読書会謎解き部の活動報告、いよいよこれが最終回になります。冊子にある3つの章の謎を解き終えた僕たちを待っていたのは、それに続く次の章でした。指示に従い、向かった関西大学梅田キャンパス、ここで遂に、グー・チョキ・パーの3チームが一堂に会し、熾烈な謎解きレースを繰り広げます。そして最後、謎解きレースは思わぬ展開を遂げることになるのです。いったい何が起こるのか。最後までじっくりご覧ください。
黄色いバンダナに伝える5文字の合言葉は何か。「リンゴアワセロ」という指示に辿り着き、冊子の表紙と、コースター状の丸い紙にある2つのリンゴを重ね合わせるも、なかなか答えがわからない。関西大学の1階にあるスターバックスコーヒーの前で、コンビニにたむろする中学生の如くしゃがみ込み、女性陣に笑われながら、頭をひねっていたその時、C氏が小さく叫んだ。
「わかった!」
僕とMさんはC氏の手元を覗き込んだ。リンゴの絵が描かれていた丸い紙が裏返されている。その裏面には、冊子と似たような模様が入っていた。そして、2つの模様が重なったところに、カタカナ5文字の言葉が浮かび上がった。
フユヤスミ
ゲームが終わった後、僕はC氏に「なんでわかったんですか?」と尋ねてみた。するとC氏はこう答えた。
「リンゴの葉っぱが重ならなかったから」
えっと思い、冊子と丸い紙を見比べて、初めて気付いた。冊子のリンゴは葉っぱが左側に付いている。これに対し、丸い紙のリンゴは葉っぱが右側に付いていた。つまり、2つのリンゴをどちらも表向きにして重ねても、リンゴは合わない。2つのリンゴを合わせるためには、冊子と丸い紙を向い合せなければならないのだ。
細かいところまで気を抜くなかれ。C氏の教訓の通りだった。
話を戻そう。僕らは立ち上がって建物の中に入り、黄色いバンダナを首に巻いたスターバックスの店員に合言葉を告げた。すると、バンダナは1枚の紙を渡してくれた。それは、雪だるま・スノキチを作ったハルカという女の子からの手紙だった。スノキチとハルカが再会を果たすための呪文、それが最後の謎だった。
涙が落ちて雪に変わるとき、上と下にあるもの、
僕らは再び建物を出、今度は建物から離れた場所にしゃがみ込んで、キットを見始めた。歩道の反対側、建物の外壁に沿う場所で、グーチームは既にこの謎解きにかかっている。そして程なくして、チョキチームが建物から出てきた。チョキチームの3人は、建物を出てすぐのところに立って、手紙を広げた。
ゲーム開始から2時間、3つのチームは再び一堂に会した。そして、それぞれに同じ問題に取り組んでいた。先にこの問題を解いたチームが勝者となる。勝者になったからといって何があるわけでもない。ただ、競争があるとスリルがある。誰もが勝手に興奮を求めていた。ただ疲れてハイになっていただけかもしれないけれど。
「涙が落ちて雪に変わる」この謎は、C氏があっさり解決した。冊子を見開いた時の左側のページの端に、しずくの絵がある。後ろから順番にめくっていくと、しずくは最後雪に変わっていた。
問題は「上と下にあるもの」そして、「その間にある四文字」だった。
「こうじゃないですか?」最初に案を出したのはMさんだった。冊子の左端と、ハルカの手紙を重ねる。しずくの上にある文字と、雪の下にある文字を拾う。そして、その間の文字を見る。だが、この方法はどうもしっくりこない。
「たぶん何かあるんですよ。僕らがまだ使ってない仕掛けが」C氏がそう言って、キットを再び点検し始めた。僕らもそれに倣う。けれども、それらしい仕掛けはもうないように思われた。僕はさっき自分が見つけたビルの絵を眺めて、勝手に満足に浸っていた。
「あ、これ!」
ふいにC氏が小さく叫んだ。そして、冊子の各ページの四隅にある模様を示した。模様についている〇、その中に入っている線が、全て違うというのである。
「これ組み合わせたら、なんか文字になるんちゃう?」
早速試してみた。涙が落ちて雪に変わるイラストの上と下にある模様、その中の線を1本ずつ拾っていく。しかし——
「ダメですね」
