梅田・茶屋町を舞台に展開する、彩ふ読書会謎解き部の部活動レポート、今回はその第3章をお送りします。3チームに分かれて進行していた謎解きゲーム。いよいよ全てのチームが冊子のラスト・第3章に突入、大阪工業大学梅田キャンパスにて謎解きにかかります。では、どうぞ。
大工大の建物に入ると、僕らは手掛かりの書かれたパネルを探し始めた。すると、パネルよりも先に、吹き抜けのエントランスをウロウロしているグーチームの3人組が見つかった。「よく会いますね~」と互いに笑う。もっとも、上っ面を一枚めくれば、互いに腹の探り合いをしているのは間違いない。〈どこまで掴んでる〉〈さあな。そっちこそどんな具合だ〉〈腹の中か、空いてるぜ〉時刻は12時半を回りつつあった。
僕は首からさげたカメラで記念撮影をしておくことにした。実を言うと、僕は謎解き部員であると同時に、写真部員でもあるのだ。「はいはい、スパイじゃありませんよー。ネタバレしない程度に冊子こちらへ向けてくださーい」グーチームは余裕の笑みを返してきた。
一方、パネルはまだ見つからない。まさかと思いつつ、念のため建物内のコンビニに入る。そこで意外な人たちに出会った。ロフトで苦戦する僕らをよそに、いつの間にか首位に躍り出ていたチョキチームの3人だ。3人はイートインのテーブルを1つ占め、キットを広げて謎解きしているようだった。その様子も写真に収めた。後から聞いたところによると、チョキチームはこの時、「喉が渇いたね」と言ってただ単に休憩していたらしい。それを知ってから写真を見返すと、拍子抜けするほど和んでいた。
さて、肝心のパネルは、このコンビニの入り口手前にあった。
記憶を失くしたものを青い四角に立たせ、
そのまま赤い四角まで、回転させろ。
そのとき赤い三角を読め。
大工大の建物に入ると、僕らは手掛かりの書かれたパネルを探し始めた。すると、パネルよりも先に、吹き抜けのエントランスをウロウロしているグーチームの3人組が見つかった。「よく会いますね~」と互いに笑う。もっとも、上っ面を一枚めくれば、互いに腹の探り合いをしているのは間違いない。〈どこまで掴んでる〉〈さあな。そっちこそどんな具合だ〉〈腹の中か、空いてるぜ〉時刻は12時半を回りつつあった。
僕は首からさげたカメラで記念撮影をしておくことにした。実を言うと、僕は謎解き部員であると同時に、写真部員でもあるのだ。「はいはい、スパイじゃありませんよー。ネタバレしない程度に冊子こちらへ向けてくださーい」グーチームは余裕の笑みを返してきた。
一方、パネルはまだ見つからない。まさかと思いつつ、念のため建物内のコンビニに入る。そこで意外な人たちに出会った。ロフトで苦戦する僕らをよそに、いつの間にか首位に躍り出ていたチョキチームの3人だ。3人はイートインのテーブルを1つ占め、キットを広げて謎解きしているようだった。その様子も写真に収めた。後から聞いたところによると、チョキチームはこの時、「喉が渇いたね」と言ってただ単に休憩していたらしい。それを知ってから写真を見返すと、拍子抜けするほど和んでいた。
さて、肝心のパネルは、このコンビニの入り口手前にあった。
記憶を失くしたものを青い四角に立たせ、
そのまま赤い四角まで、回転させろ。
そのとき赤い三角を読め。
ここも、リーダーC氏が早かった。取り出したのは、コースターのような丸い紙だ。丸い紙の縁の1か所に、雪だるまの絵が描かれている。これを、冊子第3章のページの左端に描かれた青い四角の上に立たせる。そして、丸い紙を、ページ右端の赤い四角まで転がしていく。すると、コースターの縁に描かれた赤い三角の矢印が、青赤2つの四角の間にある文字を幾つか指し示すという。
なるほど、ではやってみよう。そう思った僕に、災難が訪れた。
丸い紙がない。
どこかで落としてしまったのだ。
仕方がないから、カメラのレンズのフタを転がしてみる。もちろん、何もわからない。
幸いにして、これはチーム戦だった。僕は「おっちょこちょい」のレッテルを甘んじて受け容れ、Mさんの冊子を覗き込んだ。
ココハナニノアトチカハナミテコタエロ
「ここは何の跡地か」訊かれていることはすぐにわかった。しかし、その後がわからない。「ハナミテコタエロ」とは、なんのことだろう。
その時、脳裏を、第2章終盤の暗号「ユビワニアルタキシード」がよぎった。
指輪、花……もしかしたら!
