今日は、先月もご紹介した彩ふ読書会の話をしようと思います。丁寧に記録を綴りたいので、いつもと違い、ですます調で書き進めて参りましょう。
彩ふ読書会は、関西ではこれまで毎月大阪で開催されていたのですが、今月から、大阪と京都で毎月別日に開催されることになりました。実は私、これに合わせて、先輩から「サポーターをやってみないか」と声を掛けていただき、本日、初めて、サポーターという立場で読書会に参加しました。
サポーターの主な役目は、当日の準備のお手伝いと、グループ内での発表の進行役。ですが、何よりも大事なのは、今までと同じように読書会を楽しむこと! というわけで、特に何も気負わずに読書会に臨みました。そしたら、京都の新しい会場のアットホームな雰囲気にはしゃいでしまって、準備が手付かずになってしまったんですけどね……反省。
サポーターになって臨んだ読書会についての個人的な感想は最後に書くことにして、ここからは実際の会の様子を振り返っていきたいと思います。
読書会は、①午前の部=参加者がそれぞれおすすめの本を紹介し合う「推し本読書会」、②午後の部=参加者全員が1冊の課題本を読んできて感想などを話し合う「課題本読書会」の2部構成になっていました。2つの部の話を一気にすると長くなってしまうので、今日は①午前の部「推し本読書会」の話をしようと思います。また、いずれの部もグループに分かれての話し合いがメインになるため、ここでは特に、自分がいたグループでどんな本が紹介されたかや、どんな話をしたかについて、お話したいと思います。(全体のまとめは、いずれ彩ふ読書会のHPにアップされると思います。丸投げ!)。
私のいたテーブルで紹介されたのは次の7冊でした。以下、発表順にご紹介しましょう。
彩ふ読書会は、関西ではこれまで毎月大阪で開催されていたのですが、今月から、大阪と京都で毎月別日に開催されることになりました。実は私、これに合わせて、先輩から「サポーターをやってみないか」と声を掛けていただき、本日、初めて、サポーターという立場で読書会に参加しました。
サポーターの主な役目は、当日の準備のお手伝いと、グループ内での発表の進行役。ですが、何よりも大事なのは、今までと同じように読書会を楽しむこと! というわけで、特に何も気負わずに読書会に臨みました。そしたら、京都の新しい会場のアットホームな雰囲気にはしゃいでしまって、準備が手付かずになってしまったんですけどね……反省。
サポーターになって臨んだ読書会についての個人的な感想は最後に書くことにして、ここからは実際の会の様子を振り返っていきたいと思います。
読書会は、①午前の部=参加者がそれぞれおすすめの本を紹介し合う「推し本読書会」、②午後の部=参加者全員が1冊の課題本を読んできて感想などを話し合う「課題本読書会」の2部構成になっていました。2つの部の話を一気にすると長くなってしまうので、今日は①午前の部「推し本読書会」の話をしようと思います。また、いずれの部もグループに分かれての話し合いがメインになるため、ここでは特に、自分がいたグループでどんな本が紹介されたかや、どんな話をしたかについて、お話したいと思います。(全体のまとめは、いずれ彩ふ読書会のHPにアップされると思います。丸投げ!)。
◇ ◇ ◇
私のいたテーブルで紹介されたのは次の7冊でした。以下、発表順にご紹介しましょう。
◆森絵都『無限大ガール』
我らが彩ふ読書会の代表が紹介してくださった1冊です。様々な部活で助っ人をしていた女の子が、演劇部の部長に頼まれてミュージカルの主演をやることに。その過程での成長を描いた物語だそうです。きっと、劇の登場人物に扮することは、今の自分を抜け出し越えていくことなのでしょう。
もっとも、グループトークで話題になったのは、本の中身ではありませんでした。開口一番、代表はこう言ったのです。
「実は今日、本持ってきてません」
え!? と驚く我々の前に、代表が差し出したのは、スマホ。
「最近ちょっと、オーディブルというアプリにハマってまして」
オーディブル……ナンダソリャ??
