僕らが触れている世界

日々の生活の中で心に留まったことを、丁寧に、時に面白く、書き綴る、そんな日記を目指して… 現在は、参加している「彩ふ読書会」の記録や、その他参加したイベントの振り返りを中心に、日々の四方山話を書いています。できれば読書ノートなどを充実させていきたいけれど、書けば長くなりそうで、どうしたものか思案中。どうかみなさま寛大な心でお見守りください。

 家に帰り着いたところで、見事に寝落ちした。やはり、昨日推し本披露会の振り返りを書き上げるのに精を出し過ぎたらしい。実際、昨日の睡眠時間は普段より1時間ほど短かった。

 そんなわけで休養を優先してしまったので、読書会振り返りの続きは1日空けてお送りしようと思う。以前ならここでがむしゃらに続きを書いたのかもしれない。が、振り返りを書き始めて早半年以上、突っ走りやすい性格の僕も無理は禁物ととうに悟っている。振り返りを書くのには、どうしても一定の時間が必要になる。だから、ゆっくり時間の取れるときに落ち着いて書くことにしようと思う。

 代わりに、今日一日を振り返って何か面白いことがあったら書いておこうと思ったが、夕方に強烈な眠気が襲ってきて机の前にじっと座るのがしんどくてたまらなかったことを除けば、特に印象に残った出来事もないので、このまま筆を置くことにしたい。

 皆さまお待たせいたしました。毎月恒例読書会振り返りシリーズを開始したいと思います。

 818日日曜日、京都の北山にあるSAKURA CAFÉというところで、京都・彩ふ読書会が開催されました。彩ふ読書会は201711月に大阪で誕生した読書会で、現在は大阪の他、東京、名古屋、そして京都で開催されています。いずれの読書会も、午前の部・午後の部の二部からなっており、①午前の部は、参加者がそれぞれ好きな本を紹介する「推し本披露会」、②午後の部は、予め決められた課題本について感じたことや考えたことなどを話し合う「課題本読書会」となっています。さらに、京都の彩ふ読書会では、③午後の部が終わった後も会場を借りて、読書会メンバーの交流の場を設けています。この場は当初「ヒミツキチ」と呼ばれていましたが、現在は「オトナの学童保育」と改称されています。

 これからお届けする一連のレポートでは、818日の読書会について、①午前の部、②午後の部、③オトナの学童保育の模様を順番に見ていきたいと思います。まず、この記事では、①午前の部=推し本披露会の様子を振り返ることにしましょう。

◇     ◇     ◇

 午前の部=推し本披露会は、毎回1040分頃に始まり、12時頃まで続きます。参加者は平均68人ずつのグループに分かれて座り、このグループの中で持ってきた本の紹介を行います。まず、時間になると、総合司会から読書会の流れや注意事項について説明があります。その後、グループ内で自己紹介を行い、それから本の紹介に入ります。1145分頃になったら、グループでの話し合いを終え、全体発表に移ります。全体発表は、現在、各グループの参加者がそれぞれの話を聞いて最も読みたくなった1冊を紹介するという形式です(そのため、グループでの話し合いを終える前に、一番読みたい本を決める投票タイムがあります)。全体発表の後、総合司会から今後の読書会やサークル活動(読書会メンバー向けの各種交流イベント)の案内を経て、午前の部は終了となります。もっとも、その後も昼休みを使って、他のグループの推し本を見合ったり、メンバー同士で雑談したりするのが恒例になっています。

 今回、午前の部には全部で27名の方が参加され、4つのグループに分かれて話し合いを行いました。僕は会場の入口に最も近いAグループに「進行フォロー」という立場で参加しました。各グループにはその場を仕切る「進行役」という人がいて、読書会サポーターやベテラン参加者がこの役に当たります。そして、サポーターやベテランが複数いる場合には、片方がフォローに回ることになります。今回はあるベテラン女性の方が進行役をすることになったので、サポーターである僕はフォローに回ることになりました。もっとも、何もフォローした覚えはないんですが……いわゆるなんちゃってフォロー役ですね。

 グループのメンバーは総勢6名で、よくよく振り返ってみると男性は僕だけという女性中心の構成でした。参加歴でみると、ベテラン3名、ビギナー1名、初参加2名で、こちらはバランスの取れた構成になっていたように思います。

 今回紹介されたのは次の7冊です。メンバーは6名でしたが、2冊紹介された方がいらっしゃったので、本は全部で7冊登場しました。それでは、それぞれの本の内容についてみていくことにしましょう。