急いで地図を見る。大工大の建物のすぐ脇に、花のマークがあった。
「ここに行きましょう!」
何があるか、だいたい想像がつく。再開発で新しいビルが建った場所には、過去にそこ場所にあったものを示す記念碑のようなものが据えられていることが多い。花の場所にあるのは、その記念碑に違いない。
それにしても、と僕は思う。これはなんてシャレたゲームなんだろう。
この謎解きゲームの名前は、「記憶を失くした雪だるま」だ。僕らは雪だるまの記憶を辿るべく、ゲームを続けてきた。そして、冊子に書かれた最後の章・第3章へ辿り着いた。そこで僕らを待ち受けていたもの、それは、梅田という街に眠る失われた過去の記憶だったのだ。
ロマンチックじゃないか。誰が考えたか知らないが、天才だ。
果たして、花の地点には記念碑が立っていた。ここにはかつて、梅田東小学校という学校が建っていたようだ。
早速QRコードを読み取り、答えを入力する。画面が切り替わり、言葉が浮かび上がった。
なるほど、ではやってみよう。そう思った僕に、災難が訪れた。
丸い紙がない。
どこかで落としてしまったのだ。
仕方がないから、カメラのレンズのフタを転がしてみる。もちろん、何もわからない。
幸いにして、これはチーム戦だった。僕は「おっちょこちょい」のレッテルを甘んじて受け容れ、Mさんの冊子を覗き込んだ。
ココハナニノアトチカハナミテコタエロ
「ここは何の跡地か」訊かれていることはすぐにわかった。しかし、その後がわからない。「ハナミテコタエロ」とは、なんのことだろう。
その時、脳裏を、第2章終盤の暗号「ユビワニアルタキシード」がよぎった。
指輪、花……もしかしたら!
急いで地図を見る。大工大の建物のすぐ脇に、花のマークがあった。
「ここに行きましょう!」
何があるか、だいたい想像がつく。再開発で新しいビルが建った場所には、過去にそこ場所にあったものを示す記念碑のようなものが据えられていることが多い。花の場所にあるのは、その記念碑に違いない。
それにしても、と僕は思う。これはなんてシャレたゲームなんだろう。
この謎解きゲームの名前は、「記憶を失くした雪だるま」だ。僕らは雪だるまの記憶を辿るべく、ゲームを続けてきた。そして、冊子に書かれた最後の章・第3章へ辿り着いた。そこで僕らを待ち受けていたもの、それは、梅田という街に眠る失われた過去の記憶だったのだ。
ロマンチックじゃないか。誰が考えたか知らないが、天才だ。
果たして、花の地点には記念碑が立っていた。ここにはかつて、梅田東小学校という学校が建っていたようだ。
早速QRコードを読み取り、答えを入力する。画面が切り替わり、言葉が浮かび上がった。
スノキチ(注:雪だるまの名前)の記憶が少しよみがえってきた。
「ぼくはここにあった梅田東小学校で生まれたんだ!
でも他のことは思い出せない…。
もうひとつ思い出したぞ!
“メガネの2階、壁に学舎がある場所を調べ、合言葉を伝えろ…。”
うーん、何のことだろう???」
メガネの場所に行き、合言葉を伝えよう。
僕の言いたいことは1つだ。
まだ終わらんのかーい!!