簡単に言うと、本の朗読を聞き流すことのできるアプリなのだそうです。本を、目で読むものから、耳で聴くものに変えていく。通勤で歩いている途中に、家事の最中に、耳から本を読む。そうして1時間で1冊読み終える。それは、効率的で、新鮮で、かつ痛快な、新たな読書の可能性を開いてくれる経験なのでしょう。私もとても興味が湧きました。
せっかくなので、冒頭部分を再生していただきました。
……速い。
朗読スピードは手元で調節でき、3倍速以上にもできるとのこと。代表は「どこまで速くできるか競っている」と話していました。慣れると案外イケるそうですが、元来遅読の私には、スピードラーニングを聴いているようにしか思えませんでした。いや、聴いたことないんですけどね。
◆雫井脩介『火の粉』
先月グループ進行をされていたベテラン女性の方から紹介いただいた1冊です。ある裁判官家族の家の隣に、その裁判官が無罪判決を下した元死刑囚の男が引っ越してきたところから物語は始まります。男は裁判官の家族に親切を働くのですが、一家では、それを有難がる男性陣と、男を不気味がる女性陣に意見が分かれます。元死刑囚の男は人の感情に敏感で、女性陣に対して態度を変える、そしてやがて、家族はバラバラになってしまうのです。
なんだか人間模様がドロドロしていて、粗筋を聞いただけでもゾッとしてしまいます。
紹介者のコメントで印象的だったのは、男の不気味さに鈍感で、家族がバラバラになっていくことにもなかなか勘付かない裁判官とその息子への不満でした。「元死刑囚もキタナイ奴なんだけど、ほんとになんで気付かないの」と憤る様子に、グループ内の男性陣は思わず沈黙。慌てて「いや、みなさんのことじゃないですよ」と言う紹介者に、代表がボソリ「でもわかる気がします」。
白状します。私も自分なら気付かないだろうなと思いました。
裁判官の男性には、自分が無罪判決を下した男だから、気付いても言うに言えないという負い目もあったようです。しかし、それを割り引いたとしても、男はきっと、家庭に忍び寄る魔物に鈍感な生き物なのでしょう。
◆エリック・ジェイドリン『クジラとアメリカ アメリカ捕鯨全史』
初参加の男性が紹介してくださった1冊です。捕鯨という1つの産業の盛衰から国の歴史を見ることのできる本とのことでした。ちなみに、クジラは紹介してくれた方が子どもの頃から好きな動物だそうです。
発表の際、私たちの目を惹いたのは、「コンパクトな捕鯨の歴史書」というにはあまりに大きく分厚いその本(Amazon調べで570ページ!)と、そして、「読書会は初めてで勝手がわからないので」と机に置かれたA4のメモ書き原稿でした。物凄い準備力! しかもそのメモ、なんと2枚目もありました!
皆さんに話を聞いていくと、読書会の前日は準備でバタバタされる方が多いそうですが、それでも準備の度合いは人それぞれ。段々テキトーになってきたという方もいます。いずれにせよ、「勝手がわからない」からというだけで、メモを用意するとは限らないのです。紹介者の方がいかに几帳面か、そして、いかにこの本を紹介したかったかが、そのメモに表れているように、私には思えました。
紹介者はもう1冊、『空挺ドラゴンズ』というファンタジー漫画も紹介してくださいました。ドラゴンを狩り、油などをとって生活している人々の物語だそうで、聞いていると、なんだかクジラの話と被っているよう。実際その通りだったのですが、ここで飛び出した、クジラとドラゴンの話を架橋する紹介者の言葉がとても印象的でした。
「どちらも、人間が自分より大きなものを獲ろうとする話、そして、その中での人間模様を描いた話なんです」
◆マーセデス・ラッキー『女神の誓い』
初参加の女性が紹介してくださった1冊。山賊に一族を殺され、自身も美しい歌声を奪われ、復讐を誓った女神の物語。30年以上前にアメリカで書かれたファンタジーとのことです。
紹介してくれた方が繰り返しおっしゃっていたのは、作中にタブーが描かれていることの進歩性でした。例えば、途中で女神のパートナーとなる女の子は性虐待を受けており、彼女もまた復讐を誓っています。また、そんな女神と女の子の良き理解者となってくれる男性2人組は同性愛者だそうです。こうした生のタブーが30年前のファンタジーに描かれていることに、紹介者は感銘を受けたそうです。
本作を読んだきっかけは、ネットで傑作ファンタジーを検索していたらヒットしたことだったそうです。このように傑作と言われる作品でありながら、日本ではあまり知られていない(実際、本作を知っていた人はグループ内にほとんどいなかった)。それは、日本にこの作品を受け容れるだけの下地がないからではなかろうか、と紹介してくれた方は言います。確かに、そうかもしれないと、漸く頷いた私は、タブーをタブーのままに生きる現代人なのでしょう。
◆小山内恵美子『あなたの声わたしの声』
私が紹介した作品。1冊の本ではなく、文芸誌『すばる』の2018年4月号に掲載されていた短編小説です。
人の声を聴くことも、自分の声を人に届けることもできない「病」に冒された自分史ライターと、彼女に自分史作成のお手伝いを依頼した老婦人。その2人が、孤独の中で自分と向き合い、自分史を編むことを通じて互いの人生の深い部分に触れながら、今を生き直そうとする物語です。