Mさんが言った。文字が1つ完成しないのだ。涙の上には、カとサというカタカナ2文字が現れた。しかし、雪の下には、クという文字はできるが、もう1つはヨを逆さまにしたような文字になってしまうという。これも違うのだろうか。
その時だった。
「わかった!!」
その叫びは、グーチームの中から聞こえた。驚いて顔を上げる。ハッと左をみると、チョキチームも同じ方を見ていた。
グーチームの3人は、それから内容をチェックしあい、手紙にあるQRコードを読み取って、呪文を入力したのであろう。ともあれ、暫くしてから、「すごーい!!」「やったー!!」と声を出して抱き合った。そして、「お先でーす」と満面の笑みを浮かべて、ゲームクリアの証のカードを貰うべくバンダナのもとへ向かっていった。
建物から出てきた3人の手には、雪だるまの絵が描かれた青いカードがあった。その瞬間、僕は謎解きを放り投げ、カメラを手に持って、3人に接近した。
「すいませーん、写真部でーす」
そこで撮った3人の写真には、苦い顔をしているチョキチームの姿が後ろに小さく映っていた。
「やっぱりお昼にしませんか」
部長が呼びかけた。もちろん勝者の驕りではない。時刻は13時半になろうとしている。お昼には遅いくらいだった。
「行きましょっか。僕ら待ってたらあと1時間くらいかかるかもしれないですし」
C氏が答えた。チョキチームの3人も同意見だった。かくして、僕らは関西大学を一旦離れ、お昼を食べることにした。余談であるが、割り勘である。敗者の奢りではない。
昼食会場に向かう間、僕はずっと、原田マハの『楽園のカンヴァス』を思い出していた。伝説のアート・コレクターから招待を受けた若きキュレーターと若手美術研究者の2人が、一冊の古書を手掛かりに1枚の絵の真贋を見極めるというアート・ミステリーだ。この話の途中に、コレクター・キュレーター・研究者の3人が、互いの見解を探り合いながら館で昼食を摂るシーンがある。そのシーンと、今の状況が、どこかダブっているように思えた。あまりにもスケールや緊迫度が違い過ぎるが、そんなことはどうでもよかった。
幸いにして、実際の昼食は、そんな殺伐としたものではなく、和気藹々としたものになった。何を話していたのかはあまり覚えていないが、とにかく笑っていたことだけは確かである。
さて、この昼食が始まる前、僕らは「とりあえず一旦謎解きのことは忘れましょう!」と言っていたような気がする。ところが、いざ食事が終わり歓談タイムに入ると、そんな協約はなかったことになってしまった。
「なんかヒントもらえないですか?」
誰かがグーチームの3人にそう言ったのを引き金に、全員が一斉にキットを取り出す。そして、最後の謎解きが始まった。
「いまどんな感じですか?」
グーチームの人たちに訊かれ、僕らは現状を説明する。C氏の説明に、部長が「それかなりいい線いってますよ! もう解けるんじゃないですか」と返す。着眼点は、どうやら合っていたらしい。しかし、確か文字が1つ完成しなかったんじゃなかったか。
「線の位置も重要ですよ。〇の縁に当たってるかどうかとか」また1つヒントが増える。その時だった。
「僕わかったかもです!」
隣にいたMさんが言った。C氏が「えっ⁉」という顔で振り返る。チョキチームの3人も同様だ。僕は振り返ることすらできずに焦った。何がどうなっているのか、さっぱりわからない。
「あ、僕もわかりました」
暫くしてC氏が続いた。さらに続いて、チョキチームの3人からも「わかった」の声が相次ぐ。
「ウソぉ、俺だけなんもわかってない」
最後に僕が取り残された。部長が突然笑い出した。
「なんで、さっきまでチームで助け合ってたのに、いきなり個人戦になってるんですか!」
まったくである。どうしてこうなったのか教えてほしい。
とにかく、先ほどのヒントをもとに、涙の上と雪の下の文字を再点検する。上の2文字は「カ」「サ」、下の文字は、1つは「ク」、そしてヨを逆さまにしたような文字は、よく見ると「モ」だった。
「そこまで合ってますよ」
Mさんが教えてくれた。
「で、こっからどうすんの?」
僕はもう自力で解く気がない。焦りで言葉もぞんざいだ。
助け舟が次々出てきた。あっちから、こっちから。