地図を見ると、メガネのアイコンが関西大学梅田キャンパスの上にあった。大工大のキャンパスから、JR京都線沿いの信号を渡ってその場所へ向かう。通りに面した自動ドアから入ると、スターバックスコーヒーだった。あちこちに本棚が置かれた店内は、落ち着きがあって、静かで、休日に読書や作業に打ち込むにはもってこいの場所に思われた。そこへ、「どこへ行くんだっけ?」「2階ってなってましたね」「え~学舎学舎」と言いながら分け入っていく僕らは、さぞ場違いだったことだろう。
学舎の壁は程なく見つかった。グーチームがいたからだ。「お昼どうします?」グーチームを率いる部長から尋ねられる。「僕らは解けるまで頑張るよ」C氏が答える。それから僕らは、メッセージをチェックし、忘れないよう写真に残す。
合言葉を黄色いバンダナに伝えろ。
街に黄色い明かりを灯した時星の導きに従え。
導かれた5文字が合言葉だ。
その場で謎解きにかかるグーチーム。対する僕らパーチームは、自動ドアを出てすぐのところでしゃがみ込み、キットを広げて謎解きにかかった。
用意したのは、地図とクリアファイルの2点だ。「黄色い明かりっていうのはこれでしょ」C氏がそう言って、クリアファイルの上の方にある、BCG注射の跡のような黄色い四角の集合体を指す。そして、それを地図の上に重ねる。すると、クリアファイルに描かれている黄色い星が、幾つかの建物と重なった。その場所に合言葉のヒントがあるのだろうか。だが、何だかしっくりこない。
この時、僕はずっと気になっていることがあった。黄色い四角の集合体が街の明かりなのだとしたら、それはビルの窓に灯る明かりに違いない。どこかにビルの絵があるはずだ。
地図じゃない気がする。その裏面は絵と文字だけの紙だ。だとしたら、冊子か……ページをめくる。すると、第3章のページの下に、ビルの絵があった。冊子の上下を逆さまにして、クリアファイルに挿し入れる。黄色い四角が、ビルの窓にぴったり重なった。
「わかりましたよ!」
僕はそう言って、C氏とMさんに答えを見せた。「それか!」2人がそう言って、同じことをする。「もうほんとに無駄なく使うんですよ。細かいところにヒントが隠されてる」C氏が改めて、謎解きの極意を僕らに伝授した。
ビルに明かりが灯った時、クリアファイルに描かれた星は、ページにある7つの文字を囲んでいた。
リンゴアワセロ
「やっぱりこれだ」C氏はそう言って、冊子表紙の真ん中にある青いリンゴの絵を示した。そして、「で、合わせるリンゴは、これやな」そう言って取り出したのは、僕がなくしたあの丸い紙だった。仕方がないので、僕はMさんの謎解きにおじゃまする。
リンゴの位置が重なるように、丸い紙を上に置く。丸い紙の縁には三角矢印が沢山ある。それが何かを指し示すんだと僕は思った。けれども、どうやら違うらしい。地図やその裏、色んな紙を重ねてみるが、どれもしっくりこなかった。
「答え何文字やっけ」
「5文字です」
「……もう阪急三番街でええかな」
僕らがそんな話をしていると、頭上にヌッと影が伸びた。見上げると、チョキチームの3人がいた。
「今から中ですか?」
C氏が尋ねる。
「そうです」
チョキチームのリーダーH氏が返す。
「ここ難しいですよ。僕らもう1時間くらい悩んでます」
Mさんはどうやら1時間悩むのが好きらしい。もっとも、今は第1章の時とはわけが違う。悩んでいるのは事実なのだ。
やり取りもそこそこに、チョキチームは建物へ入っていく。最後にH氏が僕らを見てポツリと言った。
「なんか、コンビニの前でたむろしてる中学生みたいですよ」
チョキチームと入れ違いに、今度はグーチームが建物から出てきた。グーチームの3人は、僕らを見るなりゲラゲラ笑った。スターバックスの前でしゃがみこむ怪しい男3人の姿に笑ったらしいのだが、その時の僕には、謎解きレースの先頭を行く者の余裕の笑みにしか見えなかった。僕はフンと笑ってカメラを手に取り、道端に立って最後の問題に挑戦する3人の姿を撮った。
その時だった。
「わかった!」
C氏が声をあげた。
次回いよいよ最終回です。まだ先は長いですが一気に書きたいと思います。それでは。
「ぼくはここにあった梅田東小学校で生まれたんだ!
でも他のことは思い出せない…。
もうひとつ思い出したぞ!
“メガネの2階、壁に学舎がある場所を調べ、合言葉を伝えろ…。”
うーん、何のことだろう???」
メガネの場所に行き、合言葉を伝えよう。
僕の言いたいことは1つだ。
まだ終わらんのかーい!!