声を失った世界の描写は残酷で、読んでいて涙が出そうなほど辛い箇所もありました。けれども、その深い残酷な世界から立ち返り、生き直す力を、彼女たちは、そして、私たちは持っている。その見えない力に包まれるという経験を、私は求めているのかもしれません。いま必要だからではなく、その経験が自分にとってとても重要な何かと結びついているからなのでしょう。
発表ではストーリーをもっと丁寧に話しました。それで時間を使ってしまい、本についてやり取りする時間を失くしてしまったことは、今更ながら悔しいなあと思います。
◆相沢沙呼『小説の神様』
4回目の参加となる男性が紹介してくださった1冊です。主人公は、高校生作家の男の子と、転校生の作家の女の子の2人。男の子は、自分が書きたいものと人が読みたいと思っているものは違っていて、人が読みたいと思うもの、すなわち売れるものを書くことが大切なのだと考えている。一方女の子は、自分が書きたいように書くことが大事だと考えている。そんな2人が合作を書くことに。その中で、互いの考えを改めながら成長する2人を描いた物語だそうです。
紹介してくれた方によると、この物語には、どうして小説を読むのか、どうして小説を書くのか、それらの問いに対する答えの1つが描かれていると言います。実はこの方、書店に平積みされた新人作家の作品をよく買われるそうで、本作もその1つなのだとか。では、なぜ新人作家の作品なのかというと、作品の中に、これが書きたいという一貫したテーマがあるからなのだそうです。私もどちらかというとテーマが1つハッキリしている作品の方が好きなので、なるほどなあと思いました(もっとも、最近はエンタメも好きになりつつあります)。
どうして小説を読むのか。私ならどう答えるだろうとふと考えます。単純に本を読むことに意義を見出しているから? 自分の世界を広げたいから? 冷めきった心を上下に激しく揺さぶりたいから? ここじゃないどこかへ行きたいから? うーん、どうなんだろう。
◆奥田英朗『オリンピックの身代金』
参加2回目の女性の方が紹介してくださった作品です。1964年、東京オリンピックの年、1人のテロリストが犯行予告を送りつけ、身代金を要求する。その事件が解決されるまでを、様々な人の視点から描いた社会派小説とのことです。
発表の大半は、男がなぜテロリストになったのかの説明に充てられていました。男は東北の出身で、東大を卒業したエリート。しかし、同じく東京へ出てきた兄の死について探る中で、オリンピックの準備のためにこき使われている人々がいることを知ります。工期に追われ、監督にどやされ、「代わりはいくらでもいるんだ」と言われる地方出身者たち。その人びとが背負う苦しみや理不尽を見るうち、男は思うのです。この世界はなんなんだ。オリンピックとはなんなのか。
男がテロリストになっていく事情を知ると、だんだんそちらに肩入れしたくなったと、紹介してくれた方はおっしゃいました。とてもわかる気がしました。
個人的に最も衝撃的だったのは、ラストの紹介でした。テロは失敗に終わり、東京オリンピックが予定通り行われる。14,5歳の少女たちが、純粋無垢な笑顔を浮かべて会場へ向かう。そして、物語は次の一文で終わる。「日本中が待ちに待った、オリンピックが始まった」。紹介してくれた方は、この一文に、それまで描かれていた苦しみ、理不尽さを呼び覚まされ、なんとも皮肉な思いがしたとおっしゃっていました。その鑑賞力と表現力、圧巻でした。
グループトークの中では、「これがもしかしたら今も起きてることかもしれないと思うとゾッとする」という話もありました。2020年のオリンピックに向けて、今何が起きているのか、そんなことを考えさせられる濃密な発表でした。
◇ ◇ ◇
午前の部「推し本読書会」の記録をつけて参りました。本の紹介だけでなく、グループトークの雰囲気そのものを掬い上げたい。そんな欲張りなことを考えた結果、とても長い記録になってしまいました。文量に負けず狙いが届き、「なんか面白そうだな」と感じてもらえたら幸いです。
最後に、初めて進行役をやって感じたことをお話したいと思います。
今回何より感じたのは、皆さんの本に対する熱い思いでした。ビックリしました。皆さん語り出したら止まらないんです! おひとりの持ち時間はだいたい7~8分程度でしたが、時間をめいっぱい使って喋る喋る。そして、まだ伝え足りない、もっと言いたいことがある、そんな思いがひしひし伝わってくる。これまでも4回「推し本読書会」に参加したことがありますが、他の方の持つ熱量にここまで敏感になったのは初めてでした。
このことに気付いたのは、私が日頃から時間管理が苦手で、進行役としてタイムマネジメントにとても気を遣っていたからだと思います。時間の枠を意識することで、枠を破ろうとする情熱が初めてありありと感じ取れたのでした。
正直言って、進行中「まずいかもなあ」と思った瞬間は何度もありました。焦りが顔に出ていたかもしれないという反省もあります。ただ、迷いながらも、最終的には、言葉を切らないことを優先しました。だって、自分がされたらイヤだから。
最終的に時間は少しオーバーしてしまいました。が、代表を含め、皆さんが後から「とても良かった」「楽しかった」と言ってくださって、これでよかったんだと思うことができました。
もっとも、いつもこんな風になるとは限らないだろうという予感もあります。次の読書会はどんな風になるんだろう。今から楽しみです。
というわけで、本日はこれにて。次回は午後の部「課題本読書会」を振り返ろうと思います。
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