「それから、地図の紙を見るんですよ」
「地図の方じゃないですよ、その裏面」
「よく見てください。何かないですか」
——あった。
無人島の手紙のようなシミの付いた紙。その左上にクモの絵が、そして、左下にカサの絵があった。その2つを1本の線で結ぶと、線は4つの文字の上を通過していった。
ミラクル
「めっちゃ腹立つ!」
僕はそう言って、笑いながら紙をテーブルに放り投げた。解けた感動よりも、言いようのない腹立たしさが勝った。
「なんで、なんで」
全員がツッコミを入れながら笑っていた。
15時ごろになって、僕らは再び関西大学梅田キャンパスに戻った。
バンダナの店員に、「ミラクル」と打ち込んだ画面を見せる。
クリア証が手渡された。
僕らは9人で、それを手に持って記念撮影した。
いかがだったでしょうか。チーム戦のはずが個人戦になるという思いがけない展開を迎えながらも、全員クリアという形で、第1回謎解き部の活動は幕を下ろしました。
この後我々は、ヅカ部長を兼任している部長に引き連れられて、大阪駅へ行くはずがなぜかキャトル・レーヴというヅカグッズ専門店に辿り着いたり(それこそ、全員クリアならなかった脱出ゲームのようなものだ)、そこから再び地上へ降りて東通り商店街を歩き、2軒はしごして4時間飲み続けたりと、1日が終わるまで梅田の街を満喫したものでした。が、その話は長くなるので割愛します。
最初の記事の冒頭にも書いたのですが、僕にとってこれは、初めての謎解きゲーム挑戦でした。最後は相当苦しみましたが、振り返ってみると本当に楽しかったなあと思います。何より、推理小説を読んでも謎も解かずパラパラ読みをするような僕にも、頭をひねれば解ける問題があったということが嬉しくてたまりませんでした。ちょっと自信が持てたかも。次の部活動も楽しみです。もっとも、その節はもうちょっと上手くまとめる術を考えたいと思います。
今年も残すところあと僅かとなりました。独房と実家の大掃除を積み残し、慌てているところではございますが、1年を振り返る日記などをしたためながら来年を迎えたいと思うところでもございます。それでは、次回をお楽しみに。
◇ ◇ ◇
黄色いバンダナに伝える5文字の合言葉は何か。「リンゴアワセロ」という指示に辿り着き、冊子の表紙と、コースター状の丸い紙にある2つのリンゴを重ね合わせるも、なかなか答えがわからない。関西大学の1階にあるスターバックスコーヒーの前で、コンビニにたむろする中学生の如くしゃがみ込み、女性陣に笑われながら、頭をひねっていたその時、C氏が小さく叫んだ。
「わかった!」
僕とMさんはC氏の手元を覗き込んだ。リンゴの絵が描かれていた丸い紙が裏返されている。その裏面には、冊子と似たような模様が入っていた。そして、2つの模様が重なったところに、カタカナ5文字の言葉が浮かび上がった。
フユヤスミ
ゲームが終わった後、僕はC氏に「なんでわかったんですか?」と尋ねてみた。するとC氏はこう答えた。
「リンゴの葉っぱが重ならなかったから」
えっと思い、冊子と丸い紙を見比べて、初めて気付いた。冊子のリンゴは葉っぱが左側に付いている。これに対し、丸い紙のリンゴは葉っぱが右側に付いていた。つまり、2つのリンゴをどちらも表向きにして重ねても、リンゴは合わない。2つのリンゴを合わせるためには、冊子と丸い紙を向い合せなければならないのだ。
細かいところまで気を抜くなかれ。C氏の教訓の通りだった。
話を戻そう。僕らは立ち上がって建物の中に入り、黄色いバンダナを首に巻いたスターバックスの店員に合言葉を告げた。すると、バンダナは1枚の紙を渡してくれた。それは、雪だるま・スノキチを作ったハルカという女の子からの手紙だった。スノキチとハルカが再会を果たすための呪文、それが最後の謎だった。
涙が落ちて雪に変わるとき、上と下にあるもの、
その間にある四文字が呪文。
◇ ◇ ◇
僕らは再び建物を出、今度は建物から離れた場所にしゃがみ込んで、キットを見始めた。歩道の反対側、建物の外壁に沿う場所で、グーチームは既にこの謎解きにかかっている。そして程なくして、チョキチームが建物から出てきた。チョキチームの3人は、建物を出てすぐのところに立って、手紙を広げた。
