を負っており、また、過去に辛い経験をした別の女性Bと共に暮らしていた。この3人を中心に、女性2人が亡くなるまでの1年を叙述する物語とのことです。気持ちの整っている時に読まないと精神的に参ってしまうので注意が必要という話でした。

 興味深いのは物語のラストです。上述の女性2人が亡くなったところから話は始まり、過去を追い始めるのですが、ラストの部分では、2人とも亡くなった、女性Aだけが生き残った、女性Bだけが生き残ったという3つのエンディングが示されるそう。文中でどの結末が正しいかは明かされず、読み手がそれぞれに作中の伏線を頼りに正しいエンディングを解釈するのだそうです。そんな本もあるのだなあと思ったものでした。

◆吉田修一『横道世之介』

 初参加の女性が紹介してくださった推し本です。タイトル聞いたことあるなあと思っていたら、数年前に映画化された作品でした。この方は、まず映画を観、その際、話の飛躍について行けない部分があったことから原作を読んだそうです。

 タイトルである「横道世之介」は主人公の名前。地方から東京の大学へ進学した世之介は、マイペースでお人好し、厚かましいところもあるけれど憎めないという人間。そんな彼の大学時代からの生き様を、周りの人びととの交流と共に描いた小説とのことです。

 作品の良いところは、人のつながりや、人生の面白さだと言います。人生何があるかわからない。ひょんなことをきっかけに歯車が回りだし、思いがけないところへとつながっていく。例えば、世之介と関わりをもったある女性は、実家でボートピープルに出会ったのをきっかけに国連職員になる。また、世之介自身は、趣味でカメラに手を出したことをきっかけに、カメラマンとして生きていくことになる。そんな人生の面白さが、この本からは伝わってくるのだそうです。

 ところで、この女性の方、自己紹介の際に印象深い話をされていました。多読派ではなく、人にきいた本を読むことが多いそうですが、その理由というのが面白い。「一番好きな本を聞くと、その人がわかる」からなのだそうです。今これを書きつつ、僕はこの話と、『横道世之介』の感想をフッと見比べておりました。ああ、きっとこの方の根底には、人の生き様の深い部分への関心があるのだろうなあと思いながら。

◆岸政彦×雨宮まみ『愛と欲望の雑談』

 進行役を務めておられた大阪サポーターの女性が紹介された1冊。社会学者・岸政彦と、エッセイスト・雨宮まみによる、テーマを決めない対談を収録した本だそうです。基本的に、雨宮さんが容赦なくズバズバ切り込んで、それを岸さんが受け止め、社会学的に説明するという風に対談が進むとのこと。内容は、おばちゃんは社会に必要という話、ポエム葬は嫌だという話、社会学者の一部はアカデミズムクソ野郎だという話、そして、女性エッセイストとして生きるというのは自分の人生を切り売りするようなものだという話まで、本当に多岐にわたっているようです。

 紹介の中で印象に残ったのが、「雨宮さんは、自分に自信がなかった時の私のバイブル」という話でした。本書出版後、雨宮さんは亡くなっており、紹介者の方は大きなショックを受けながら、自意識を持て余しながら自分の思いに正直に生きる雨宮さんの苦しさ、面白さ、いじらしさに思いを馳せ直したそうです。

 僕はこの方と何度かお会いしており、よく楽しそうに笑っているという印象があったのですが、実はそんな過去があったのだと知り、驚きました。そして、僕自身が本当に自信を持てないでいた頃のことを思い出しました。特定の作家に救われることはなかったけれど、社会学専攻の人たちとの関わりの中で、色んな文章に出会い、沢山の話をして、立ち上がっていったことを。

 上手くは言えないけれど、本当に辛い時に、じっと寄り添い支えてくれる言葉というのは、きっとある。こんな結論で締めたいわけじゃないけれど、いまはそう言いたいと思います。

◇     ◇     ◇

 以上、午前の部を振り返ってきました。自分で言うのもなんですが、前回より一層真面目に書いたような気がします。これには2つの理由が絡んでいるように思います。

 1つは、話し合いの進行自体が静かで穏やかであったこと。その雰囲気がそのまま文章に投影されたのかなあと思うのです。

 そしてもう1つは、僕自身が、ただ場の展開を伝えるだけでなく、その中で自分は何を掴み取ろうとしているのかを、前回以上に考えていたこと。実際、今回の読書会では、午前・午後を通じて、引っ掛かった話を自分の中で受け止めようという姿勢が前回より強くなっていると感じました。

 サポーターという立場で参加するようになって、読書会という場への分け入り方が深まっているのだろうか。その結果、これまで至らなかったところにまで思考が及ぶようになったのだろうか。などなど、全ては推測に過ぎませんが、参加回数が増えることに本や話との向き合い方が深まっているのだとしたら、それは本当に嬉しいことだなあと思います。

 その嬉しさを胸に、次回、午後の部の振り返りも丁寧にしたためたいと思います。それでは、本日はこれまで。