地図を見ると、メガネのアイコンが関西大学梅田キャンパスの上にあった。大工大のキャンパスから、JR京都線沿いの信号を渡ってその場所へ向かう。通りに面した自動ドアから入ると、スターバックスコーヒーだった。あちこちに本棚が置かれた店内は、落ち着きがあって、静かで、休日に読書や作業に打ち込むにはもってこいの場所に思われた。そこへ、「どこへ行くんだっけ?」「2階ってなってましたね」「え~学舎学舎」と言いながら分け入っていく僕らは、さぞ場違いだったことだろう。
学舎の壁は程なく見つかった。グーチームがいたからだ。「お昼どうします?」グーチームを率いる部長から尋ねられる。「僕らは解けるまで頑張るよ」C氏が答える。それから僕らは、メッセージをチェックし、忘れないよう写真に残す。
合言葉を黄色いバンダナに伝えろ。
街に黄色い明かりを灯した時星の導きに従え。
導かれた5文字が合言葉だ。
その場で謎解きにかかるグーチーム。対する僕らパーチームは、自動ドアを出てすぐのところでしゃがみ込み、キットを広げて謎解きにかかった。
用意したのは、地図とクリアファイルの2点だ。「黄色い明かりっていうのはこれでしょ」C氏がそう言って、クリアファイルの上の方にある、BCG注射の跡のような黄色い四角の集合体を指す。そして、それを地図の上に重ねる。すると、クリアファイルに描かれている黄色い星が、幾つかの建物と重なった。その場所に合言葉のヒントがあるのだろうか。だが、何だかしっくりこない。
この時、僕はずっと気になっていることがあった。黄色い四角の集合体が街の明かりなのだとしたら、それはビルの窓に灯る明かりに違いない。どこかにビルの絵があるはずだ。
地図じゃない気がする。その裏面は絵と文字だけの紙だ。だとしたら、冊子か……ページをめくる。すると、第3章のページの下に、ビルの絵があった。冊子の上下を逆さまにして、クリアファイルに挿し入れる。黄色い四角が、ビルの窓にぴったり重なった。
「わかりましたよ!」
僕はそう言って、C氏とMさんに答えを見せた。「それか!」2人がそう言って、同じことをする。「もうほんとに無駄なく使うんですよ。細かいところにヒントが隠されてる」C氏が改めて、謎解きの極意を僕らに伝授した。
ビルに明かりが灯った時、クリアファイルに描かれた星は、ページにある7つの文字を囲んでいた。
リンゴアワセロ
「やっぱりこれだ」C氏はそう言って、冊子表紙の真ん中にある青いリンゴの絵を示した。そして、「で、合わせるリンゴは、これやな」そう言って取り出したのは、僕がなくしたあの丸い紙だった。仕方がないので、僕はMさんの謎解きにおじゃまする。
リンゴの位置が重なるように、丸い紙を上に置く。丸い紙の縁には三角矢印が沢山ある。それが何かを指し示すんだと僕は思った。けれども、どうやら違うらしい。地図やその裏、色んな紙を重ねてみるが、どれもしっくりこなかった。
「答え何文字やっけ」
「5文字です」
「……もう阪急三番街でええかな」
僕らがそんな話をしていると、頭上にヌッと影が伸びた。見上げると、チョキチームの3人がいた。
「今から中ですか?」
C氏が尋ねる。
「そうです」
チョキチームのリーダーH氏が返す。
「ここ難しいですよ。僕らもう1時間くらい悩んでます」
Mさんはどうやら1時間悩むのが好きらしい。もっとも、今は第1章の時とはわけが違う。悩んでいるのは事実なのだ。
やり取りもそこそこに、チョキチームは建物へ入っていく。最後にH氏が僕らを見てポツリと言った。
「なんか、コンビニの前でたむろしてる中学生みたいですよ」
チョキチームと入れ違いに、今度はグーチームが建物から出てきた。グーチームの3人は、僕らを見るなりゲラゲラ笑った。スターバックスの前でしゃがみこむ怪しい男3人の姿に笑ったらしいのだが、その時の僕には、謎解きレースの先頭を行く者の余裕の笑みにしか見えなかった。僕はフンと笑ってカメラを手に取り、道端に立って最後の問題に挑戦する3人の姿を撮った。
その時だった。
「わかった!」
C氏が声をあげた。
次回いよいよ最終回です。まだ先は長いですが一気に書きたいと思います。それでは。
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