ゲーム開始から2時間、3つのチームは再び一堂に会した。そして、それぞれに同じ問題に取り組んでいた。先にこの問題を解いたチームが勝者となる。勝者になったからといって何があるわけでもない。ただ、競争があるとスリルがある。誰もが勝手に興奮を求めていた。ただ疲れてハイになっていただけかもしれないけれど。
「涙が落ちて雪に変わる」この謎は、C氏があっさり解決した。冊子を見開いた時の左側のページの端に、しずくの絵がある。後ろから順番にめくっていくと、しずくは最後雪に変わっていた。
問題は「上と下にあるもの」そして、「その間にある四文字」だった。
「こうじゃないですか?」最初に案を出したのはMさんだった。冊子の左端と、ハルカの手紙を重ねる。しずくの上にある文字と、雪の下にある文字を拾う。そして、その間の文字を見る。だが、この方法はどうもしっくりこない。
「たぶん何かあるんですよ。僕らがまだ使ってない仕掛けが」C氏がそう言って、キットを再び点検し始めた。僕らもそれに倣う。けれども、それらしい仕掛けはもうないように思われた。僕はさっき自分が見つけたビルの絵を眺めて、勝手に満足に浸っていた。
「あ、これ!」
ふいにC氏が小さく叫んだ。そして、冊子の各ページの四隅にある模様を示した。模様についている〇、その中に入っている線が、全て違うというのである。
「これ組み合わせたら、なんか文字になるんちゃう?」
早速試してみた。涙が落ちて雪に変わるイラストの上と下にある模様、その中の線を1本ずつ拾っていく。しかし——
「ダメですね」
Mさんが言った。文字が1つ完成しないのだ。涙の上には、カとサというカタカナ2文字が現れた。しかし、雪の下には、クという文字はできるが、もう1つはヨを逆さまにしたような文字になってしまうという。これも違うのだろうか。
その時だった。
「わかった!!」
その叫びは、グーチームの中から聞こえた。驚いて顔を上げる。ハッと左をみると、チョキチームも同じ方を見ていた。
グーチームの3人は、それから内容をチェックしあい、手紙にあるQRコードを読み取って、呪文を入力したのであろう。ともあれ、暫くしてから、「すごーい!!」「やったー!!」と声を出して抱き合った。そして、「お先でーす」と満面の笑みを浮かべて、ゲームクリアの証のカードを貰うべくバンダナのもとへ向かっていった。
建物から出てきた3人の手には、雪だるまの絵が描かれた青いカードがあった。その瞬間、僕は謎解きを放り投げ、カメラを手に持って、3人に接近した。
「すいませーん、写真部でーす」
そこで撮った3人の写真には、苦い顔をしているチョキチームの姿が後ろに小さく映っていた。
◇ ◇ ◇
「やっぱりお昼にしませんか」
部長が呼びかけた。もちろん勝者の驕りではない。時刻は13時半になろうとしている。お昼には遅いくらいだった。
「行きましょっか。僕ら待ってたらあと1時間くらいかかるかもしれないですし」
C氏が答えた。チョキチームの3人も同意見だった。かくして、僕らは関西大学を一旦離れ、お昼を食べることにした。余談であるが、割り勘である。敗者の奢りではない。
昼食会場に向かう間、僕はずっと、原田マハの『楽園のカンヴァス』を思い出していた。伝説のアート・コレクターから招待を受けた若きキュレーターと若手美術研究者の2人が、一冊の古書を手掛かりに1枚の絵の真贋を見極めるというアート・ミステリーだ。この話の途中に、コレクター・キュレーター・研究者の3人が、互いの見解を探り合いながら館で昼食を摂るシーンがある。そのシーンと、今の状況が、どこかダブっているように思えた。あまりにもスケールや緊迫度が違い過ぎるが、そんなことはどうでもよかった。
幸いにして、実際の昼食は、そんな殺伐としたものではなく、和気藹々としたものになった。何を話していたのかはあまり覚えていないが、とにかく笑っていたことだけは確かである。