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◆『文庫解説ワンダーランド』(斎藤美奈子)

 進行役を務めてくださったベテラン女性からの推し本です。文庫本の最後に収められている解説を読み解いていく一風変わった評論集です。

 解説と言うからには、作品を読み解き紹介してくれるのだろう——そう思ったら大間違い。もちろん本文を詳解するものもあるそうですが、作者に会った話を書いたり、作者にひたすら媚を売ったりするもの、はんたいに、推理小説の解説で「この作品のトリックは成り立たない」と書き立てるものや、作者から受けたセクハラを暴露するものまで、思いがけない解説が沢山あるのだそうです。

 僕は解説についてはテキトーに読むことが多いんですが(本文を読んだ後で疲れているし、ちゃんと読み過ぎて自分自身の感想が深く左右されるのがイヤなので)、話を聞いていると、解説も隅に置けないなあと感じました。文庫解説が読みたくなる、そして風変わりなそれに出会いたくなる1冊だなあと思いました。ちなみに、紹介された女性に「印象に残っている文庫解説はありますか?」と尋ねたところ、「私はミステリーは解説であらすじを掴んでから読んでいるんですけど、特に面白いのは……」とのことでした。珍解説との出会いはそう簡単なものではなさそうですね。

◆『夏の庭』(湯本香樹実)

 僕が持ってきた推し本です。小学6年生の少年3人と、町はずれの屋敷に独居するおじいさんのひと夏の交流を描いた物語です。

 少年たちが「人が死ぬ瞬間どうなるのかを見たい」と、もうすぐ死ぬと噂されているおじいさんの観察を始めるところから物語は始まります。ところが、物語が進むにつれて、両者は不思議な交流をもつことになるのです。お互いがお互いにとって大切な存在となる中、少年たちはそれまで見聞きしたことなどなかった様々なことや、友人の意外な一面などを知りながら、少しずつ成長していきます。学校と塾に明け暮れ問題を抱えた家庭に帰るだけの日常に突如開けた憩いの場は、彼らにとってかけがえのないものになるのです。

 物語の終盤で、おじいさんは亡くなります。そして小学校卒業と同時に、少年たち3人も別々の人生を歩むことになります。それぞれの別れを描いたラスト20ページ、僕は体を震わせて泣きました。繊細な心理描写の向こうに見える、冒頭ではありえなかったであろう少年たちの悲しむ様子、そしてその後いっそう逞しくなっていく様子に、皆さんもきっと胸打たれることと思います。

◆『西の魔女が死んだ』(梨木香歩)

 タイトルが出た瞬間「あッ!!」と思いました。少年たちとおじいさんの出会いと死別の物語に続いて、少女が亡くなったおばあさんと過ごした日々を回想する物語が紹介されたのですから。不思議なことに、読書会ではしばしば、似たジャンルの本が同じグループに固まるということがあるのです。

 この本は参加2回目の女性の方の推し本でした。上述の通り、主人公の少女・マリが、不登校の時共に過ごした田舎のおばあちゃんの思い出を辿る物語です。「自分の見たいものが見れて聞きたいものが聞けるのが魔女なんだよ」そう語るおばあちゃん=魔女との日々の中で、マリは生きていくうえで大切なことを幾つも学び成長していきます。

 紹介者の女性は「ラストがとても良い」と言います。タイトルが示唆する通り、「死ぬとはどういうことか」というのが作品のテーマの1つになっているのですが、それだけに、本作のラストでは、死/別れをただ“つらいこと”“悲しいこと”としない、もっと別の描き方がなされているそうです。そして、それは読む人の胸をいっぱいにするのだとか。気になりますね。

 ちなみに、紹介者がこの本を初めて読んだのは小学4年生の時。お兄さんの部屋で偶然単行本を見つけて、表紙に一目惚れしたのだそうです。本との出会いもロマンチックで素敵だなあと思いました。

◆『東京百景』(又吉直樹)

 初参加の女性からの推し本です。ご存知・又吉さんが、太宰治の『東京八景』を念頭に置きながら、東京のあちこちの風景・出来事を描いたエッセイ集です。大阪から出てきた又吉さんの目に映る東京は、きらびやかな都会である以上に、キタナイ人や物で溢れ返った街なのだとか。もっとも、田舎から大阪へ出てきた経験を持つという紹介者の女性は、紙面から浮かび上がるそんな風景が、自分の見た大阪とオーバーラップしたと話していました。