さて、この昼食が始まる前、僕らは「とりあえず一旦謎解きのことは忘れましょう!」と言っていたような気がする。ところが、いざ食事が終わり歓談タイムに入ると、そんな協約はなかったことになってしまった。
「なんかヒントもらえないですか?」
誰かがグーチームの3人にそう言ったのを引き金に、全員が一斉にキットを取り出す。そして、最後の謎解きが始まった。
「いまどんな感じですか?」
グーチームの人たちに訊かれ、僕らは現状を説明する。C氏の説明に、部長が「それかなりいい線いってますよ! もう解けるんじゃないですか」と返す。着眼点は、どうやら合っていたらしい。しかし、確か文字が1つ完成しなかったんじゃなかったか。
「線の位置も重要ですよ。〇の縁に当たってるかどうかとか」また1つヒントが増える。その時だった。
「僕わかったかもです!」
隣にいたMさんが言った。C氏が「えっ⁉」という顔で振り返る。チョキチームの3人も同様だ。僕は振り返ることすらできずに焦った。何がどうなっているのか、さっぱりわからない。
「あ、僕もわかりました」
暫くしてC氏が続いた。さらに続いて、チョキチームの3人からも「わかった」の声が相次ぐ。
「ウソぉ、俺だけなんもわかってない」
最後に僕が取り残された。部長が突然笑い出した。
「なんで、さっきまでチームで助け合ってたのに、いきなり個人戦になってるんですか!」
まったくである。どうしてこうなったのか教えてほしい。
とにかく、先ほどのヒントをもとに、涙の上と雪の下の文字を再点検する。上の2文字は「カ」「サ」、下の文字は、1つは「ク」、そしてヨを逆さまにしたような文字は、よく見ると「モ」だった。
「そこまで合ってますよ」
Mさんが教えてくれた。
「で、こっからどうすんの?」
僕はもう自力で解く気がない。焦りで言葉もぞんざいだ。
助け舟が次々出てきた。あっちから、こっちから。
「それから、地図の紙を見るんですよ」
「地図の方じゃないですよ、その裏面」
「よく見てください。何かないですか」
——あった。
無人島の手紙のようなシミの付いた紙。その左上にクモの絵が、そして、左下にカサの絵があった。その2つを1本の線で結ぶと、線は4つの文字の上を通過していった。
ミラクル
「めっちゃ腹立つ!」
僕はそう言って、笑いながら紙をテーブルに放り投げた。解けた感動よりも、言いようのない腹立たしさが勝った。
「なんで、なんで」
全員がツッコミを入れながら笑っていた。
◇ ◇ ◇
15時ごろになって、僕らは再び関西大学梅田キャンパスに戻った。
バンダナの店員に、「ミラクル」と打ち込んだ画面を見せる。
クリア証が手渡された。
僕らは9人で、それを手に持って記念撮影した。
◇ ◇ ◇
いかがだったでしょうか。チーム戦のはずが個人戦になるという思いがけない展開を迎えながらも、全員クリアという形で、第1回謎解き部の活動は幕を下ろしました。
この後我々は、ヅカ部長を兼任している部長に引き連れられて、大阪駅へ行くはずがなぜかキャトル・レーヴというヅカグッズ専門店に辿り着いたり(それこそ、全員クリアならなかった脱出ゲームのようなものだ)、そこから再び地上へ降りて東通り商店街を歩き、2軒はしごして4時間飲み続けたりと、1日が終わるまで梅田の街を満喫したものでした。が、その話は長くなるので割愛します。
最初の記事の冒頭にも書いたのですが、僕にとってこれは、初めての謎解きゲーム挑戦でした。最後は相当苦しみましたが、振り返ってみると本当に楽しかったなあと思います。何より、推理小説を読んでも謎も解かずパラパラ読みをするような僕にも、頭をひねれば解ける問題があったということが嬉しくてたまりませんでした。ちょっと自信が持てたかも。次の部活動も楽しみです。もっとも、その節はもうちょっと上手くまとめる術を考えたいと思います。
今年も残すところあと僅かとなりました。独房と実家の大掃除を積み残し、慌てているところではございますが、1年を振り返る日記などをしたためながら来年を迎えたいと思うところでもございます。それでは、次回をお楽しみに。
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