 さらにこの方、本に描かれた世界を実際に見てみたいと思って、本書を片手にひとりで東京へ出掛けたそうです。『東京百景』については、又吉さん自身が「観光の手引きには向かない本」と語っているそうですが、実際に訪れた吉祥寺や文京区はとても良い所で、本書も良い旅のお供になったとのことでした。

 話を聴きながら、僕は学生時代を過ごした東京を思い出していました。6年独り暮らしをし、それなりに色んな経験も積んだ街、そして、結局上手く馴染めなかった街——読書会の時には「ガキまでませてるイケスカナイ街」みたいな言い方をしてしまいましたが、本当はそんな簡単に言い切れるわけじゃないんですよね。いらんこと言ってもうたなぁ……

◆『サヴァイヴ』(近藤史恵)

 大阪サポーターをやっている女性からの推し本です。「サクリファイス」シリーズという、自転車ロードレースの選手たちを描いたシリーズの3作目で、脇役を主役に据えた短編集です。というわけで、話は本の紹介と言うよりも、自転車ロードレースとはどういうものかがメインになりました。

 自転車ロードレースは、日本ではあまりなじみのない競技ですが、ヨーロッパでは人気のスポーツの1つ。しかし、他のスポーツに比べて選手の地位は不安定で、報酬も低い。おまけに、自転車ロードレースはチームスポーツなのですが、エース1人を勝たせるために他の全員がアシストに回る格好になる。捨て駒で低収入、だけど命懸け——シリーズの一連の作品は、そんな世界を生きるスポーツ選手の姿がぐっと胸に迫るものなのだそうです。

 僕も自転車競技についてはまるでわかっていないのですが、以前『茄子 アンダルシアの夏』という自転車レーサーを主人公にしたアニメ映画を観たことがあったので、それを思い出しながら話を聞いていました。エースのために他全員が犠牲になる、そのエースの地位も不安定なもので、そもそも選手契約自体が流動的、そんな業界事情を耳にするうち、映画を観ていた時には分からなかった人間模様が浮かび上がってくるような気がしました。観直してみようかな(それより本書を手に取りなさい!)。

◆『贅沢貧乏』(森茉莉)、『れんげ荘』(群ようこ)

 初参加の女性からの推し本です。2冊を比較しながら紹介したいとのことでしたので、最初から2冊紹介していただきました。この方、なんと事前に比較のための資料まで作って来られていました。それも、A43枚。推し本披露というよりもはやプレゼンの域。いやはや、準備ありがとうございました。

 1冊目の『贅沢貧乏』は、森鴎外の娘さんである森茉莉さんが書いた、住まいをテーマにしたエッセイです。お嬢様育ちで離婚するまで家事なんてやったことがなかった筆者ですが、突然雑事をやらねばならない境遇に陥り、オンボロアパート暮らしを始めます。そんな貧乏暮らしの中でも、美しいカン・ビンを集めてはそれらを高級家具に見立てるといったようにして、自分はお嬢様であるという妄想を膨らませ、逞しく生きていく様が、美しい文章で綴られた1作なのだそうです。

 もう1冊の『れんげ荘』は、『贅沢貧乏』にインスパイアされて書かれたエッセイ風の小説です。元々大手企業で働いていたものの、40代になってから古アパート暮らしを始めた著者の経験が元になっているそうですが、森茉莉さんが豪奢な生活を妄想し続けたのに対し、群ようこさんはミニマリストを模範とし、心と時間の余裕を大切にする暮らしを描いているそうです。話を聞いていたあるメンバーが、「『れんげ荘』の方は“貧乏贅沢”のような感じがしますね」と言っていました。言い得て妙だなあと思いました。

◆投票タイム

 以上7冊の紹介が終わったところで、グループの中で最も読みたくなった本を選ぶ投票タイムに入りました。どの本の紹介も熱が入っており、他のメンバーとのやり取りも盛り上がったため、1145分を回ってからの投票になりました。

 いつもは票数などを丁寧に書いていましたが、今回慌てていてメモを取り忘れてしまったので、最終結果だけお伝えしようと思います。

 僕らのグループで得票数1位となったのは、『東京百景』と『れんげ荘』の2冊。

 なんと、先月に続いて2冊同率1位という現象が発生しました。順位付けのため、2番目に読みたい本を指さすという第2投票も行ったのですが、結果は変わらず。仕方がない、先月も2冊発表したわけだし、今月も2冊発表でいこう! ということで、僕らのグループからは本を2冊紹介することにしました。

 ちなみに、この思いがけない事態に、初進行役を務めていた女性は「どうしましょう」と困惑してしまったので、いつの間にか場を仕切るのは僕になっていました。「2冊発表しちゃいましょう!」と言ったのも僕だった覚えがあります。おかしいな、なんちゃってフォロー役だと思っていたのは記憶違いだったのか……

◆全体発表

 僕らのグループがやっとこさ発表する本を選ぶや否や、全体発表が始まりました。

 今回の全体発表は、実にあたふたとした幕開けとなってしまいました。というのも、この発表はAグループからDグループへと順番に行っていくのですが、実は僕ら(少なくとも僕は)、自分たちがAグループであることを、つまり最初の発表者であることを忘れてしまっていたのです。

「では、Aグループの方、発表をお願いします」

 総合司会がそう言って右手を僕らのテーブルへ差し伸べた時、僕は完全にキョトンとしていました。なんですその手は、とでも言いたげなフテブテシイ顔をしていたんじゃないかとさえ思います。もっとも、やや時間があってから僕もハッとしました。そして「俺らA!」と、思わずデカい声で叫んでしまいました。会場から笑いが漏れます。

 さあ大変なことになりました。察するに、発表者はまだ心の準備が整っていません。おまけに、本来1グループ1人のはずの発表者が、このグループには2人いるのです。とにかく、事情を説明するしかありません。

「いきなりで申し訳ないんですけど、このグループ同率1位が2冊出まして、2冊紹介させていただきたいと思います」

 僕が言うと、今度は総合司会がキョトンとしてしまいました。

「……それってオッケーなんですか?

「先月もあったんですよ」と、またしても僕。ここに来てフォロー役がしゃしゃり出まくりです。

「わかりました。では特例ということで、2冊紹介していただきましょう」

 果たして2ヶ月連続で起きたこの事態は特例なのか——そんな疑問は拭えませんが、とにかく2冊発表が認められ、無事全体発表が始まったのでありました。

 さて、僕らのグループからの紹介本については既に詳しく書きましたので、ここでは他のグループの方が全体発表で紹介された本をご紹介したいと思います。

Bグループ:『自負と偏見』(オースティン)

 参加2回目の男性からの推し本。19世紀イギリスの貴族界における恋愛模様を描いた古典的名作です。『高慢と偏見』という訳もあります。読書会では度々紹介される本の1つです。昔読んだ専門関連の本で取り上げられていて、以来読みたいと思っているのですが、結局読まないまま数年経ってしまいました。そろそろ潮時かしらん。

Cグループ:『金田一少年の事件簿外伝 犯人たちの事件簿』(船津紳平ほか)

 今回から京都サポーターになったベテラン女性からの推し本。探偵マンガの元祖と言われる『金田一少年の事件簿』各作品を犯人目線で読み解ギャグテイストのマンガです。僕もアニメ版『金田一少年の事件簿』(初期)を全話観た口なので、フリートークの時間にめちゃくちゃ楽しく読みました(その事件をギャグにしないで、と思ったものもちらほらありましたが笑)。

Dグループ:『幕末の青嵐』(木内昇)

 参加3回目の女性からの推し本。新撰組を描いた歴史小説です。物語は時系列で綴られており、焦点を当てる人物がコロコロ入れ替わるので、色んな人物の目線から新撰組や幕末をみることのできる面白い作品になっているとのことです。紹介者は先般タカラヅカの『壬生義士伝』を観たのがきっかけで新撰組にハマったらしく、現在スクラップブックまで作って調べ物をしているのだとか。相変わらず、ヅカ恐るべし。

 以上、全体発表で取り上げられた本についてご紹介しました。各テーブルで紹介された他の本については写真がありますので、そちらを貼らせていただきます。

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 といったところで、午前の部=推し本披露会のレポートを締めくくろうと思います。今後引き続き、午後の部=課題本読書会を振り返る予定です。どうぞお楽しみに。

 長い寝落ちをしてしまった。仕事中からどうも眠いとは思っていたが、まさかこれほどとは、というくらいよく寝た。お陰で気分は晴れた。が、振り返りの書き出しはまた1日延期する羽目になった。既にブロガーズの振り返りは後半に到達している。急がねばならぬ。

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